Episode09 キング・オブ・ディスターベンズ

 入隊試験は過酷だ、体力と持久力、判断などの戦闘で必要なスキルを測定する場所だ。

 海兵隊に入る時にチェリーもゼロも俺も、扱きあげられたうえでの入隊試験だった。

「良いか、貴様らぁ‼俺達は雇われ傭兵だ‼生半可な覚悟では、戦場で命を散らすぞ‼気を引き締めろ‼‼」

 試験前の激励をチェリーが担当した後、広大なサバイバルゲーム専用のフィールドに足を踏み入れていく女性兵士達の装備はMP5KをCQB用に改造したMP5K―CQBやVECTORを四十五口径仕様に改修したVECTOR―45を持っている。対する俺の装備は某戦場系FPSでもおなじみのAK―12だ。

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「面倒だから、全員で仕掛けてきても構わないが連携戦術を許すとしよう」

 試験という名の戦闘が始まった。

 始まってすぐに女性兵士達は匍匐前進で茂みを移動し始めたが茂みにジャップが仕掛けていた罠により早くも12名がダウンした。

「12名ダウン!信号ロストまで、1分!」

 救助に来た女性兵達は、別の罠に掛かってダウンになった。

「信号ロストまで30秒!おっと、6名ダウンを確認!」

 その頃、森林迷彩を施して傍にある木の上からその様子を見ていたジャップは鼻で笑った後、素早く静かにその場を離れた。

 18名の女性兵がギリギリで救助されると、情報を共有し始めた。しかし、発見した木の上に登った女性兵達は混乱した。

 確かに木の上に陣取っていたがその上にはお土産手榴弾スーヴェンニア・グレネードが置いてあったからだ、それが起爆して木の上に居た一人がダウンしたがすぐに救助された。

「すぐに救助されたため、ダウン判定は無効とする」

 場内に設置されているスピーカーからは、審判役のチェリーがダウン判定かどうかを判別しているのだが、チェリーの眼でもジャップの居場所を見つけるのは至難の業だ。

 ちなみに現在、ジャップは小高い丘の上に陣取って昼飯を食べている。

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 夜になると新兵達は野営の準備を始めるが、ゲリラになりきっているジャップは睡眠をしない。するのは過激的な移動と強襲的な戦闘スタイルだ。倒木を音もなく飛び越えると同時に獣道を全力疾走で駆け抜けていく。焚火の光が見えると同時に閃光手榴弾スタングレネードの栓を抜き投げ込んで撹乱させた後、一度退却してパルクールで移動していく。

 森の中は、パルクールの広場と同じで縦横無尽に駆け回れる。キャットやダブルコングなどの技をして撹乱させていく。

 極めつけは木の枝の上から地面へのエアリアルだ、この技は空中で側転するという軍人からすれば鬼畜とも呼べる所業だ。

「Gみたいに、素早いな」

 これをカメラ越しに見ていたチェリーが、ガチで呆れるほどである。

 ジャップの異名が、チェリーの頭の中で撹乱のキング・オブ・ディスターベンズになった。

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