第34話 山賊
「山賊だーー!!」
教団本部になんか見たことないガラの悪そうな武装したオジサン、オニイサンが百人ちかくも押し寄せてきてるそうです。
「ま、ま、ま、待ってください。まだ山賊と決めつけたものじゃ」
信者さんたちが怪訝な目で私を見ます。
えっと……
「お友達になろうと思ってるのかもしれません!」
「みなさん!とりあえず武器になりそうなものをもって、まっすぐ
「わかっただよ!」
「ははっ!!」
公明くんが手早く指示を出し、みんなが村の防衛を固め始めました。
……無視しないでーー。
……
……
とりあえず、いきなり戦うというのは野蛮すぎます。人間らしくまずは言葉を使って交渉して、穏便に帰ってもらいましょう。
山賊(未鑑定)さんたちが村の入り口に陣取りました。
「あのう、帰ってもらえませんか」
「いやぁ、来たばかりじゃけぇ、帰るわけにゃあいかんで」
山賊さん(未鑑定)の中から一人、熊みたいな体つきの人が出てきました。顔つきはまだ中年だと思いますが、頭頂はすっかりハゲていて代わりに口髭がモジャモジャしています。
「えっと、お嬢ちゃん。オタクの大将と話しがあってきたんじや。大将はどちらじゃね?」
「こちらが我らの巫女様だ!無礼は許しません!」
公明くんが
「はい、一応代表は私ですが。お話とは?」
仮称ハゲ熊さんに語りかけます。
「おお、河伯は若くてきれいな巫女様が大将だとは聞いとったが、ホンマじゃったか」
うんうん、私が美女なのはしょうがないですね。
仮称ハゲ熊さんはニヤリと笑って続けました。
「いや、悪い話じゃあらせん。友達になりに来たんじゃ」
……
「ほらー!私の言った通りですよね?!」
「申し訳ありません!」
「へっ……?」
「えっ……?」
素直に謝る公明くんや信者さんたちに勝ちほこる私をみて、ハゲ熊さんたちはなんかポカーンとしていました。
……
……
野外に椅子を並べて、山賊(未鑑定)さんと、河伯教団の代表で話し合いを始めました。
私は村に入れようかと思ったんですが、公明くんが「まだ信用できません」と外に設置したのです。
「では、うちで作った
「おお、美味いのう。ありがてぇ」
まずは遠路をお飲み物でもてなして、一息ついてからさて、とハゲ熊さんが口を開きました。
「河伯の巫女様には初めてお目にかかるで。ワシは
「初めまして楊将軍。河伯の巫女です」
……楊奉将軍?なんか聞いたことが有りますね。三国志の初期に出てたはずです。一瞬だけ独立勢力の主になってて、そうそう。部下の
「先からのお上のなさりようは目に余るもんじゃ、そう思やせんかの。宦官は悪事を働き、役人は賄賂をせびり、
「まぁ、民のことを考えてる人は少ないですね」
「そのとおりじゃ。このような状態では、仁義のためにたちあがるのが
「はぁ」
なんかハゲ熊さん……じゃなくて楊奉さんは熱く語ってますが、一般論なのかあまりピンときません。
「しかし、河東郡の太守は器の小さい男じゃでな。仁義も理解せずにワシらを討伐するといきまいとる」
「大変ですね、がんばってください」
私は他人事のように言います。
まぁ、他人事というか他人事ですよね。山賊さんに縁はないですし。董卓パパが太守だったらとっくに討伐されてますよ。
「……いやいや、だからワシらが同盟して太守に立ち向かわんといかんのじゃ。共に戦わんか」
「え、嫌ですよ。なんで私が」
即座に却下します。なんで山賊といっしょに官軍と戦わないといけないんですか。
「……ひょっとして気づいとらせんのか……、討伐されるんは河伯のとこも一緒じゃぞ」
「なんで?!ウチ、山賊じゃないですよ!?」
楊奉さんが意外そうにいいますが、意外なのはこっちです。なんでですか!
「いやいや、こがいに山の中にあちこちの農民集めて、武装しとってか?」
「難民さんとつつましく山の幸で暮らしてて、武装は自衛用です!」
私の必死の反論に、楊奉さんが声を落として、真剣な顔で聞いてきました。
「……まさか、税を払っとるんか?」
「……払ってませんね……」
私も山賊だったぁぁぁぁぁ?!!!
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