Episode14 無血開城

 1945年8月15日に至るまで、日本の特攻隊がアメリカの艦艇に攻勢をかけていたが史実では沈めた船は輸送艦や駆逐艦が多かった。しかし、アメリカ側はアイオワ級戦艦のミズーリに修理不可能な歪みをもたらしたことで少々焦っていた時期があったらしい。

 まさに、油断大敵だ。

 ワンショット・ライターと呼ばれていた1式陸攻も現にイギリスのプリンスオブウェールズを撃沈しているからだ。

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 第二次攻撃隊が姿を現しても、容赦や手加減と言った言葉が無いように撃ち落としていく様は飛竜群からどう見えているのだろうか?気になる……。

 その頃、ベステリア王国では未確認の帆船に自慢の飛龍群団が撃墜されているという報告を受けて会議を行っていた。

「――陛下、あのような帆船が帆をはらずに迫って来ているのですよ!あれは帝国の物ですよ、きっと!」

「ナーゲリア宰相。辛うじて帰ってきた物達はあの船をハリネズミと呼んでいますぞ」

「それが帝国のやり方なのだ!帝国の考えは――!」

 その時、城内が揺れた。まるで砲弾が直撃したような、亜音速で飛翔する弾丸が空気を揺らしたかのような。

「な、何じゃ⁉」

「陛下!メレダ港沖に!」

 その時、アイオワ級戦艦5番艦イリノイが港湾沖に停泊している所を見た重鎮や国王らは死を悟った。

「嗚呼、神よ。我らをお救い下さいませ……」

「何という事だ……」

「ええいッ!攻撃しろ!易々と開門してなるものか‼」

 軍師は地団駄を踏みながら伝令に指示を出していたが、次の瞬間には失禁した。それは、たった一度の斉射だ。全砲塔が一斉に王国城に照準を合わせて、号砲したのだ。もちろん、城の目の前での砲撃なんていう経験が無い王国は無血開城を許してしまった。

 イリノイではその頃、ジャップが先陣を切ってSBT―22と強襲揚陸舟艇のLCVPで港湾に接岸する事になった。

 イリノイから降ろされたSBT―22にはMP5Kに銃剣を装着して9ミリよりも少し口径を大きくして10ミリに換えたMP5K―NとSCAR―Hをアメリカ陸軍使用に合わせて改造したMK17―Hを装備した6名の女性兵とジャップが乗船している中で同じく降ろされたLCVPには、M4にアッド・オン・グレネードを取り付けただけのM4―AOGとMK18を装備させた残りの26名の女性兵達が乗船している。

 それらが桟橋に接岸すると同時にジャップを先頭にして方陣形態で王城へと進んでいく。

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 場内に入ると男と女が震えながら出迎えた。

「どうかしましたか?」

 優しく問いかけると、男は宰相だと名乗り女は王女だと答えた。

「ああ、そうでしたか。じゃあ、先日の砲艦外交は喧嘩を売ったという訳では無かったのか」

「……せ、先日ですか?」

「ええ、使者が来まして任意聴取だと聞いたので」

「お顔が宜しくないですよ、ナーゲリア宰相?」

 見ると、宰相と言った男が小刻みに震えていた。畳みかけて、聞いてみた。

「宰相さん?あなた、まさかとは思いますが……王女さんに相談せずに来たのですか?」

 否定も何もなかったことで、その場の全員が悟った。

 あ、こいつが犯人だ……。

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