第3話 ミラガライド王国

ーーステータスをリセットしましたーー


 扉をくぐっている途中、頭の中にそんな言葉が聞こえたような気がする

 ここはどこだろうか。目が霞んでよく見えない。しかし周りに危険はなさそうなのでその場で待機することにした。


 (たしか俺は洞窟で扉をくぐったはず……。なぜ俺はこんなに明るい所にいるんだ……)


 目が慣れてきた俺は、目の前に広がる異様な光景に思わず声を漏らしてしまった。


「どうなってんだこりゃ……」

 




 気持ちを整理し、ようやく自分の置かれている状況を受け入れられてきたところでまずは自分の周りに何があるかを調べることにした。


木の近くにあった小さな湖に近寄り、そこに自分の姿を映し出す。目にかからないくらいの黒髪で中肉中背のスラリとしたスタイル。服装はいつもと同じスーツを着ていた。顔はいつも通りそこそこイケメンだな、自称だけど。前の世界と同じ姿のようだ。



「人間のままでよかった〜。これでゴブリンなんかに転生してたらたまったもんじゃない」


変わらない自分の姿に安心しつつ、当たりを見渡せそうなところまで歩いてきた。見渡したところ、このあたりに敵性生物のようなものはいないらしい。


「向こうの方に街があるな……」


 蜃気楼でモヤモヤとしているが、平原の奥の方にうっすらと人工物のようなものが見える。そこまで大きくはなさそうだが、立派なものだ。


 俺はひとまずそこを目指すことにした。



  ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼



 かなり歩いた。二時間は歩いただろうか。現世では専属の運転手を雇っているものだから、こんなに歩くのは久しぶりで足が悲鳴を上げていた。


「近くで見ると意外とデカイな……」


 入口らしきところにたどり着くと、そこには見たことも無いような大きな門があった。そこまで大きくないと思っていたが、かなり大きな街だ。俺は疲れた体に鞭をうち、その建物を食い入るように眺めていた。


 現世とかけはなれた建物の構造にうつつを抜かしていると……




「旅のもの、何か用か」




 槍を持った甲冑の男がガシャガシャと音をたてて近づき、話しかけてきた。門番だろうか、ひとまずここは話を合わせておこう。焦っているところを悟られてはダメだな。ポーカーフェイス発動!


まぁ、俺は常時ポーカーフェイスなんだけどね。


「いやぁ疲れましたよ。ようやく目的地に着きました。中に入れて貰えませんか?」


「そりゃあご苦労さん。だがあまり見ない格好だなぁ…この街へは何しに?」


 こりゃまずい。解答を間違えれば腰にある重そうな剣で首を持っていかれそうだ。      甲冑男は少し警戒しているように見えた。


 少し返答に迷っていると、街の外壁に最近貼られたのかそこそこ綺麗で大きなポスターが貼られているのが目に入った。




【ミラガライド王国:新たなチャレンジャー求む! ギャンブル闘技場トーナメント開催中!】




 これだ。俺はそのポスターをマジマジと見つめずに横目で確認しつつ、門番の問いかけに返答した。


「ギャンブルをしに来たんですよ。ほら、ここの闘技場は有名でしょう?」


「……そうか、なら通れ」



 男の警戒心が解けたのか、筋肉の緊張が和らいでいったような気がする。

 助かった。そういえばあのゴブリン野郎、新しいギャンブルがどうとか言ってたな。ここはそういう世界なのか?


「闘技場に出るなら、気をつけろよ」


「あ、あぁ。お気遣いありがとう」


 街に入ろうと門番の横を通りすぎたその時、門番がそう声をかけてくれた。

 何に気をつければいいのかは今のところ不明だが、まぁまだ死にゃぁしないだろう。



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