第169話 距離と時間差で誤解

こんにちわ。妊娠中の悪役(の)令嬢人妻の董青です。


ゆっくり落ち着いて出産に取り組むべく、日々体操や散歩と節制に取り組んで体重をなんとかしようとしています。

なのに、なんで内乱が起きてるんですか。いい加減にしてほしいのですが。


董卓パパが軽はずみに挙兵し、その後軍を解散したということで、状況が相当混乱しています。

董卓パパとお付きの李傕、郭汜、馬騰さん。それに教団幹部の公明さん、私、趙雲さんで集まって情報交換を行います。


というか挙兵する前に連絡してほしかったんですが、さすがに千里を一瞬でやり取りできる技術はないので、

結局時間差の時間差で誤解したまま進むということがよくあるんですね。



「情報を整理すると、やはり父上の貰った勅命は偽物だと思います」

「まぁ、そうだとは思っていたが……、袁紹らは一度ぶちのめしたかったんじゃ」


董卓パパがちょっと可愛く仰います。ダメですよ。一度囲んで棒で殴ってチャラにしてあげたのに。


「向こうはチャラだと思っていないから襲ってきたのだと思うが」

「……そうですね?」


うーん、お話だと一度ぶちのめせば改心してくれるんですが、なかなか上手く行かないものですね。


「あと、宦官を殺そうとしている袁紹らから守って宦官に貸しを作って、白を皇后にすれば皇帝も落ち着くだろう。青も安心して子供を産めると思うてな」


私の天女えんじぇるである董白トウハクちゃん12歳は私の姪です。亡くなったお兄さんの娘ですね。

私が現皇帝の弁くんと結婚するつもりがないと見抜いて、皇后を狙っています。弁くんが好きなのではなく、純粋に贅沢狙いです。


「……父上は外戚こうていのしんせきになって政権が欲しいのですか?」

「いや?前にも言ったが、中央の政治などわしには向いておらんだろ。ただ董一族に福徳があればと思ってだな」


董卓パパも贅沢したいだけでした。うーん、贅沢なんて言ってもせいぜい働かずに屋敷で宴会したり、外で馬車乗り回して遊ぶぐらいなのですが……なんでみんな贅沢したいんですかね。

……って私の人生が相当恵まれてるだけで、普通の人はそう思って当然なのかもしれません。



「でも悪手だったと思いますよ。だって偽勅なんてバレたら新帝陛下がお怒りになるでしょう。宦官だってタダでは済まないです」

「そこは反乱鎮圧の功績で張譲ら宦官たちがごまかすと思うが?」

「いえ、新帝陛下には曹孟徳さんや劉玄徳さんがついています。袁紹の反乱の事実はもう新帝陛下や劉玄徳さんに知らせ済みですし、

西園軍という直属の部隊も握っていますから、そもそも袁紹らの反乱は西園軍にすぐに鎮圧されますよ」


「新帝陛下は服喪で動けないと聞いたが……」

「いや、さすがに反乱が起きたら動くでしょうし……、陛下が動けなくても曹孟徳さんや劉玄徳さんがちゃんとやってくれます」

「ううむ、ではやはり青の言う通り早まったか。軍を解散して正解だったな」

「でしょう?」


董卓パパがやっと納得してくれました。


とにかく情報がちゃんと伝わってないと、時間差での誤解があるんですよね。



 ― ― ― ― ―



と、そこに賈詡さんがやってきました。

賈詡さんは以前に、新帝の弁くんに寝返って、曹操さんや劉備さんとつながってもらっています。


しかし、珍しく表情が暗いです。


「新帝に報告できましたか?宮中の状況はどうですか?」

「……申し訳ございませぬ。陛下にはご報告叶いませんでした。劉校尉リュウたいさは今、袁術の率いる兵と南宮ナングウで戦っておられます」


帝都洛陽には洛陽城の城壁とは別に宮中の城壁が大きく二つあって。北宮と南宮に分かれています。南宮は政治の中心で三公九卿だいじん、各将軍が参列するところ。

北宮は儀式殿や掖庭後宮がある場所です。


というかその政治の中心の南宮が攻められてるのはかなりまずいですね。


「え、劉校尉リュウビさんだけですか。残りの西園軍はどうしています?曹校尉ソウソウさんは?」

曹校尉ソウたいさと西園軍の主力は、董閣下討伐のため、河東郡に出撃しております……」


賈詡さんが暗い表情で報告します。


一同絶句。


「……え」

「あ?」

「げっ?!!」



「なんで?!!父上は軍を解散しましたよ?!」

「その情報が洛陽に伝わる前に出撃の勅命がでておりまして……そこに袁紹、袁術らが北軍五営このえへいを抱き込んで宮中に攻めかかったのです」




……距離と時間差での誤解いいいいいいいいいいいい?!!!!



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