第80話 謀略
乾いた土地にまばらな草と
漢朝の皇子、
「青!結婚するって本当?!」
「だから結婚はしません!まだ
豹くんが食い気味に迫ってきたのを押しとどめる私。
それを聞いて豹くんが思い出したように言います。
「
「ただの大人ならその辺にもいますよ、きちんとこう頼りがいがあってですね」
豹くんが自分の率いる騎馬隊を手で示しました。とても自慢げです。
「豹はたくさん馬を連れてきたぞ、頼りになる大人だろう」
「ありがとうございます、お代は絹で用意させますね」
「そうじゃなくてさぁ……そいつ誰」
弁くんが豹くんに見つかってしまったようです。
「漢朝の皇子様ですよ、そいつとか言ってはいけません」
「……え?漢朝の皇帝も皇子も洛陽からでてくるわけない……でも青が言うなら本当か」
豹くんがあっさり信じてしまいました。何の証拠もないのに単純な人ですね。
「皇子の弁だよ、よろしくね」
「……匈奴の
弁くんが気軽に挨拶するのに比べて、豹くんはなんか警戒しているようです。
なんか張り合うように付け加えました。
「青の夫となるべく董将軍に婚姻を申し込んでいる」
「受けてません」
私がきっぱりと言うと、なんか豹くんが落ち込んでしまいました……いや普通に口説いてもらえるならともかく、なんか強引に既成事実にしようとするのが困ってるんですけど。
それを見て弁くんがのんびりと口を開きました。
「董青は匈奴に求婚されてこまってるの?じゃあ
「困ってませんしなりません」
……なんで弁くんまで落ち込むんですか。
それを見て豹くんが元気を取り戻したようです。弁くんを睨みつけます。
「青は頼りになる大人がいいんだ、そんなひょろひょろで馬に乗って狩りができるか?」
「うぐ……」
「いや、二人ともというかみんな子供ですから……」
だいたいなんでみんな同じぐらいの年齢でこんな張り合ってるんですか。せめてあと5年はたってから、
豹くんがむきになっています
「子供じゃないぞ、頼りになる……そうだ、青は何か困ってることない?」
「馬以外でですか……ありますね」
反乱軍を早期に降伏させるために好戦的な異民族の皆さんを先に倒せばいいと助言いただいたんですが、今のままだと羌族も月氏族も捕まえられる気がしません。賈詡さんの提案をどうやって実行するか……相談することにしました。
― ― ― ― ―
立ち話もなんなので、董家屋敷に皆さんをお呼びします。
「ところで、皇子は匈奴に囲まれてるのに怖くないのか?」
「青の知り合いなんでしょ?安全じゃない」
「……そうか?」
豹くんの質問にあっけらかんと答える弁くん。なんか拉致してから変な風に根性が座っちゃいましたね。
信頼して貰えてるのはあり難いです、逃げられたら困りますし……。
「はい、麦茶と
「ありがとう、美味しい!」
「董青の
「……」
話ができないので、まず私から豹くんに賈詡さんの提案の話をしました。
「で、
「はい、涼州反乱軍の漢人豪族の人から羌族と月氏族が強硬だから降伏できないので先に倒してほしいって……」
「騎兵が足りないなら、匈奴を使えばいいんだけど……今回は動員を断ってるんだ。
「……本当にろくなことしない
「だからまとまった数の馬だけは連れて来たけど、羌や月氏と戦うなら熟練の騎兵が5000は必要だよね……漢人を馬に乗せて急ごしらえで騎兵つくっても厳しいかな。だって逃げるでしょ?」
「はい、今も少数の騎兵に侵入されて、追い返すので手一杯です」
豹くんと相談していると、弁くんがのんびりと言いました。
「逃げるなんて卑怯だよね、それじゃあ董青が勝てないじゃない?」
「だから困ってるんですよ……」
「え、青さぁ、……何かおかしくない?羌や月氏がやる気だから漢人が降伏できないのに、彼らは逃げ回ってるんだよね???」
「あれ?そういえば??」
んー?でも反乱の本来は羌族や月氏族に対する漢朝の扱いが悪く、従軍の褒美がないとか奴隷扱いをされたから待遇改善を求めてたんですよね。
だから涼州の漢人豪族と一緒になって、洛陽に攻め込んで宦官を倒そうって。
豹くんが首を振りました。
「いやいや、宦官を倒すって完全に漢人の都合だと思うよ。豹たちからみたら全員漢人だから宦官がどうとか普通思わない」
「あれ?こっちって涼州漢人豪族の目的でしたっけ?そうすると羌や月氏の目的って?」
「言ったじゃん、褒美が貰えなくて待遇が悪いって。だから略奪して稼いでるんでしょ?洛陽なんか攻め取ったって羌や月氏がそこに住めるわけじゃないんだから戦利品が十分に手に入ったら家に帰ると思うよ」
「でも、先に羌族や月氏と戦ってくださいって」
「漢人がそう言ったんだよね」
あああああ、やっぱり賈詡さんに騙されてるぅーーー?!!!
騎兵が足りないのに遊牧民族を追っかけさせられてたら決着なんてつくわけなかったんです。
その間に攻撃予算使い切ったらまた睨みあいに戻っちゃいます。
そうすれば漢人豪族さんたちの涼州支配が継続するわけで……。
「でも、
「烏桓が涼州から贈物もらってゆっくり来てねと言われたらゆっくり来ると思うよ。わざわざ地の果てで無理に戦いたくないし」
賈詡さんなら絶対やってますねそれ。
そこまで聞いて、弁くんが思いついたように言いました。
「そっか、だったら反乱軍の漢人豪族を先に倒せばいいんじゃない?」
「でもその間に羌と月氏が襲ってきたら困ります……から……」
えっと、涼州反乱軍は二種類いて、漢人豪族の反乱軍。これは第一目標は洛陽を攻めて宦官を倒すことだけど、それが無理なら涼州で睨みあいしていれば腐敗した
そして羌や月氏の反乱軍。これは第一目標が利益で、戦利品が欲しいから戦ってる。反乱した理由も待遇が悪いから……。
「ひょっとして賈詡さんの意見の真逆で、羌や月氏に贈物して待遇改善を約束したら、反乱をやめさせられる?」
「うん、豹ならやめる。官軍の将軍が董将軍で、兵も多いよね。これ以上攻めても人が死ぬだけであまり戦利品が増えそうにない」
あああああああああ、賈詡ぅうううううう?!!!!
いや、敵の助言をそのまま受け取るのはないと思ってたけど、それなりに筋が通ってたから完全に騙されました?!
真逆が正解じゃないですかこれ?!
「豹くんって……羌と月氏に伝手あります?」
「あるけど……董将軍のほうがあるんじゃない?」
あ、そうだった。
「父上に相談します!」
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