第122話 現状整理その3-人材管理も大変です-

「すまないが、少し話が難しくなってきた。つまりこういうことでいいだろうか」


趙雲チョウウンさんが口を出しました。


「つまり、政権獲得に向けて二つの争いがあるわけだな、どれも弁皇子が派閥、特に宦官や名士に借りを作らずに勝ち抜かねばならない」



一回目の戦いが、皇太子になる争い。

弁皇子(何一族と宦官主流)と協皇子(董太后と宦官蹇碩ケンセキ派)。


董皇后は現皇帝の母親で、何皇后が現皇帝の妻で弁皇子の母親なので、嫁姑の争いになってて容易に決着しない。


一回目には味方の多い弁皇子が勝つとして、

二回目の戦いが、弁皇子の後ろ盾を何皇后+宦官がとるか何進大将軍+名士きぞくが取るかの争い。


皇帝といえども忠実な部下がいないと政治ができない。

弁皇子の即位に派閥に借りを作ってしまうと、宦官や外戚が支配する時代に元通り。


なので、あと20年ぐらいかけて弁皇子がゆっくり実績を得て即位するのが最高なのだけど、私は霊帝いまのこうていが数年で死ぬことを知っている。



整理をした上で趙雲さんが提案します。


「ならば、やはり中立である董将軍トウタクしょうぐんに兵を率いて弁皇子を支援して頂くのがよいかと」

「しかし、それだと……」


趙雲さんの提案がベストに私も思いますが、問題はそれだと董卓独裁で袁紹さんとかがブチ切れて三国志なんですよね。


そういえば董卓パパも言ってました。


「父上は政権などいらない、もしそういうことがあったら天下で弾圧されている名士名族を推薦して、朝廷でしかるべき位置を占めてもらうと仰ってました」

「……それでよいのでは?」


賈詡さんが頭を捻ります。


「政権を辞退なされば董将軍の名声も高まりましょう、いずれ名士を手懐けるために官位は配りますし」

「でも袁紹が怒るんじゃ」

「袁紹が怖いならば袁一族にも高位高官を配ればよいでしょう」


公明くんと趙雲さんも頷きます。

これで問題ない、かな?



なんか気にかかりますが、政権獲得についてはひとまず方針が決まりました。



 ― ― ― ― ―




「で、第二に政権を獲得したら有能な人材を登用するわけですが、これは涼州や荊州での成功例がありますな。主公とのが推薦した人材は非常に有能で成果をあげております」


って、なんのことかと思ったら、孫堅さんや劉備さんの推薦の件ですか。

……そっか、私、だいたい文官も武将も活躍するかどうか名前見たらわかるんですよね。これは大きな武器です。


物語の三国志の時代だけですけどね。


「それに、すくなくとも宦官が私利私益で登用するのを止めるだけでも大きな効果があるかと」


公明くんと趙雲さんが大きくうなずきます。

やっぱり民衆に近い立場だと宦官の横暴がきついんですよね。私も木材とかで苦労しましたし。



「ところで、弁皇子が即位されたらどの人物を推挙するかとか決めておかなくてよろしいでしょうか?」

「あ、それはいいですね、やりましょう。洛陽にいる名士の表なんかありますか?」

「……ありますが、それは」


なぜか賈詡さんが言いよどみますが、見せてもらいます。


袁紹エンショウ

袁術エンジュツ

孔融コウユウ

何顒カギョウ

荀爽ジュンソウ

荀攸ジュンユウ

韓馥カンフク

沮授ソジュ

審配シンパイ

田豊デンポウ

逢紀ホウキ

郭図カクト

許攸キョユウ

曹操ソウソウ 帰郷 

張邈チョウバク

鮑信ホウシン

王匡オウキョウ

王允オウイン


おお、すごい面子ですね。知らない人もいますが、有能な軍師や政治家が……曹操さんだけXして帰郷って書いてありますが。

……あれ?これってだいたい反董卓包囲網の人たちですね……?


「何進派閥の名士で、主に袁一族とその家臣、友人です」

「ですよねー」


いや、でも当たり前か。洛陽の名士ってだいたい何進派閥なんだし。


「えっと、一番有能なのは曹操さんです、次に荀攸さんかな。荀一族はハズレが無いはず。孔融さんは性格が悪いです」

「ぶふっ」


賈詡さんが噴き出しました。


「失礼、他には?」

「沮授・審配・田豊・逢紀・郭図は相性はともかく、能力はあるはずです。あ、許攸さんは悪だくみするので注意してください」

「はぁ、注意はいたしますが、推挙なさいますか?」


言外に「こいつらまとめて登用したら袁一族が支配しますぞ」と言いたげな賈詡さんを前に少し考えこみます。


とにかく袁紹さんと袁術さんが大人しくしてくれたら助かるんですが……

曹操さんに上手く人材管理してもらえないかな……


いや、今決めなくていいか。


「保留で」




 ― ― ― ― ―




「三つ目の民を豊かにする、ですが、これは……主公とのの動きが完璧すぎてワシからは何も言うことがございません」

「ありがとうございます」


お礼を言う私。


主公とのの政策は今までにないものです。民の困っている点を的確に見つけ、民が真に助かり、自立して豊かになる方法をご存じでおられる。これらを天下に広げればほどなく目標は達成できましょう」


賈詡さんに褒められるとなんかくすぐったいですね。



主公との、私からも一つよいだろうか」


趙雲さんが口をはさみました。


「河伯教団の布教そのものは上手く行っているが、一部の役人に黄巾の再来とみられ……いや勘違いされている節がある」

「む、そうしないように里を作ったらすぐに納税しているんですけどね」


趙雲さんが苦々しげに答えます。


「まぁ、賄賂ほしさに難癖をつける役人がいるようだ。賄賂を増やすか、表立った活動をやめて地下に潜るかしないと、討伐される可能性がある」

「……あまり目立つような活動は減らして、賄賂も増やしますか」

「わかった」


まったく、ちょっと農民を組織化して、産業育成して、自存自衛のために必要最低限の騎馬信者とか矛信者とか弓信者とか盾信者を揃えて、趙雲さんに精鋭に育ててもらってるだけなのに過剰反応ですね。



ここまでで一先ず現状の分析と次の目標は決まりました。



 ― ― ― ― ―




さてと、やることは弁皇子が政権を獲得するための支援ですから、まずは弁皇子と打ち合わせしますか。

で、董卓パパにも了解を得ないと。

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