第51話 取引
※董青視点です
せっかく働きだしたのに、なぜか最初の
支給日は月一回なので、しばらくはお小遣いゼロ。お弁当も
私は、お弁当袋をもってパチパチと火のはぜる音と炊煙がもくもくと立ち込める炊事場にやってきました。
下っ端や見習いは泊まり込みなので、ご飯は持参した穀物の自炊です。
このように朝晩のお食事時に穀物を共同の炊事場に持ち込んで、自分で炊いたり、人に穀物を少し渡して、代わりに炊いて貰ったりします。水汲みも含めて結構な重労働なので、良家の娘さんは人に頼むことのほうが多いです。
ずっと火の番をしているのもつらいので、私も宦官さんに頼むことにしています。
「あにゃ。
穀物袋を渡すと、下っ端宦官用の粗末な黄衣に身を包んだ少年が深々とお辞儀をします。
「今日もお願いしますね、
小羊ちゃんってのはもちろん、あだ名だそうですが、誰も本名を呼ばないのであだ名でいいそうです。
「あのう……、今日も半分もいただいていいんですか?」
「いいですよ?育ち盛りですから食べてください」
いちおう、この時代の一人分の穀物を持ってきてるんですが、まぁ
うう、なんで河東で巫女やってたときより食生活が貧しくなってるんでしょう。
食べたほうがいい?でも太るの嫌だし……一部分だけ太りたいですけど太るのは嫌なんです!
「あにゃ、ではでは。こちらもう炊けてるので」
小羊さんがにっこりと笑って炊けた粟飯を盛り付けてくれました。
しかし、可愛い顔つきですね。少女と見間違えられることもあるそうです。まぁ、陛下にも殿下にもそういう趣味はないそうなので。
「出世できなくて残念ですです」
「……残念なの?」
そういうお役立ち方をしてでも出世したいんですかね。宦官はよくわかりません。
「はいです。ひとたび宦官になったからには、将来の夢は陛下、殿下にお仕えして
「……でも、その、宦官だよね、儲けてどうするの?」
「もちろん贅沢しますです。あと、たとえば曹大人(曹騰)は陛下のご学友として大出世。許可をもらって、養子をとって
あー、曹騰って曹操さんのおじい様ですね。
「そうすれば、
小羊さんが目を輝かせながら夢を語ります。
はぁ、なるほど。普通に結婚して普通に子供を残せないからには、出世して贅沢して、養子を貰うのだけが楽しみなんですね。だから皆さん真面目に仕事して……。
「でも、出世するためには学問しないとダメでは?」
「あにゃ……そ、そうですね……でもお金が」
なんか急に表情が暗くなりました。
「しょうがないですね、私けっこう暇ですから教えてもいいですよ?」
「本当です!?だったらご飯はタダでいいです!よろしくお願いしますです!!」
くるくるとよく表情の変わる子ですね。
ということで、私はタダでご飯を炊いて貰えることになりました。小羊さんは宮殿に詳しいので、何かと世話を焼いてくれるようになったのですっごく便利です。
しかし……宦官って大変な仕事です。日々頭を下げ続けて必死で働いて出世を夢見ますが、成功するのは本当に数人。出世もできずに死ぬまで働いているお爺ちゃん宦官もちらほらいます。ああなるともう将来の楽しみもなく、生きているだけ。しかも就職の際にはとっても痛いこともするわけで。
彼らの苦しみって本当に必要なんでしょうか?
― ― ― ― ―
洛陽城内は董家屋敷。
5日経ったので、ようやく
白ちゃんをお風呂で磨いて、新しい服を着つけて満足した私ですが、今日はやることがあります。
さっそく、男物の
水瓶の水面に映る自分の姿を確認して、ぴしっと着付けを正します。
それを見た
「お姉ちゃん、かっこいいのじゃー」
「こ、この格好なら結婚してくれる?」
「うん!」
大好き!ひしっと白ちゃんと抱き合う私に後ろから攻撃が!
ぱこっ。
「やめんか、兄者に説明できなくなるだろ」
うう、
「お前いま男だろ」
「……はっ?!そうでした?」
なんて鋭い叔父様。
「お前のその男装趣味は兄者から聞いてるからいいけど、何するんだそれで」
「ちょっと銭を稼ごうかと、いくよ公明くん!」
……
……
「河東名物の
「美味しいよー、有名だよー」
洛陽城内の
「河東産の陶器もあるよー」
おもに土器を焼いていた
土器と陶器の違いは焼き温度の違い、これは石炭で簡単に火力がだせるので職人さんも驚いてました。あと
河東から運んでもらう際に藁をびっしり敷き詰めて運んで貰いましたので、なんとか割れずに持ち込めました。
運んできてくれた信者さんたちといっしょに売っていますが、客があまり来てくれません。やっぱりこの市場は初めてなので、まずは集客が必要ですね。
ここはまた紙芝居……
と思ってると、声をかけてくれた人がいました。
「おーー、
「ほう、よい陶器だな」
「酒はないのか雲長兄」
長い手を振ってニコニコと人のよさそうな笑みで近づいてきたのは。
「
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