第34話 悪魔ダンダリオン
俺たちはダンジョン最深部の赤い宝石が真ん中についた扉に手をかけた。
すると赤い宝石が赤く光りだし、触れただけで扉が開いていった。
――ゴゴゴゴゴゴ……
「おわ! 自動ドアか? この世界にもあるもんだなぁ」
俺は勝手に開いていく扉を見ながら、独り言を呟いた。
「これでようやくあの洋館があたしたちのマイホームになるのね!」
「油断は禁物ですよ、カーヤちゃん」
能天気にマイホームを手に入れた後何をするか一人で妄想にふけっているカーヤを放っておいて、俺とリリアは慎重に真っ暗な扉の奥へと足を踏み入れた。
――ボウッボウッボウッボウッ
俺たちが扉から数メートル歩くと、ドクロ型のスタンドに乗ったいくつものロウソクが手前から順番に青い炎を灯した。
目に映ったのは、円形の部屋を囲うように設置された多くのドクロ型キャンドルスタンドと、真ん中に一つある緑色の四角いテーブルだった。そのテーブルを囲うように四つの椅子が置いてある。
「な、なんだここは。何もないじゃないか」
「もしかしてあのゴーストさん、嘘をついていたんでしょうか?」
「もし嘘だったらコンロの中に入れて一生調理用の火として利用してやるわ!」
俺たちが部屋のテーブルの近くでごちゃごちゃ言っていると、奥から人影が現れた。
「皆気をつけろ! 何かいるぞ!」
俺たちが注意をそちらに向けると、人影が低い声で話し始めた。
未来予知で状況を探ろうとしたが、この部屋の中では未来予知は使えないようだ。
「我の名はダンダリオン。指輪の封印を解きし者よ、何用でここへ来た」
ロウソクの光に照らされ、その人影の正体が判明した。
ダンダリオンという女性は頭にたくましい角を二つ生やし、高い背丈に褐色の肌と豊満な胸。
寒色の服に包まれたその見た目はまるで悪魔のようだ。
「俺たちは洋館の家主がここに隠したと言われている指輪を取りに来た。俺たちは指輪を取ったら家主に見せるためにすぐに帰る。どこにある」
俺はダンダリオンに向かって問いかける。
相手は攻撃する気はないのか、腕を組みながら俺たちの事を品定めでもするような眼差しで見つめている。
「ふむ、どうやら本当のようじゃの。しかし我はゴルディンによって指輪を護るようにと使命を授かった。その契約に従い、ただでは渡せぬ」
ゴルディンという名は初めて聞いたが、おそらくゴーストの名前だろうか。
ただでは渡せぬと言うが、いったい何をすれば譲ってくれるのだろう。
「何が望みだ!」
「ふむ……我は長きに渡りこの指輪を護り退屈しておる。どうじゃ、ここはひとつギャンブルで勝負というのは。お前たちが勝てば、指輪を譲る」
「いいだろう。で、何で勝負をするんだ」
「お前が今、手をかけておるそのテーブルでやるものじゃ」
俺はテーブルについていた手を慌ててどかすと、何やら見覚えのあるテーブルだった。
「……もしかして、麻雀か?」
「ほう、知っておるようじゃの。ならば話は早い。さっそく席に着くとしよう」
そう言うとダンダリオンは全く警戒心を示さずこちらへ歩み寄り、椅子に座った。
どこかで見たことがあると思えば、それは全自動麻雀卓だった。
まさかこの世界にもこれがあるとは思いもしなかった。
「ちょっと京谷! 何なのこのギャンブルは!」
「私たち、あんまり知らないです……」
そうヒソヒソと俺に向かって話してくる二人だったが、なぜかダンダリオンはそれに気づき、ルール説明を始めてくれた。
「お前たちはルールを知らぬようだな。では簡単に教えてやろう。ルールも知らぬものをいたぶっても興覚めじゃからの」
俺たちは必死にダンダリオンの話すルールを聞いた。
どうやら俺の世界にあった麻雀のルールとは少し違うようで、異世界風にアレンジしてある。
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ここで京谷の『属性マージャン』のルール説明コーナー!
少し現実と違ったルールだったので、ここで皆に説明しておくぞ。
この属性マージャンは、普通の牌とは違い、『炎』『水』『風』『土』『光』『闇』の六種類の牌がある。
それぞれの属性に数字の『1』と『2』と『3』がある。
俺たちはまず8つの牌を取り、新しい牌を取っていらない牌を一つ捨てる。
『同じ属性の同番を揃える』か『同じ属性で連番』を三種類揃えることで上がることができるぞ。
例を一つ出すと、手持ちに『炎の333』『光の123』『闇の111』の九つを揃えられると上がれる。
ちなみにロンとポンは用意されており、ポンは一人三回までらしい。
『ロン:残り一つで上がれるときに他者プレイヤーが必要な牌を捨てた時に発動できる。その牌を取って勝利となる』
『ポン:例えば炎の22の2つを持っている時に、他者が炎の2を捨てた時に発動できる。その牌を取り、相手に見せ右下の角に公開する。ポンした役は固定され、捨てることはできない。ポンした後はいらない牌を一つ捨てる』
これが簡単な属性マージャンのルールだ。分かったかな?
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「なるほどな。俺の知ってるルールと少し違うようだな」
「なかなかに難しいですねぇ……」
「よくわかんないわね! 頭痛くなってきたからとりあえずやりましょ!」
俺とリリアはダンダリオンの言うルールを必死に覚えた。
カーヤに関しては覚えることを放棄した様子で、さっさと始めたがっている。
「用意はいいか? 試合数は三回。一回でもお前たちが勝てれば指輪を譲ろう」
そう言うとダンダリオンが魔法陣をテーブルに展開すると、ガシャガシャと自動で牌のセットが行われた。
そして俺たち三人とダンダリオンの属性マージャンの試合が始まった。
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