Episode20 最終決戦開幕

 戦艦同士の戦闘スタイルは相手に激突して乗り込み艦上で戦うという物だったが、近代戦艦はそんな戦い方はしない。ロングファイア戦法を使用する、これは射程上限ぐらいから射撃するという方法で1912年の日本海海戦で日本の東郷平八郎氏が世界で初めて行った戦術である。

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 イリノイやフロリダ、ユタが主軸になって帝国帆船に砲撃を行っていても、対空までには反応できない。いずれ、飛竜群から攻撃を受ける事になるはずだ。という訳で、先手は打たせてもらった、現在この海域にあづち型強襲揚陸艦の1番艦あづちと2番艦みかわ、3番艦ももやまなどの強襲揚陸に特化した艦艇や信濃型原子力航空母艦の1番艦信濃と2番艦紀伊などの大型艦艇も只今、軍港で造船中だ。つまり、建造完了次第出港してこの海域に集合させるという戦略だ。

「飛竜群を視認!数はだいたい350騎‼」

「対空戦闘、配置に付け」

「総員、艦対空戦闘準備!」

 対空兵装に死に物狂いで飛びつき女性兵士達が撃ち始めると今度は、フロリダの後ろを航行していたユタから被弾報告がジャップの元に届いた。

「ユタより。ワレ、被弾!」

「被害を聞け」

「……被害は、火災だけのようです」

「フロリダに打電しろ、速力を落としてユタの隣を航行しろ」

「了解」

 電信手に素早く指示を飛ばすと同時に、航海長に「全艦、取舵一杯。急げ」と発令した。

「取舵、一杯!急げ‼」

 舵を左に回しながら叫ぶと同時に、イリノイに追従して来ていた他の艦艇も取舵し始めた。

「全主砲、弾種切り替え。徹甲弾、装薬装填次第。右旋回、撃ち方始め!」

「弾種切り替えた!準備良し‼」

「右舷、砲撃用意完了!」

「全艦、叩き込め‼――ぅてぇ‼」

 イリノイを旗艦とした16隻の艦艇から放たれた徹甲弾が、敵船の竜骨やマストなどの破壊または轟沈していく様子をメレダ港に集結していた王国海軍は恐怖の表情で見ていた。

 もちろん、帝国側の帆船群はこれを至近距離で受けているのでたまったものでは済まない。

「た、隊長!マスト破損!そして、旗艦エルザレートが轟沈しています‼」

「何故だ……、何故だ、なぜだ、ナゼだ‼」

 断末魔が、周囲に響き渡っている間も機関銃の弾丸や主砲の砲弾などが容赦なく水柱を引き起こしていく。

 戦闘開始から僅か20分後、12騎の飛竜以外の帆船が見えなくなった。残された帝国所属の12騎の飛竜を対空機銃などで撃ち落とすと海戦が終わった。

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 当初、帝国側ではワンチャン制海権を取れば、王国など敵にならないという考えだった。しかし、西之島艦隊を見た事で一気に兵達の士気が低くなった。抵抗のために海戦を引き起こしたが、無意味に終わった。

 帝国側の重鎮達が青い顔で震えながら会議をしていると、伝令兵が血まみれで入って来た。

「ほ、報告。西門より敵襲です、数は騎兵が10騎ですが歩兵が300人です」

「な、なんだと⁉ええぃ!衛兵たちは何をしている‼」

「ただいま、武力防衛をしておりますが相手が見た事もない鉄の地龍で――」

 その時、扉が爆発して近くに居た伝令兵が巻き込まれた。重鎮達が動揺していると筒のような物が床を転がり、強烈な光を発光させた。

「ウわあぁ‼目があぁ‼」

「眩しすぎるぞ‼」

「もう、嫌だあぁぁぁぁぁぁ‼‼‼」

 目をくらませている間に何者かが、重鎮達の頭を撃ち抜き即死させていった。

「目があぁぁ‼がh……‼‼」

「クそぉっ‼‼眩しすぎるぞぉ――グh‼‼」

「マーリィぃ‼‼タスケテぇ――ゴフッ‼‼」

 閃光が消えるとサングラスをした女性兵士達がUMP―45を改造して9ミリでも問題なく扱えるようにしたUMP―9を構えていた。

「……こちらデルタ、総司令。ミッション・クリア、RTB」

「ジャップだ、了解した。オスプレイで帰って来い」

「……了解」

 帝国の重鎮が死んだことで踏ん反り返っていた帝国皇帝は大人しく、両腕を揚げて降伏した。

 翌日、帝国の港湾都市の洋上にて降伏調印式が開催されてこれに皇帝自ら直筆のサインを施したのだが、ジャップは腑に落ちなかった。こうもあっさりと負けを認める行為が、裏を隠しているのではないのか?

 こっそりと西之島に連絡をして無人偵察機のMQ―9プレデターを、要請し帝国を隅々まで偵察すると飛竜基地に飛竜騎士が待機している事が分かった。

「……総司令、こちら航空基地。E35に飛龍群が待機中」

「了解、攻撃して黙らせろ。それと――号砲用意、皇帝側の刺客に思い知らせてやれ」

「……CP」

 フロリダとユタの艦砲射撃で驚いた皇帝に飛竜基地の事を伝えると、青ざめて大人しくなった。

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