第35話 決裂

どうも、董青トウセイです。悪役トウタク令嬢むすめとか美少年男装官吏とか、謎美少女巫女さんなど様々な職業をやってきましたが。この度無事に美少女山賊に転職くらすあっぷいたしました。



いや、どうしてこうなったのー?!


河伯教団を立ち上げた。

まぁ、これは黄巾党対策でしたからしょうがないです。


教団本部を山の中に作った。

まぁ、これも城の中でやってたら文句言われそうだったからしょうがないです。


商売をガンガンやってましたが納税してません。

……いや、どっかで納税通知とか来るのかなぁと……いや、そうですよ。請求もされてないのは脱税じゃないですよね!


難民さんを受け入れて、信者さんたちもガンガン移住してきて、戸籍地から逃げたのをかくまってる。とみられてる。



「いや、だって税金払えなんて太守から言われてませんし、農民さんがあちこちから集まってきたのはそれこそ太守やら県令けんちじの仕事が悪くて難民になったからじゃないんですか!」

「せや!!巫女さんが正しい」


私が精いっぱい反論すると、白波谷の山賊の大将のハゲ熊さん……楊奉ヨウホウ将軍が同意してくれます。


「でしょう?!」

「ほじゃけえ、政治が間違っとるな?一緒に戦わんかいや」


にやぁと悪い顔をしてくる楊奉さん。


「……うおお……」


頭を抱えます。いくら董卓パパがイチャモンに近いやり方で高いカネを払わされた将軍職をクビになって謹慎してて、あちこちで反乱がおきまくってて故郷も占領されちゃってるのに政府は取り返しもしないで、心血を注いで築き上げた私たちの根拠地に官軍を送り込んで攻めてくる、たったこれぐらいで山賊として反乱するなんて……


……いや?私って割とひどいことされてますね??戦ってもいい?

まって、私、冷静になろう。


「……いや、戦うにしても、官軍にどうやって対抗するんです?数百で勝てるわけじゃないですよね?」

「そこじゃ。ええか、巫女さんの河伯賊とウチの白波賊が同盟したらあとは雑魚ばかりじゃけ、河東はワシらで仕切る。そして黒山の親分に支援ケツもちをお願いするんじゃ」


……河伯賊ってなんですか。河伯賊って。いや、それよりも黒山賊!東にある大きな山、太行山脈タイコウさんみゃくを根城にする山賊で、その勢力は100万人とか呼号してる山賊王じゃないですか!!


すると、私たちと官軍との戦いが呼び水になって黒山100万の山賊団が河東になだれ込んでくるんですね……うわぁ。



うぐぐ……さすがに政府がムカつくとはいえ、そんな大惨事の引き金を引くわけにはいきません……それに、私が目指すのは三国志の回避であって、乱世を作りたいわけじゃないんです!!



私は、楊奉さんに向き合って、きっぱりと宣言します。


「大変良いお話ですが、お断りします」

「なんでじゃ、黒山の親分とは下交渉も終えとるで、いい条件で傘下にいれてくれよるぞ?」

「それでしたら、白波の楊将軍だけでやってください。私たちは乱を起こすつもりはないんです」

「そっちも討伐されるで?」

「……なんとかします」




「はぁ……もう少し物分かりがええ思うとったが」

ハゲ熊さんは信じられないように顔を手で押さえ、溜息をつくと。


物凄く悪い顔で笑いました。

「ほいじゃあ、ここの拠点しま仕事しのぎはワシらがもろうていくで」



チャキ!!

チャキ!!チャキ!!チャキ!!


白波賊の皆さんが一斉に抜刀。

公明くんと護衛の皆さんも対抗して剣を抜きます。


「巫女様は下がって!!」

護衛さんに守られて柵の裏に引き下がる私。



抜身の剣で威嚇しながら、公明くんと楊奉さんがにらみ合います。

「正体を現したな山賊!!」

「山賊はそっちもじゃろ河伯賊さんよ」



違います違います、外からどうみても山賊だとしてもウチは山賊じゃないです。真っ当にお仕事に励むマジメな教団ですよ!!


「まぁ、ワシらが取らんでも、しょせん弱い女が仕切ってる賊なんざ、どこぞの悪にバクッといかれて終わりよ。ワシらは優しいで、感謝するんじゃな」


「馬鹿にするな!巫女様は強い!僕は一度も勝ったことがない!」


白黒りばーしで、ですよね?


「それに、知恵も湧くがごとくに次から次へと困った人たちに仕事を与え、みんなに好かれていらっしゃるんだ。さらに大変お美しいから、巫女様は貴様よりも何倍も上だ!」


公明くんに褒められまくってちょっと照れてきました。いやぁ、それほどでもあります。


「ぎゃはははは……それは巫女様が強いんじゃなくて、僕ちゃんが弱いんじゃろ……」

嘲笑あざわらうと楊奉さんはギロッと公明くんをにらんで叫びました。


「面白れぇ!!だったら巫女様と俺様で一騎打ちせえやあ!!!俺に勝ったらおとなしく引いてやる!負けたら全部貰うでえ!!」

「巫女様が貴様のような匹夫ちんぴらと戦うか!僕が相手だ!!」


「馬鹿野郎!僕ちゃんみたいな孺子ガキが俺様の相手をできるなどと思い上がるな……!!おい、巫女さんよぉ?」


はい、なんでしょう。


「そっちの代表、この僕ちゃんでいいな?いいならこっちも一人代理を選ぶで。一騎打ちで勝負じゃ」


う……一騎打ちですか。で、でも私が毎朝の稽古を見守ってる公明くんは、今ここにいる人で一番強いはずです。それに全員で戦ったら勝っても負けてもけが人が多く出ます。最悪でもこの場所を明け渡せば……。



「公明くん……」

私は心配そうに公明くんの方を向きました。

公明くんはにっかりと笑い、護衛も公明くんなら大丈夫ですと表情で。


「はい!真っ直ぐ頑張ります!」

「任せました!」


……お願い、勝って!





「よっしゃ、こっちの代理は大石牛ダイセキギュウでてこいやぁ!」

「ぶもおおおお!!!!」


うわぁ。なんか小山のような人がでてきました。大きなおなかによろいを巻き付け、手戟ほこを振り回しています。


大石牛というのはさすがにそんな名前はないので、アダナでしょうか。たしかに石でできた牛のようにデカくて強そうな筋肉もりもりな人物です。



こちらからは同じくよろいを身に着けて、剣を持った公明くん。背丈は少し低いぐらいですが、身体は引き締まっていて、石牛さんと比べると体重は倍も違うように見えます。



「ははは、あんな若造じゃあ石牛にひねられておわりよ」

「さっさとやっちめぇ!」


「おら、がんばれ公明さん!」

「あんたならできるべさ!」


両陣営から声援が飛び。



そして、楊奉さんが片手をあげて、宣言しました。


「武神、蚩尤シユウもご照覧しょうらんあれい!仁義にのっとりおとこを示す一騎打ちじゃあ!」

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