第110話 炒飯と文官仕事
※董青視点に戻ります
熱した鉄鍋に豚の脂身を入れて油をにじませます。
火力をマシマシにするため、持参した石炭を投入。
あんまり乾いてないクズ石炭も蒸し焼きにすると火力が増せることがわかりました。
そういう蒸し焼きにしたクズ石炭を突き固めた石炭団子を調理用に持ち歩いています。
この時代、まだ大型の鉄鍋というのはあまり普及していません。
河東の教団本部では集団調理なので、特産の鉄を使った大鍋を料理に使うようになっています。
充分に油を出したら、豚肉のコマ切れをいれて多めの油で揚げ焼きにします。
じゅうじゅうといい香りがしてきました。
肉の色が変わってきたところで溶き卵を投入。
じゅわわわわと卵が一気に油を吸い込み、ふわとろに焼きあがっていきます。
卵はあまり焼きすぎず、半熟なぐらいで炊いた米飯の出番です。
鉄のお玉(これも新しく作りました)を使って、ひたすら卵とご飯を混ぜ。
混ぜ。
鉄鍋を振りながらひたすら混ぜます。
いい感じの色になってきたので、
しかし、醤油がないのが悔やまれます。
はい、最後に塩と胡椒、ゴマをすりおろしたものを振りかけて、
完成した飯をお出ししました。
「はい、どうぞ」
「美味えなこれ!」
ほらほら、米粒が溶き卵に包まれてパラパラですよー。
うん、美味しい。
鶏ガラスープの素とかあったらもっと良かったですが。
炒飯一つつくるのに鶏ガラ煮るのはちょっと手間が。
「くっ……北の
「あはは、いやいや。後宮で料理係などしてただけですから」
「……あんた宦官だったのか?」
……迂闊っ?!
後宮に入れるわけないですよ私、今男装してますよね?
「あ、いや、その、妹!妹がですね!妹が後宮で働いてたことがあって!それで料理を教えてもらったんです!」
「ほう!董一族の娘かー!いいねぇ、何歳だ?うちの策と結婚させるってのはどうだ?」
うっ……
「それは私の決めることでは」
「そりゃそうだ。お父上にそれとなく聞いてくれるか」
ほっ。漢人が自由恋愛でなくて楽なのは何か言われても「父上に聞かないと」って逃げられることですね。
逆に言うと董卓パパが乗り気になったら逃げられないんですが。
「よし、こっちは蒸し魚を用意させたぜ?これが米に合うの合わないのって!」
「おおー」
長沙の近くの
塩とネギで素朴に味付けされた丸まると太った白身魚はとろとろの油が流れるよう。
それを炒飯に乗せていただきます。
「ああ、ほくほくしてますね!」
「白飯でも極めて美味いんだが、炒飯に乗せてもいいねえ!」
ワイワイいいながら米を食べる私と孫堅さん、北生まれの
くっ……私だって涼州生まれの河東育ち。アワとムギで育った人間ですが……
コメも食べたいんですよ!!そんな目で見ないでください!美味しいですから!!
魚と炒飯を腹いっぱい食べて、お茶を頂きます。
「で、話ってのはなんでい?」
「はい。まずは盗賊の討伐ありがとうございます」
孫堅さんは長沙の太守となると、さっそく盗賊の罪で豪族の区一族に出頭を命令。
反発した
あっという間に長沙郡内の横暴な豪族をあらかた討ち平らげてしまいました。
区星は近隣の桂陽郡や零陵郡に広がる区一族の親戚のもとに逃げ込みました。
普通に考えれば長沙太守の権限は隣の郡には及ばないので、これで
と思いきや、孫堅さんは平然と隣の郡に騎兵を送り込みました。
そして十常侍で
これで、長沙、零陵、桂陽の3郡で蔓延っていた盗賊豪族たちがことごとく討伐され、降伏したのです。
豪族たちの財産を郡政府に没収し郡の赤字もあっという間に解消、倉庫も一杯になりました。
「えっと、まずですね。
「兵や部下に配るのはいいが……宦官に金を渡さないとダメか?」
「孫府君はあくまでも戦利品を封印して朝廷に献上するのです。ただし、今回の命令は車騎将軍から受けたもの。戦利品は車騎将軍宛にお送りしましょう。あとは朝廷で考えることです」
……洛陽の弁くんと趙忠さんから「孫堅をクビにしろって
お茶を安定して入手するためには、孫堅さんに長沙の治安を落ち着かせてもらわないといけないのに、孫堅さんがクビになったら困ります。
まぁ、趙忠さんが勘違いして戦利品を着服するかもしれませんが、それは趙忠さんの問題ですからね!
「まぁ、朝廷の命令で稼いだ戦利品だから、それは道理だな。わかったぜ」
なんとか孫堅さんに納得してもらいました。
「あと、新田開発をして、お茶と砂糖を作ってほしいのです」
「ふむ?いや、いいが、俺は武官でそういうことはあまり知らんのだが……?」
「もちろん、御支援しますよ!」
汚い宮中政治はさておき、私の本題はこっちです。
練りに練った長沙郡の開発計画を説明します。
まず、豪族から取り上げた
さらに、郡政府で新田開発を行い、河北の土地なし流民を受け入れます。
新田開発には巨額の予算が必要なため、解放した
お茶は揉んで火入れをして、突き固めて乾かすことで輸送に向く餅茶にします。バラバラの茶葉だと湿気を吸って腐ったりするので遠くに運べないんですよね。
カチカチにつき固めれば北の遊牧民にも売れるようになるはずです。
甘蔗の汁を煮詰めて乾かして黒砂糖にすることで長期輸送に向くようになるはずです。
この二つの製品を加工して洛陽の市場に持ち込むことで利益は数倍になります。
その利益で河北の鉄や家畜を仕入れて新田開発に使うのです。
「これらの施策を行えば、数年で長沙の戸数は大いに増え、
「……名太守……それって武官じゃなくて、文官として俺が認められるってことか?」
「そうですね?内政して戸数を増やすのは文官仕事かと」
「いいねぇ!!俺が文官だって?いいねえ!!!見てやがれよあのクソ刺史野郎!」
なぜか孫堅さんは文官仕事と聞いた瞬間、ものすごくやる気になりました。
……孫堅って勇猛な武将だったよね?なんで文官仕事やりたいんだろ………?
ま、いっか!私に得しかないし。
「では、
さっそく、北から
よし、
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