第7話 少女リリアとの出会い
酒場でギャンブルを嗜んでいた俺は、外に出て時間がそれなりに経っていることに気づく。少し肌寒く、街に明かりがつき宴が行われているところも増えた。
「とりあえず少女を奪ってみたはいいが、どうするべきか……」
少女の方をチラリと様子見したが、彼女は酒場を出た後から黙って後ろを着いてきている。俺はとりあえず、この小汚い格好をどうにかしたいと思っていた。こんな格好の少女を連れていたら、俺が奴隷ギャンブルみたいなことに加担しているんじゃないかと思われてしまう。
(まぁ、さっきしたんだけど…。明らかに幸せそうじゃなかったからいいよな。俺は間違ってない。うん)
俺は脳内で一人芝居をしながら、この街でどこか泊まれそうなところがないかを聞くために初めて少女に話しかけた。
「なぁ、この世界に宿屋みたいなものはあるのか?」
なるべく怖がらせないように慎重に話しかける。
「…ある」
少女の指さした方向に布団のマークが描かれた看板がぶら下がっていた。そこならとりあえずシャワーくらいあるだろう。この世界に来てから一度も休んでいない。この少女にこの世界のことを聞いてみるのもいいかもしれないな。
「よし、じゃあそこに行くか」
寄り道せずに宿屋に着き入ろうとすると、少女は少し離れてドア横の草むらにしゃがみこんだ。
「どうしたんだ?」
「お泊りになるんでしょう? 私はここで待っています」
(えぇ……生憎俺は少女をこんな野蛮な男たちがいる街の外に置いておくほど鬼畜ではない。少女に俺は王様的独裁者にでも見えるのだろうか)
「何を言ってるんだ、お前も来いよ。その恰好だと風呂にもろくに入ってないんだろう?一度さっぱりしようぜ。聞きたいこともたくさんあるしな」
少女は驚いた顔でぽかんとしていた。しかしその後少し迷った後、嬉しそうな顔をボロボロのローブで隠しながら
「いらっしゃ~い」
そこそこに歳のいったオババが受付をしていた。何やら暇そうに肘をつきながら本を読んでいる。現世でこんな接客をされたら、間違いなく一つ星レビューをつけさせていただくだろう。その裏では従業員らしき人がせっせとシーツやらなんやらを運んでいた。
「二人で。ベッドが二つある部屋は空いているか」
「あぁ、空いているよ。二人で200ぺリスね」
オババが薬指と小指で数字の二を示す独特な表現をしたが、その瞬間
俺の財布には一万円札が数枚とレシートの束だった。ペリスなんてものは一枚も持ち合わせていない。
(そうだった、俺には金がないんだった。でもここはギャンブルの世界だろ?いっちょ仕掛けてみるか)
「ん~そうだ、俺と軽いギャンブルをしないか?俺が勝てば一拍タダにしてくれ。代わりにオババが勝てば三倍の600ぺリス払おう」
(どうだ、なかなかの好条件だろう?負ければ三倍ってところがミソね)
「ん~まぁいいよ。何するんだい」
オババは本を読んだまま少し迷うそぶりを見せると、条件を受け入れた。
「インディアンポーカーをしよう、一発勝負だ」
俺は酒場の試合で得たロイヤルストレートフラッシュの残骸をまだ持っている。それと入れ替えてサクッと勝つことにした。
ーーーーーーー
余裕の勝利で部屋を勝ち取り最上階の三階へのカギを貰った後、宿屋の階段をのぼっていた。
(あの時のオババの顔、悔しそうだったなぁ)
あと少しで叫びだすんじゃないかとヒヤヒヤしたが、なんとかなだめて事無き事を得た。
階段をのぼり終わり、部屋の前に立つと俺はそのカギで部屋の錠を開けた。
部屋はそこそこ綺麗で、窓の下には花瓶があり小さい一輪の花が添えてある。俺みたいな無一文が泊まるには十分すぎる設備だった。
俺はベッドに腰掛けながら少女に話しかけた。
「ふぅ、ようやくひと段落だな。そういえば名前を聞いてなかった。名前は?」
「リリア」
「そうかリリアか、いい名前だ。俺は
(言ってから気づいた。口が自然にそう発声したんだ。俺がこんなセリフを言うことになるとはな……。どこのプレイボーイなんだ)
リリアは俺のそんな気も知れず一目散に風呂場に向かい、シャワーを浴び始めた。
「さて、この世界で生きていくにはとりあえず金が要るな…どうやって稼ごうか」
窓の外を眺めて情報を得ようとする。ここは三階だからそれなりに見晴らしがいい。奥の方には闘技場だろうか、かなり大きなドーム状の建物がある。その他にもそれなりに大きな建築物があるようだ。しかし暗くて全てを見渡すのは無理があった。
ちなみに酒場でポーカーを選んだ理由は、第三者がカードを配るから俺はその未来を変えられるのか試したかったのだ。だが見えたブタの手札の未来を変えることはできなかった。
「未来を捻じ曲げるってことは出来ないのかねぇ……」
俺はひとまずリリアが風呂から上がるのを待つことにした。
数分たち、風呂場から水の出る音が止まった。リリアのシャワーが終わったのだ。
出てきた少女は見違えるような美しさになって出てきた。髪は肩につかないくらいの長さで草原をイメージさせるような黄緑色をしていた。目もそれに伴い黄緑色だ。胸は小さく見え、身長は俺の胸くらいの高さだった。
「お前、本当にさっきの子か?」
「そうですけど…何か変ですか?」
想像と全然違った姿に呆気に取られ、何を聞き出そうか少しの間すべて忘れてしまった。
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