第38話 |交換《エクスチェンジ》
「よーし皆電気消してるな~。ちゃんといい子にして寝てるかな~」
俺は足音を立てないようにゆっくりと廊下を歩いた。
まずは真ん中の部屋リリアから様子見するとしようじゃないか。さてさて、どんな寝顔をしているのやら。
――キィィィ……
俺は静かに真ん中の部屋の扉を少し開けた。
よしよし、完全に寝てるな。猫の柄をしたブランケットを肩までかぶってお行儀よく寝ている。
う~ん、何しようかなぁ。リリアにあんまり激しいことをしたら可哀そうか……。
俺は扉を開けたまま悩んだ挙句、ブランケット盗むことにした。
「大きさに制限とかあんのかな……ブランケットくらいならいけるか? 薄いし」
俺は扉の隙間から手だけを入れ、ブランケットに向け意識を集中し、ぼそぼそと言葉を発し唱えた。
「
するとリリアの周りと俺の手が明るく光るのが隙間から見え、俺の手に一つの布切れのような感触が伝わってきた。
「よし! 成功か!? でもなんか思ったより軽いな」
俺はブランケットにしては異様に軽いその布切れを確認するために、隙間から手を引っこ抜いた。
するとそこには、白いT字の布の真ん中にピンク色のかわいいリボンが付いた肌着が俺の手におさまっていた。
「おわぁぁぁぁ! これパンツじゃねぇか! なんでこんなもん盗ってんだ変態か俺は!」
俺は出来る限りの小声で叫んだ。
なんでブランケットすら盗めないんだ! ていうかリリアのパンツは価値が無いってことなのか!?
それはそれで可哀そうな気もする。
俺は扉の隙間から思い切りパンツを放り投げた。
するとそれは放物線を描き、リリアのブランケットの上に物音立てることなく乗った。
「よし、ナイスコントロール!」
俺はロリコンでは無い。幼女のパンツなどでは興奮しないのだ。
どうせならカーヤの方が気にな……おっと、これ以上はやめておこう。
――パタン
俺は扉を閉め、次にカーヤの部屋へと忍び足を進めた。
「どーれどれ……」
扉の隙間から中を伺うと、カーヤは布団もかぶらずに大の字で寝ていた。
寝言を言いながら寝るその姿はまるでおっさんだ。育ちがいいんじゃなかったのか?
「なんであんなふうになっちまったんだ」
カーヤが言うには元々小金持ちのはずだ。
自由に育てられたのか男勝りなのかは知らんが、そのデカい胸が無ければ男と間違われても仕方がないぞ。
「さーてカーヤには何をするかな~……まぁ何してもバレんだろ」
カーヤはバカだ。きっと少しの事では起きないだろうしバレもしない。
なので俺は大胆に行くことにした。
「えーっと交換するものはぁ……これでいいか。
俺は傍にあった足つぼ健康マットを手に取り、
俺の手とカーヤの頭の付近が光り出す。
そして俺の手には狙った通りの四角いブツが手に入った。
「よし! 成功だ!」
「……いたっ! ……むにゃむにゃ」
俺は枕を奪ったのだ。
枕と俺の足つぼ健康マットが入れ替わり、あのごつごつとした突起に頭をぶつけたが起きることなくまた寝てしまった。
「くくくく……! あれかなり痛いだろ、あれでも起きないのか」
カーヤは寝ぼけながら頭を擦ってはいたが、起きる気配なかった。
楽しくなってきた俺はもう少しカーヤで遊ぶことにした。
「これならもう少し遊べそうだな。次は……」
「……何をしとるんじゃ?」
「ぎいいやああああああああ!」
俺が次に何を盗んで遊ぼうかと思っていた矢先、後ろからゴルディンが暗闇から姿を現し俺の耳元でそう呟いた。お前の姿ははたから見ればオバケなんだから、そういう登場の仕方はやめろ!
思わず俺は大声をあげてしまい、それに気づいた二人は部屋の電気をつけてしまった。
それぞれの部屋から悲鳴が聞こえる。
「きゃああ! なんで私パンツ脱げてるんですか!?」
「なんか頭いった! って京谷! あんたなんであたしの枕持ってんのよ! てかなにこれ何で足つぼマット!?」
「はは、冗談だよ冗談……おやすみ~!!」
俺は自分の部屋へと走っていった。
――バタン!
俺は自分の部屋へと帰ると、即座に鍵を閉めた。
「ちょっと京谷出てきなさい! みっちりお仕置きしてあげるわ!」
「あたしのパンツで何したんですか! 変態!」
「なんもしてねぇって! 盗ろうと思って盗ったんじゃねぇよ!」
「あんたが出てこないっていうなら……こうしてやるわ!」
するとカーヤは扉の前で魔法を唱えだした。
俺が扉を開けようとすると、何かにつっかえて開くことが出来ない。
「あ! お前扉の前に
「どっちが卑怯なのかしら~? 明日の朝までそこで大人しくしてなさい!」
俺は窓から出れないかと視線を向けたが、既に窓の外にもマジックシールドが張られていた。
「くそおおぉぉぉ! ゴルディンのやつぅぅぅぅ!」
「わしは関係ないぞ~」
部屋から出れなくなった俺は、しぶしぶ布団に入り朝を待つことにした。
しかし、盗れるものと盗れないものの違いはいまいちわからなかった。
だが、一つだけ分かったのは、大きい物や高価な物は盗れないということだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます