第5話 ステータス発覚
「ステータスってやつはどうやったら見れるんだ……」
俺は大男との一勝負を終え、彼の言っていた『運気ばかり上げてやがるな』という言葉の意味と、頭の中に響いた声について考えながら街をプラプラと歩いていた。
しかし、改めて街をよく見てみると、頭に耳が生えている人や尻尾が生えていたりする人間がいる。獣人ってやつだろうか。その獣人達が昔懐かしい商店のような、その場でお会計をするような八百屋で赤い果実を買っていたりする。
「これでもう驚かない自分が嫌になるぜ」
段々とこの世界に慣れてきてしまっている自分が怖い。
「ひとまずはこの街の情報屋みたいな所に行ってみるか」
俺は観光気分で街を散策しつつ、情報を仕入れられそうな場所を探した。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
俺は街を練り歩きながら色々と情報を得た。
この世界には現代と似たような食べ物が多くあるらしい。その証拠に俺は異世界の情報屋の鉄板、酒場に来ていた。
周りには老若男女いろんな人がいる。見たことのある食べ物といえば……あれはシチューだろうか。ほかほかで旨そうだ。
「いらっしゃいませー!」
かなり胸のデカい、俺のいた世界だったら間違いなく引っ張りダコになりそうなスタイルの受付嬢が笑顔で俺に話しかけてきた。
「見ないお顔と恰好ですねー? 闘技場トーナメントの参加者ですか?」
「あ、あぁ。そうとも言える。ひとまずは観光かな」
「そうなんですね!ゆっくりしていってください!」
ムンムンとした活気のある酒場の中では至る所でギャンブルが行われている。酒場ということもあり、ビールのような物を飲みながらやっている物も多い。そんなに酔ってちゃイカサマされ放題じゃないのか?
そんな風にあたりの状況を一つ一つ理解しようとしていると、奥の方で興奮した声を発しているグループがいた。
「っしゃー! ストレートフラッシュ〜!」
「くぅぅぅ! またかよ!!」
「お前は弱いなぁ! じゃ、この金は俺のモンな! まいどあり~」
ストレートフラッシュを出した男は、カードをオープンする瞬間ズボンの中に入っていたカードと手に持っていたカードを入れ替えていた。
(今明らかに手札をズボンの中からカードを出して入れ替えてただろ! 酒ばっか飲んでるからイカサマに気づかないんだ! バカなのかこいつは!……おっと、そんなことより今はステータスについて調べなければ。)
俺は忙しそうにしている愛想の良い受付娘に再び話しかけることにした。
「すみません、ステータスについて何か知っていることはありませんか?」
「ステータス……ですか? 知ってるも何も、知らないとギャンブルで勝てませんよ?」
受付嬢はそんなものは小学校でも習いますよ? と言いたげな表情でそう答えた。
(おいおいそんなに重要なものだったのか!?)
俺はそんなに重要なものだとは知らずにギャンブルをしていたようだ。
「いやぁあまりギャンブルが盛んでないところから来まして……ちなみにそのステータスはどこから見れますか?」
「そうなんですね〜。こちらの水晶に手をかざしていただければわかりますよ!」
俺はひとまずギャンブル初心者だということにしておいた。
受付嬢が指の刺す方向には煌々と輝く水色の水晶があった。違う受付では他の冒険者らしき人がその水晶の上に手をかざそうとしていた。
「では、俺も失礼します」
俺は少しへっぴり腰になりながら手をかざすと、水晶は光り輝き俺の体の周りを光で取り囲んだ。
「おぉ……」
すると水晶の中に文字が浮かび上がった。
ーーステータス鑑定が完了しましたーー
レベル1 力1 持久力1 魔力1 運気1 スキル 未来予知
「ありゃ~……今までギャンブルとかやってこなかったんですか?」
受付嬢は口元を手で押さえ、やっちゃいましたねというような表情で水晶を覗き込む。
ゲームで例えると、オープニングが始まってすぐの状態のようなステータスだった。
(なんだこのステータスは!? 何がギャンブルやってこなかったんですが。だ! 俺は世界一になった男だぞ!? ってか未来予知ってなんだ?)
しかし紳士な俺は驚く様子を表に出さず受付嬢に愛想よく返答した。
「あ、あぁそうなんですよ。実は未経験で……」
「ならしかたないですね~。ギャンブルで勝ったり肉体労働、狩りをしたりすると経験値が溜まりますので、それでステータスを振り分けてみてくださいね~」
受付嬢は笑顔で酷なことを突き付けてきた。
(肉体労働だと!? この俺がそんなことをしなくちゃならないのか!?)
わざわざこんな楽しそうな所へ来てまで、肉体労働などしたくなかった。
俺はひとまず、この中で一番重要そうなステータスについて確認しておくことにした。
「この運気ってのは重要そうですが、必要ですか?」
「運気が高いと運勝負に強くなりますよ~」
受付嬢はそう言いながら、ポケットからよくわからない茶色い紙を俺に差し出してきた。
「わかりました。ありがとうございます」
受付嬢に礼を済ませて仕事に戻るのを確認した後、俺はその場を動き出した。
(なるほど、大男が言う運気とはこれのことか。きっとあの大男も運を上げていたが、連勝しちまったから俺が運ばっかり上げていると思ったんだな)
俺が鑑定を受けてる間に、複数の視線が俺を刺していることは見なくてもわかった。皆が俺のことをカモだと思っているようだ。
(肉体労働なんてのはごめんだ。俺はギャンブルでステータスを上げてやる。とりあえずはまずは…ここの酔っ払い相手にカードバトルでも仕掛けてみるか)
酒場の様子を探りつつ、俺は相手に良さそうなヤツを探した。
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