第167話 一騎討ち
并州の北部は人口が稀薄で郡の人口が1-2万というのが普通です。
中原の郡は少なくとも数十万、南陽のような大郡は人口200万を数えるため、同じ郡とは思えません。
そんな状況でなんで郡県を設置しているかというと黄河の北端に城塞を構えて、対異民族の防壁として維持するためです。
農民が数百で兵士が倍居るようなほぼ純軍事用途の郡県が黄河の北端にずらっと並んでいます。
そしてそこの住民は普段から遊牧民の襲撃や略奪に対抗して、庶民でも
并州兵というのはそういう世紀末な地方で鍛えられた精鋭なのです。
そして、目の前にいるピカピカの
歴史では董卓パパを暗殺した、董家の敵です。
并州の丁原の兵が来てると聞いて嫌な予感してたんですが、いきなり大当たりを引いてしまいました……。
というか、呂布だけでも危ないのに、となりに同じく三国志でも最強級の猛将、
董家滅亡の運命を回避するためなら呂布を倒せばいいのですが、ちょっとそんな余裕はないですよね……。
「文遠よ。このような関東の雑魚などさっさと蹴散らしてしまえ!」
「おう!」
と思ったら、呂布と張遼さんが同時に打ちかかってきました。
「ここは通さない!!」
そこに公明さんが棒で呂布の戟を受け止めます。
「貴様の相手は俺だ!」
趙雲さんは槍で張遼さんの戟を打ち払い、一騎打ちが二つになってしまいました。
というか、向こうは漢朝の正式兵器である
ちなみに槍と呼んでいるのは
甲高い音を立てて各者が武器を打ち合います。
四人が四人ともすさまじい勢いで武器をふるいますが、お互いまったく引かずに打ち返しています。
「おお……」
見事な武器捌きをみせているらしく、周りで取り囲んでみている官兵や遊侠、護衛信者たちから感心したような声があがります。
……私にはわかりませんけどね!というか何をぼーっと見てるんですか。
「ぼーっと見てないで、敵を攻撃して下さい!」
私は護衛信者さんに公明さんの支援をするように言いました。
「む、無理です?!あんなのに割って入るなんて、一撃で死んでしまいます!」
「それに、正々堂々と一騎打ちをしているのに、邪魔をしては武人の名折れ、
なんと信者さんに反論されてしまいます。
うう、趙雲さんは何も言わずに参戦したのに……でも確かに一般護衛信者では割って入る度胸がないのもわかります。
武器の差もあるのか、互角に打ち合ってはいますが、少しずつ公明さんと趙雲さんが押されているようです……。
私は武人の何とかは一切わかりません、家族と味方が最優先です。でも、私にできることはあとはもう応援するぐらいしか。
お願い!勝ってください!!
……祈っててもしょうがないですね、誰か、誰か助太刀できる人を……。
居ないですよね?!楊奉さんはノビてるし……誰かああああ?!
「青よ、何をしとる、早く逃げんか!」
「……父上?!」
そこに、現れたのは、太った身体の上に丸い顔、丸くふさふさとした
腰には両側に矢筒を下げて、弓を持っています。
「父上、なんでここに、というか!」
私は董卓パパの持っている弓を見て、呂布を指さしました。
「あの羽飾りの武将を撃ってくださいっ!」
「む、しかし公明が一騎打ちをしているようだが?」
さすがに董卓パパも武人系なだけあって、躊躇するみたいです。
「あれが、董家の危機です!」
「よし、分かった!」
董卓パパは手早く矢をつがうと、弓を大きく引き絞り、狙いすましてひょうと撃ち込みます。
ザシュッ!!
「!!!!!!?」
寸前で気が付いた呂布が少し頭を捻り、矢が
呂布は慌てて飛びのくと、こちらを見て睨みつけます。
「どこの雑魚だ!一騎打ちの邪魔をするとは!」
「
「はぁ?!!!」
呂布と張遼さんがその名前を聞いて愕然とします。
そんなに董卓パパは有名なんですね。
「丁度良いわ、最高の大将首め、そこを動くな!」
「いかん?!奉先どのっ?!」
張遼さんが慌てて止めようとしますが聞かず。
呂布はそう叫ぶとこちらに向かって突進してきます。
「ふん!丁原の子飼いの猪武者か!ゆけい、
「
そう董卓パパが叫ぶと、傍らに控えていた武者三名が一気に呂布にとびかかります。
馬騰さんを採用したと聞いていましたが、ここに参加してもらえると心強い限りです!
「クラエ!……ウオッ?!」
李傕さんが剣を抜いて正面から勢いよく斬りかかり、呂布にいなされます。
「死んどけやぁ!」
そこに、背の高い郭汜さんがいつもの関西弁で裏に回っての奇襲。
呂布は身軽にそれをかわすも体勢を少し崩し。
「涼州の武、お見せするで!」
そこに馬騰さんの一撃が襲い、呂布は防戦一方に。
そうしている間に、董卓パパが矢を当たるか当たらないかのところに射かけ、呂布の動きを牽制します。
堪らずに呂布が叫びます。
「おのれ、卑怯だぞ!?董家の武はこの程度なのか!」
「勝てばいいんです!」
「勝てばいいんじゃ!アホめ!」
思わず董卓パパと同時に叫んでしまい、顔を見合わせて笑い出してしまいました。
「あははは」
「がはははは」
「何がおかしい!」
「いかん、退こう!奉先どのぉおお?!」
張遼が止める声も聞こえずに、呂布が真っ赤に怒って戟を振り回し始めたところに、公明くんがとびかかり。
勢いの乗った棒の一撃が、呂布の脳天を冑ごと叩きつけました。
ぐらり。
巨体が地面に崩れ落ち、壊れた羽飾りのついた冑が地面に転がります。
「ひ、退け!退けい!」
「う、うわああ?!」
張遼が趙雲さんの追撃を振り切って、逃げ出し、并州兵や
私たちの勝利です!
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