番外 台本/三人用/【待ち伏せ編】
【不機嫌シリーズ/待ち伏せ編】
こちらの台本は、番外編【待ち伏せ編】となっております!箸休め程度にお楽しみくださいませ〜。
▶始めに
・台本の自作発言、作品の転載、登場キャラクターの性転換、台本の内容が壊れるような行為は禁止です。
・使用されるときは、不特定多数の目に入るところ(コメント欄やキャプションなど )に『台本タイトル』『作者名』の
・そのほかの細かい お願い事は【台本利用上のお願い】のページ(▶https://kakuyomu.jp/works/16816700427787953461/episodes/16816700427788115278)を読んでください。
出会いの話は『お見合い編』/【親の言いつけで〜破談ですよね。】という劇台本です。
そして、当台本は 番外編です。
この台本 以前に公開している主役たちがワチャワチャしている台本たちも閲覧(もしくは上演)して頂けるとより楽しめると思います。
よろしくお願いします✨
────────────
【上演時間】
▷45分~50分 程
【比率】
男声 1人:女声 1人:不問 1人の3人用
【登場キャラ紹介】
♀︎
▷22歳
▶とある大地主の次女
▶喜怒哀楽がはっきりしているが、その分、押しに弱いので残念美人なところがある。
♂︎
▷25歳
▶国防海軍 所属の
▶明るくハツラツとしている。小首をかしげてウィンクとかしちゃうお茶目な性格。
▷いろいろあれだが、一応は三兄弟の長男。
▷身内を愛し、海で発生した害を陸に持ち込まない精神で<海の男>としての誇りと信念をもって生きている。
不問 ナレーション
▶相も変わらず出番がある。
タキツキ作品には必要不可欠な役です。長文読み、がんばってください。
────────────
───────
劇タイトル
▶ロングバージョン
『 不機嫌なお見合い相手の幼なじみが会いに来ました。いったい、何を言われるのでしょうか。 』
▶ショートタイトル
番外編 台本【待ち伏せ編】
────────────
──2077年の夏の盛り(葉月の頃)。
N:
むせかえるような熱気がアスファルトを焼くなか、白い雲とどこまで続く青空の下で──
澪留:はじめまして、きみが
ワタシは、きみのお見合い相手の腐れ縁。あいつが〈陸の男〉なら、ワタシが〈海の男〉ってやつだよ
<>
絢乃:語り
『 アルバイトしているお店の駐車場。大型バイクに寄りかかりながら声を掛けてきたのは、私のお見合い相手である<
(間)
N:この話は、
村を訪ねてきた
(間)
絢乃:お疲れ様でした!お先に失礼しますっ
N:ぺこっ!と頭をしっかり下げ、店の裏口から外へと出ていく絢乃。更衣室に直接繋がっていることもあり、室内に居た人達が またね〜 と見送ってくれる。
今日は、バイトの勤務日。
バイト先は、村おこし事業の一環で役所の敷地にオープンしたばかりのフルーツパーラーだ。
絢乃:心の声
《やっぱり、新店でバイトを始めて正解だったわ。働いてる人は、同じ期間からスタートだし、熟練も未熟もないから
N:今のところ、問題なく働けているようでルンルン気分で裏口から正面口へと歩いて行く絢乃。
従業員用の駐車場が柵で囲われているものの、お客用と隣接している。
絢乃:心の声
《最近は、お天気も安定していて自転車で通勤するのがラクでいいわ。風が強い日とか雨の日だと、
N:田畑が土地の大部分を
絢乃:心の声
《あら、お客様かしら。失礼のないように前を通らせてもらいましょ》
N:従業員用の駐車場の柵の手前には花壇もある。その近くに大型バイクを停めた一人の男が立っていた。
花壇には、アジサイとツツジの低木が植えられている。開花の時季になれば華やかになるだろう。
絢乃は、男の前を
澪留:あ、きみ!きみ、
絢乃:えっ!?
N:声ならまだしも、急に手を掴まれて目を見開いて驚く。
こんな田舎で歳の近い男から声をかられることなんて、滅多にない。物凄く
絢乃:ちょっと、何ですか??放してくださいっ!
(カバンをブンブンと振り回す)
澪留:わおっ、ゴメンって!急に掴んだりしてさ!
絢乃:あのっ、このお店はそういう事をされると困るんです!お
澪留:あ、警察は困るなぁ……
いや〜さ。そういう事ってナンパ目的とか勧誘目的ってことかな?申し訳ないけど、違うんだよ
絢乃:じゃあ!なんだって言うんですか!
澪留:うーん、警戒心が強いのはとても良いことではあるけど、ちょっと話を聞いてくれるかな?
絢乃:ッ、(軽い咳払い)……すみません、取り乱したりして
澪留:いえいえ、こっちこそ ゴメンね
N:不審人物 扱いされても怒らないあたり、彼の
それか、そういった扱いに慣れていて無関心の領域に達している可能性もある。だから、優しく感じるのだろう。
絢乃:あの、アナタはいったい……
澪留:あ、ごめん。名乗ってなかったね。
……初めまして、ワタシは
きみのお見合い相手の
あいつが陸の男なら、ワタシが海の男ってやつだね
絢乃:海の男……?
澪留:そう、海の男。
まあ、職業を隠す必要もないから言ってしまうけど。
(背筋を伸ばし、顔を少しあげ)
ワタシは、国防海軍 ヨコスカ基地 所属の
絢乃:あ、はい。ご丁寧にありがとうございます……
N:スポーツキャップに手を当てて敬礼をした
にっと笑う澪留は、手馴れた様子でズボンの尻ポケットからチェーンで繋げている[国防軍 在籍者 手帖]という金字の入った黒革の手帖を見せる。海軍を
澪留:よ〜し、これでお互いに顔見知りってことで大丈夫だね
絢乃:はい、そうなりますね
澪留:でね。
絢乃:えっと、はい。なんでしょう
澪留:ワタシ、キミにいろいろ話しておきたいことがあるんだよね
絢乃:ですよね。じゃなきゃ、こんなド田舎に居らしたりしないですもんね
澪留:うんうん、話が早くて助かるな〜
でさ、ここって寒原さんのアルバイト先だよね。申し訳ないけど、ここ以外にお茶とかできる場所って……
絢乃:あるにはあります。けど、真逆の商店通りなので、徒歩だと一時間はかかりますね
澪留:あー、さすがは
絢乃:あの、今日 知り合ったばかりでどうかとは思うのですが
澪留:うん?どうしたのかな
絢乃:アタシの家なら、ここから自転車で十五分なのでお嫌でなければですが
澪留:えっ、さ、さすがに斬られるかな〜
絢乃:斬られる?
澪留:うん。マナブくんにね。正直に話すなら興味本位で来たんだ。
あの、マナブくんがお見合いしたって聞いてさ。
絢乃:そんな、一大イベントみたいな……
澪留:いやいや!本当に、驚いたんだよ!
だから、休暇を貰ってすぐに実家に帰省してね。そこからマナブくんの弟くん達から、この村のこと聞き出して来たわけ。
で、寒原さんに会いに行くってことはマナブくんに話してないんだよね〜
だから、知れたりしたら……
いやぁ、怖い怖い
絢乃:心の声
《弟くんたちってことは、
N:疑っていたものの、馴れた口調で語る
澪留:とまあ、そんな感じで。公園とかでもいいんだ。今日は、天気も崩れないらしいし
絢乃:あ、でしたら。ここから、そんなに遠くないところに大きな公園があるんです。そこで大丈夫ですか?
澪留:おっ!じゃあ、そこで〜
絢乃:じゃあ、案内しますね。
澪留:どうぞ〜。見失わない距離で着いていくねー
N:
(間)
──しばらく走り、そして公園に到着。
澪留:は〜、本当に田畑しかないねー
絢乃:お疲れ様でした
澪留:
絢乃:どういたしまして。あの、本当にスゴいですね
澪留:なにが?
絢乃:アタシが自転車で走り出して、五分くらい経ってから追いかけてきましたよね?
澪留:あー、そういうねw
うん、全然。問題なかったよ
ワタシ、視力には自信あるから!
まあ。
絢乃:フナノリさんって狭き門なんですね
澪留:一番、狭き門なのは航空機の操縦士だけどねー
N:公園の駐輪場で、バイクと自転車を停める
歩きながらブランコの近くにあるベンチに向かって、そこに座った。
澪留:うーん、(伸びをする)
はぁ〜〜〜……
ほんと、良いとこだね〜
騒がしさとは
絢乃:あの、少しだけ
澪留:うん、同じ町だよ。
そもそも、ワタシの
何代か前のご先祖さまには、お互いの血縁が混じりあったこともあるみたいだけど。
今ではすっかり家同士の仲良しさんって感じかなー
絢乃:本当に歴史のある家柄なんですね……
澪留:あはは〜、そんな ご立派なもんじゃないよー
むしろ、
絢乃:あー、たしかに二百年近く、この村の地主をしてるとは聞きます。けど、どうなんでしょう。
……アタシ、次女なので知らない事が多いんですよね
澪留:なるほど、次女さんなんだね。えっと、上は?お兄さん?お姉さん?
絢乃:姉です。すでに
澪留:なるほどね。きみのお家は早いうちに
絢乃:よく分かりましたね
澪留:うん、きみのお姉さんってことはワタシと歳が変わらないんだろうなーって思ってね。マナブくんとワタシは同い年だし
絢乃:……本当は、アタシも乗り気じゃなかったんです
澪留:マナブくんとのお見合いが?
絢乃:いえ、
お見合いは、その慣習の一つでしかないんですけど……
澪留:なるほどね。家のシキタリだったんだ
絢乃:……はい。
けど、
澪留:あ〜、マナブくんなら言いそう〜
……ってことは、二人は元々面識があったのかい?
絢乃:えっと、二年前に一度だけですね。お酒の席だったんですけど……
澪留:へ〜、一度会ったきりで再会を望むほどとは。あのマナブくんがねー
N:カラダの関係──もといワンナイトがあったことは伏せて話したものの。察しのいい
澪留:まっ、
美人さんだし、マナブくんの面食いスイッチを刺激しなくもないよね!
絢乃:えっ、び、美人だなんて そんな……
澪留:学生の頃とかモテたんじゃないのー?
絢乃:えっ、そ、そんなことないわけじゃないですけど……
澪留:そっか、そっか〜
あ、ちなみに中学生時代のマナブくんは孤高の星だったよ。あの性格だからね。陰でモテても告白する子は少なかったかな〜
絢乃:そ、そうなんですね
澪留:しかもさ!告白を断るときのマナブくんの決まりゼリフがね。
ありがとう。気持ちは嬉しいが、答えられない。私は、国を守ることで手一杯だからな、とか言っちゃってさ〜
もう、こじらせ過ぎてて笑うよね〜
絢乃:……そんな若い頃から国を守る職になるって決めてたんですね
澪留:うん、アイツは誰よりも真面目だから。
兄弟の中で国防の職が務まるのは自分だけだ、とか言ってたからねー
絢乃:……
澪留:うーん、どうだったかな。
まだ、中学生のときは
いつかは、海に出るんだ〜くらいの。
……
絢乃:アタシは、ひねくれてました
澪留:それは、反抗期だったから?
絢乃:それもありますね。
まあ、だいたいは姉と比べられている気がして、それに応えられる結果が出せないのが嫌で……
N:
絢乃:自分勝手に、追い詰められていただけなんですよ
澪留:……そう。まあ、その年頃にはありがちなことだよね
絢乃:そうなんですよ。
反抗期をこじらせて、素直になれなくて。高校を卒業してから両親に内緒で都内に飛び出してみたり。
今となっては、本当にバカなことしてきたなーって……
お父さんも、お母さんも、ずっと心配してくれてたんです
澪留:……いいんじゃないかな
絢乃:え?
澪留:高卒とともに
よっぽど仲の悪い家庭じゃない限り。親はどんだけ振り回したって、心配させたって受け入れてくれるものなんだよ。……特に、娘なんてのはカワイイからね
絢乃:そう、なんですかね。
(少し考えて)……まあ、そうですよね。じゃなきゃ実家に連れ戻されたりしないですもんね
澪留:あ、連れ戻されたんだ。いったい、どんな心配をかけたの?
絢乃:そうですね……、ちょっとだけシにたいなって思ってた時期があったんです。
澪留:えっと、それは……
絢乃:一年くらい前です。
まだ都内で暮らしていた時の話ですね。掛け持ちしてたバイト先の人と折り合いが悪くなって働きづらくて、だんだんと疲れちゃいまして。
それと、同時期にちょっと変な人にも目をつけられてストーカー被害に遭っちゃって……
N:妙な空気になる。
いくら諭の幼なじみと言っても絢乃とはハジメマシテの間柄。
絢乃:あ、えっと、すみません。つい、話しすぎて──
澪留:(顔を手で覆い)……おうふぅ……、予想より重い話だった。ゴメンね、軽いノリで聞いたりして
絢乃:あ、いえ、アタシのほうこそ。スミマセン。
なんだかんだ解決した話ですし、アタシも生きてますから。
澪留:いや、まあ。命あってこその物種とは言うけれど……
ちなみに、この話。マナブくんは知ってる?
絢乃:はい、知っています。すでにお話させてもらったことなので
澪留:その時、マナブくんはなんて言ってた?
絢乃:いえ、特に変わったことは話されてませんでしたね。そうか、辛い思いをしたな、よく逃げ出してくれた、だったかな?
澪留:ホント?急に刀を手入れしたりしてなかった?
絢乃:刀の手入れ?えっと、どうだったでしょう。……うーん、すみません、覚えてないです。もう、一ヶ月も前に打ち明けたことなので
澪留:なるほど、おっけー。あとで調べるよ
絢乃:何をです?
澪留:んにゃ、こちらごとだよ。でもまあ、セーフだね。また首の皮が繋がったよ
絢乃:あの、先程から斬られるとか、なんとか言われてますけど……
澪留:うん?ああ、ワタシなりのセーフラインだよ。
あんまり
絢乃:
澪留:んにゃ、ワタシより大人だよ。むしろ、出来すぎる男かな。
ただ、色恋に関しては落第生……まあ、口下手な奴だからね
絢乃:あ〜、たしかに。
言われてみれば、そうですね。
よく黙ってしまう時間とかあります。それでも、アタシと居る時はよく話してくれますよ。ちょっと話し方が固いなって感じますけど……
澪留:そっか、そっか~。
まあ、マナブくんなりに頑張ってるんだろうね。あいつ、表情筋が一番 仕事しないけど~
絢乃:そうなんですよ!今は慣れたから大丈夫になりましたけど!
お見合いの時も、ずっと無表情でイヤイヤに来られたのかと思ったくらいですし。正直、気まずくってどうしよう、って感じで!
澪留:やっぱ、マナブくんらしいやw
てか、相手に気まずいって思わせる時点でお見合いとしては失敗だよねぇ
それもさ。弟くん達から聞いたけど。あいつ、軍服で来たんだって?いくら国防官の正装だからってないよな~
絢乃:たしかに、お見合い相手が軍人さんとは思ってなかったので驚きました。
澪留:誰だって思わないよ~
……国防官ってさ。基地とか駐屯地から出てこないし、よっぽど結婚 願望が強い人とか恋人を
絢乃:じゃあ、アタシは
澪留:うん、とても。すっごく、めずらしいよ~
絢乃:心の声
《今、考えると。
澪留:心の声
《おやまぁ、
N:本人のいないところで言いたい放題の
今頃。
(間)
澪留:さて、そろそろ
絢乃:あ、そうですね。言われてみれば……
澪留:この公園に自販機とかあるかな?
絢乃:えっと、自治会の建物の中に三台と、遊具のある出入り口側に二台あります
澪留:自治会の建物は、あの
絢乃:そうです
澪留:おっけー、ありがと。
絢乃:あっ、アタシは大丈夫ですよ
澪留:えー、奢らせてよ。お礼にしちゃあ安いだろうけど、話しに付き合ってもらってるしさ
絢乃:あー、なるほど?
えっと、じゃあ、お言葉に甘えて。微糖のミルクティーがあったらお願いします
澪留:微糖の?おっけー。買ってくるねー
N:すたこらと絢乃から離れ、自治会の建物へと向かった
絢乃:心の声
《まっずくな背筋……鍛えられたカラダつき……。同じ国防官なのに、
N:ふぅ……、吐いた ため息は青く澄んだ空に消えていく。
(間)
──しばらくして。
絢乃:今地さんってば遅いなー、何してるのかしら……
N:スマホで時間を確認すれば、かれこれ一〇分は経っていた。
飲み物を自販機に買いに行くだけなのに時間をかけすぎている。
絢乃:ちょっと様子見ね
N:
絢乃:心の声
《もしかしたら、自販機の飲み物が売り切れてて他のところ行ってくれてるかもだし……確認はしておかなきゃ……》
N:こういう時に連絡先を交換しておけば
絢乃:……
N:そろり、少し重たい押し扉から館内へと入って
澪留:あっ、いやぁ、観光ではないですよー?知人に会いに来ただけでして~
おっと、おかあさん。あんまり触られるとくすぐったいですから。ね?やめましょ?
絢乃:心の声
《あ、なるほど。これはいくら待っても無理ね。完全にお婆さんたちに囲まれちゃってる……》
N:角を曲がれば目的の人物がいた。
しかし、若い男がろくに残っていない田舎の村だ。
絢乃:……
澪留:おっ、ああ!
絢乃:心の声
《助けてって言いたそうな眼差し……》
N:
とすれば、お年寄りたちの視線は絢乃に移る。そして、質問責めという集中砲火を受ける羽目に。口々に この若い男とはどんなだ?どこで知り合った?もしかして、この前の見合い相手なのか?などとわいのわいのと騒ぐ。
絢乃:えっと、
その、今地さんとアタシの関係は……
澪留:ワタシたちは、友人だよね?
絢乃:そ、そうです!
N:お年寄りからの包囲の目標でなくなったのをこれ良しとし、すぐさまに助け返す
絢乃:あ、ムラタさん
澪留:(小声)……誰だい?
絢乃:(小声)……ムラタさんです。この自治会の建物を管理されている人で、村で唯一の不動産を営んでいるアタシのお父さんの旧友です
澪留:(小声)……なるほどね。お婆さんたちの扱いも慣れてるみたいだし、かなり顔が広そうだね
絢乃:(小声)……ええ。優しい人なんです。怒らせるとあれですけど
澪留:(小声)……あー、だからお婆さんたちが素直なんだね
絢乃:(小声)……そういうことです
N:ふたりがヒソヒソと耳打ちしているあいだに、ムラタさんから小言を受けたお年寄りたちは、
澪留:わぁお、紳士的。かなりスマートな人だね
絢乃:ええ、愛妻家としても村では有名なんです
澪留:そっかぁ、あんな紳士な人と暮らしてる奥さんがどんな人なのか興味が湧くなぁ
絢乃:あー……、そうですね。一言で言うなら肝っ玉 母ちゃん です
澪留:えっ、意外
絢乃:お父さんから聞いた話では、ムラタさんって外では紳士的な人ですけど。家の中ではダラしないらしいですし
澪留:あ~、そっかそっか。押しの強い人に引っ張ってほしいタイプなわけだ
絢乃:たぶん、そうです
N:言いたい放題はどちらなのか。根拠のないネタで盛り上がるのは、年齢なんて関係ないのだろう。
(間)
澪留:いやぁ、まさか 部屋を貸してもらえるなんてね
絢乃:本当ですね。ムラタさんにも気を使っていただいて
澪留:本当、感謝だね。
人の目とか気にせず話せるから有難いな〜
N:外に出ようとしていた二人を呼び止めたムラタさんは、先程の
古めのエアコンからは部屋をがんばって冷やそうとしている風を出しており、モーターが微かな音をたてている。小上がりの畳の上に脚の短いテーブルが置かれているので、それを挟むように向かい合って座っている
絢乃:心の声
《なんだか、デジャブというかなんと言うか。お見合いの席みたい……》
N:
澪留:それでね。
絢乃:あ、はい。なんでしょう
澪留:いろいろ話さなきゃいけないって前置きしたけどさ
絢乃:あ、はい、そうですね……
澪留:うーんと、捕って食いやしないからさ。緊張しなくてもいいんだよ?
絢乃:えっと、はい。だ、大丈夫なので。お話、続けてください
N:改まって引き締まった場の空気に
澪留:うん、じゃあ。話というより お願い になるのかな
絢乃:お願いですか
澪留:うん、お願い。
……ひとつ、何があっても国防軍人として責務を果たしたマナブくんを責めないでほしい。
強い心で許してほしい
絢乃:つよい、こころ?
澪留:うん、強い心。ものすごくアバウトで分かりにくいかもしれないけど、かなり重要なことなんだ
絢乃:えっと、どうして。心の強さが大事なんでしょうか
澪留:どうしてだと思う?
絢乃:えっ、えっと、えっと……
(顔を俯かせて)……ごめんなさい。分からないです……
澪留:うーん、
寒原さんからして、国防軍人ってどういうイメージかな。
……恐ろしい存在?危険な集団?
絢乃:あ、えっと……
アタシが思うに、国防官さんは紛争地や被災地を助けてくれる存在です。
……正直、この年齢になるまで
澪留:ふむふむ、前時代な答えだね
絢乃:……前時代?
澪留:あ、ごめんね。
別に否定しているわけじゃないんだ。ワタシだって、当事者じゃなかったら
絢乃:そうなんでしょうか……
アタシの周囲の人は、だいたいがそう言った考えの人ばかりな気がします
澪留:そっか、国防軍人の一人として嬉しい限りだね
N:絢乃は、顔を俯かせてしまう。
澪留:……あ、ほら、例えで言っちゃったけどさ。
今の新しい組織になってから、ワタシら、国防官ってのは危険な集団だと思われているんだ。国の
言い方を変えれば、人を殺す方法、命の奪い方を身をもって知ってる
絢乃:……け、けど、それと心を強くすることはどう繋がるのでしょうか
澪留:寒原さんの言葉を借りるなら、国防官は助けてくれる存在なんだよね?
絢乃:はい、そう思っています。
澪留:けどね。マナブくんは
絢乃:……あっ……
澪留:理解してくれたみたいだね
絢乃:……はい。つまり、今地さんが
他の人の救助を優先することは責務であり、もしかしたら生きた状態では二度と会えなくなる。……それらを許せる心であれってことですね。
澪留:うん、大正解。
でも、まあ。正直なところ、国防官も人間だからね。身内が被害や被災したって分かったら、ほっぽり出して助けにいきたいよ。けど、国防の名の下では駒でしかない。ただ、無事でいてくれ、生きていてくれ、死にたくない。と心の中で叫ぶしかできないんだ
絢乃:……そうですよね……
N:
澪留:……とまあ、重い話になっちゃったけどさ。国防官と近しい関係になるって覚悟がいるんだ。
だから、
絢乃:いえ、大丈夫です。アタシも、今の環境に甘えていたので
N:真っ直ぐな眼差しで
澪留:……あ、そうそう。お願い事は もうひとつあるんだ
絢乃:え、はい。なんでしょうか
澪留:覚悟が必要っていったけど。次は、逃げる勇気ももってほしいんだ
絢乃:逃げる、勇気?
澪留:うん。さっきも言ったけど、国防官って人の命を奪う方法を知ってる。だから、傷つけあって心がボロボロになってしまうこともある。
ワタシに至っては、正式な国防官になって五年目なんだ。
(間)
澪留:けれど、その五年間に仲間の
直接ではないにしろ、ワタシが奪った命、失うことになった未来なんだ。
N:静かな声で語る
澪留:……だから、何かと耐えて過ごしているから ヒトを傷つけまいと立ち振る舞うんだ。
特に、マナブくんは理性でがんじがらめに耐えようとする。
けど、その凝り固まった心をほぐせる人が必要なのも確かなんだ。けれど、場合によっては火に油。慰めようとした側が身の危険に繋がるかもしれない。だから──
絢乃:逃げる勇気をもつ、ですね
澪留:うん、そういうこと。
今後さ、
ワタシが話したようなことって人間関係には大切な要素だと思うんだ。
だから、自分を気にかけてくれる人のことは大事に。そして、自分のことを愛してあげてね
N:やはり、
絢乃:心の声
《ああ、優しすぎる人。こんな人がアタシの生きている国の海を守っている。
陸には自他ともに厳しいけれど、やっぱり優しい人が駆け抜けて救ってくれている。
……アタシは、そんな人達と出会えている。気にかけてくれる人を大事に。自分を愛せるように、ね。》
(三秒くらいの間)
──その後。
澪留:いやぁ、結局。だいぶ、長いこと話し込んじゃって悪かったね
絢乃:いえ、とても学びになりました。ありがとうございます
澪留:いやいや、こちらこそ付き合ってくれて ありがとうね。
絢乃:……
澪留:うん、指令が下りたら出るよ。何せ、ワタシは《海の男》だからね
絢乃:そうですよね。……ご武運を
澪留:うん、ありがとう。
N:
その姿が視野から消えるまで
絢乃:あの人が、
(スマホが震える)あれ、着信?誰からだろう ── はい、もしもし。
N:着信の相手は、まさかの
元気か?から始まる世間話と、今日は何をしていた?という問いに対して、嘘が下手くそな
──後日。
澪留:うおわぁ!!マナブくん!!それは、ダメだと思うんだ!!あ、いや、黙ってキミの想い人に会いに行ったのは反省してますから!!
その、改造した木刀を振り回して追いかけてくんのは勘弁してぇえぇ!!!!
N:騒々しく声を張って逃げ惑う
そんな二人をドン引きしつつも、
(間)
澪留:語り
『余計なお世話だと思った。
だから、立ち去るときに言いかけたことは飲み込んで、心の内に仕舞っておく。大丈夫だ。あの子なら、ワタシの不器用な幼なじみを任せられる。そう、確信した。芯のある子だから、不器用なアイツもそういうところに惚れたんだろう。……おふたりさん、幸せになってね。』
絢乃:語り
『捨て身の覚悟で国防してくださっている人たちがいる。
そんな人たちが、どれほど危険なことと隣り合わせなのか。
アタシの想像できる範囲では薄っぺらく
【番外】待ち伏せ編
〜おしまい〜
台本公開日
2022年9月19日(月)
どうも、瀧月です✨
主役ふたりが【すれ違い編(全4話)】でおさまるところにおさまったので、とりあえず箸休めな番外台本を投稿していきます。今後とも、不機嫌シリーズをよろしくお願いします🙇⤵︎
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