第147話 先手を打とう
いろいろあって、洛陽では曹操さんのお父上である
曹嵩さんの最初の仕事が皇帝直属の中央軍である西園軍の編成です。西園というのは洛陽の西にある
そこに天下中の郡県の兵から射撃など武術の技量の高い兵を特別に呼び集め、兵力は1万と称しています。その費用は売官などで稼いだ皇帝の私費から出ています。まぁ、ほぼ私が貸した1億銭が中心になりますが。
西園軍の指揮官はまず無上将軍として皇帝が直接就任。補佐をする校尉に宦官で皇帝に近い
曹操さんが選んだから人材として問題ないんでしょうが、三国志の初期にでてすぐいなくなった面子ばかりでちょっと心配ですね。
さっそく皇帝は洛陽で閲兵を行い、悦に入ってましたが学者や儒者たちに散々に文句を言われたみたいです。
曰く「軍隊は辺境に設置すべきで、中央に設置して遊ばせるならなんの役に立つのか」とか「費用の無駄」とか「兵ではなく徳を重視すべき」とか「皇帝が兵を直接指揮するなど汚れる」とかいろいろ言われて、ついに気分を悪くして後宮に引っ込んでしまったとか。
いやまぁ、それぞれの発言は分からなくもないですが、皇帝に対して遠慮なく言いますね。
と思っていたら曹操さんが教えてくれました。
「袁紹や袁術たちが自分たちが校尉になれなかったので、仲間の儒者を動員して批判を言わせてる、気にしなくていい」
なるほど。
また
まぁ、軍事は分からないので……公明くんと趙雲さんはどう思いますか?
と聞くと、公明くんがあっさりと答えてくれました。
「ああ、兵の半分は信者です。万が一にもこの兵が教団や巫女様に向けられたら、それこそなんとかします」
「……なるほど」
軍事は難しいので分からないのですが、布教はどんどん広まっているみたいですね。
また辺境に
― ― ― ― ―
「って考えていたらダメなんですよ公明さん。先手を打たないと」
「はい、木鈴さん。何が必要でしょうか?」
益州や幽州の反乱は先手を打てなくて、防ぐことができませんでした。
しかし、私は次に巨大な反乱軍が生まれる場所を知っています。
そう、魏軍の主力として有名な青州軍、青州の黄巾残党100万ですね。
あちこちに支部を作って布教というか健康法と産業振興を進めている我々ですが、
そしてその中でも大規模な反乱が予定されている青州は緊急度が高いです。数年後に100万まで膨らむということは今すぐ手を打てば悪化しなくて済みますしね。
「というわけで、青州にいきます」
「ダメです」
……公明くんににこやかに拒否されました。え、危ない?
ダメ?
「ダメです、布教ならば信者を向かわせますから」
いや、でも報告書だけだとよく分からないんですよね。やはり直接行ったほうが。
「木鈴さんを守るのが私にとってまっすぐ最優先です」
うーーん。
「なるほど、じゃあ旦那さまが護ってくれれば解決ですね?」
「えっ?!」
上目遣いで公明くんの目をじーーーーっと見つめます。
「……護ってくれないんですか?」
「……絶対護りますっ!」
なんかちょっと顔を赤くして叫ぶ公明くん。可愛い……。
「はい、では行きましょう!」
「……はい」
さぁ、久しぶりにお出かけです!!
― ― ― ― ―
青州は漢土のある大陸の東の端にあり、東の海につきだした半島があるところです。昔の春秋戦国時代には斉の国があり、三国志では根性の悪い
なんか調べて貰ったら、今は孔融さんはまだ洛陽勤めらしいです。会わなくて済んでよかったです。
洛陽から青州には黄河を船で下っていきます。黄河は東西に流れていますが、陳留のあたりで東北に向きを変えます。この流れに沿って行けばすぐ青州です。
孟津の渡しで船にのり、延津の渡しを過ぎました。
船べりから対岸を見て、船頭さんから地名を順番に聞いていきます。
「ああ、このあたりが官渡や白馬ですねぇ」
と言っても別に何かあるわけではないのですが、地名はなんとなくワクワクしてきます。
そのまま濮陽の沖を過ぎ、青州の平原国に入りました。
さぁ、青州黄巾を退治しますよ!
船を降りて、青州の地を踏みます。
青ちゃんの青州入り。なんちゃって、ふふふ。
そこに公明くんから一言。
「木鈴さん、聞こえてるよ」
「独り言!独り言ですから!?」
※
・交趾刺史部が交州に改められるのは建安8年(西暦203年)のため、現在は交趾と呼ばれています。交阯郡 (郡)と交趾刺史部(州)が同じ呼び名でややこしいですが良くあります。
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