Episode05 撤収と永遠の別れ

 最初で最後にけがをしたのは、幼少期だけだ。よくパルクールを教えてくれていた軍人上がりの親父に、失敗した時に殴られていた。

「お前には、私生活など向いていない!軍人になれ‼」

 よく言われた。昔はゲーマーになりたいと思って居たが、いつからか冷めてしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ヘリ到着は3分後だ、それまでここを死守するぞ!」

「3分って、長くないか?」

「文句を言わないでよ、チェリー!私だって――」

「インカミング‼」

 ゲリラ兵共がRPG―7を撃って来た事に気が付いた兵士の掛け声で、一斉に室内に戻ると間一髪だった。

「危なっ!」

「ゼロ、アイツの頭を撃ち抜いてやれ!」

「OK!」

 ゼロの正確な射撃で、RPG―7の再装填中だったゲリラ兵の頭に鮮血の花が咲いた。

「ナイスキル!」

「チェリー。味方に連絡できるか?」

「ヘリにか?」

「ああ」

 チェリーはインカムを付けると、流調な英語で会話を始めた。

「任せてくれよ。……こちらジーク小隊、コードネームはチェリー。応答してくれ」

 しかし、無線の先からの応答が無かった。

「応答してくれ!……おいおい、勘弁してくれよ」

「――マジ……?」

 可能性は一つ、撃墜されたらしい。しかしいつまでもここに居る事は出来ない、無線で話している間も他の隊員たちは諦める事なく撃ち続けていた。

 ジャップはHK416Dのマガジンを交換した後、小部屋から閃光手榴弾スタングレネードを投擲して閃光と共に飛び出して射撃をした。閃光に眼をくらました敵から逃げるようにして脱出後、階段を駆け上がり屋上に飛び出すと照明弾を撃ち上げた。

「照明弾を炊け。あと、無人機が見えないか?」

 すると、チェリーが手を大きく振り始めた。

「おーい‼‼」

「味方機か?」

「ああ、そうだ。おーい‼‼」

 チェリーの先にはブラックホークの姿があった、撃墜はされていない。俺達が屋上に来るのを待っていたらしい、ちなみに応答しなかったのはインカムのバッテリーが無かったらしい。

「無事か?」

「ああ、無事だ」

「負傷者から先に乗せろ!」

 迎えに来たヘリに伍長を先に乗せた後、俺とチェリーそしてゼロの順で搭乗した。

 アフガンの戦闘では幸運にも死者は出なかった、あの日。伍長は軍を辞めた、彼は最後の夜に俺を飲みに誘いだして言われたよ。

「次の小隊長には、君を推薦しておいたよ」

 松葉杖をついたジーク・ファルマ元伍長はその後、自宅で首をつって自殺したらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る