第22話 将軍失格
♪ああ、あの山に登ろう
遠く父が見えるだろう♪
♪きっと父は励めよと言う
昼も勤め、夜も勤めと♪
♪でも身体は慎めよと言う
かならず帰っておいでよと♪
黄巾討伐軍の指揮官として、
私は安邑にある董家のお屋敷で、このように歌を歌って、お父様の無事の帰りを祈っていた
そして董卓パパはといえば……
「
私の目の前で荒れまくってます。
え、なんで董卓パパがここにいるのかって?
……速攻でクビになったからです。将軍を。
「父上。謹慎中ですので静かになさってください。せっかく何大将軍(何進)と袁司徒(袁隗)のご配慮で、おとがめなしになったのですから。暴れてるとか
前倒しで一族皆殺しとか嫌ですからね?
「うぐ……それはそうだが……、しかし、
「農民殺して功績誇ってもしょうがないって、仰ってたのは父上です。むしろ、
「まったくじゃ。10万もの農民を殺し、死体を積み上げた
まぁ、いろいろありましたけど、そんな大虐殺を見せられたら卒倒なんてもんじゃなかったでしょうし。良かったと思いますよ……
- - - - -
思い起こせば数か月前。私は男装系美少年官吏、董某くんとなり、董卓パパの客分として従軍しておりました。
いや、董卓パパに女が戦場などに行ったら命がいくらあっても足りないと言われて反対されたんですが、たしかにこの美貌では誰が血迷うか分かりませんね?と言ったら無視されました。
腹が立ったので、私を連れて行かないと祟りがありますよと言い張って、無理やり男装してついて来たわけです。
進軍先は帝都、洛陽の北東にある、冀州は
ここを攻めていた、
ここにはもともと展開していた漢朝正規軍。そして、董家の
この軍勢で、張角の籠城している広宗のお城を包囲しているわけですね。
「ヤッパリ、城攻メジャナイカ。……
そう頭を抱えているのは、北方の騎馬民族で同盟部族である匈奴の王族、
匈奴の皆さんは遊牧する騎馬民族なので、馬に乗っての野戦は得意なのですが、城攻めはからきしなのは軍事的には常識です。それなのに城攻めに配置されて心底困り果てている様子。
「主公!!!地形ト部隊配置を調べたゾ!!」
「む、
ずんぐりとした李傕さんの持ってきた布陣図を見て、お父様が唸っています。盧植さんの兵法はかなりの腕のようです。たしか盧植さんって
次に
「
「城攻めの準備も着々と進んでおるじゃないか……ワシらがすることは何もないぞ??」
雲梯とか井楼は城壁を乗り越えて戦うための兵器で城攻めには必須です。ここまで軍事面は完璧なのに、なぜ盧植将軍は解任されたのか。そう、宦官に気に入られなかったからです。
「董将軍……馬デ城壁ヲ登レバイイカ??」
於夫羅さんが混乱して謎の発言を始めました。
「いや、右賢王殿。それには及ばぬ。敵は黄巾
董卓パパが状況を整理します。
「準備をせずに攻めては被害が出るばかりだが、大軍すぎていずれ敵の兵糧が不足しよう。むしろ包囲を厳格にし、じっくり城攻めの準備と訓練をし、兵糧攻めで敵の士気が下がった時機を見計らって止めをさすことにしよう」
ふむふむ、作戦が決まりました。しかし……
私は董卓パパを上司として礼儀正しく申し上げました。
「将軍閣下、盧植将軍は攻めなかったからクビになったのでは?……少なくとも建前では」
実際には、戦場の視察に来た宦官に賄賂を払わなかったせいです。
「む、そこは大丈夫じゃ。何大将軍(何進)と袁司徒(袁隗)には我が方の戦略を説明しておく。「城攻めは時間がかかります」と朝廷内で弁護してくれるように頼んでおるからな。」
董卓パパはそういうと、満座の武将たちに宣言しました。
「皆の者。今回の反乱であるが、そもそも妖言して人を惑わす張角が悪いのであって、集まっているのは宦官に
立派な方針だと思います。董卓パパが虐殺を始めて魔王化するのだけは避けたいので……
「董将軍。ソレハワカッタ。俺タチハドウスル?」
「右賢王殿には、
「襲撃ハ得意ダ。行ッテクル!!」
騎兵の機動力を活かした作戦ができるとあって、於夫羅さんは急に元気が出たようで、さっそく出撃していきました。
あ、
「我々は軍議を行う!郭汜よ、盧植将軍の元部下を集めよ。まずは酒と肉をだし、元部下の面々を慰労し、懇親することで連携を強めるとしよう」
「
郭汜さんが大喜びで駆けていきました。
また飲むのか!!とげんなりしていると、隣で
「ふふ、わかってないね。いいかい、戦争でいちばん大事なのは、人心の統一なんだ。懇親を深めて、全軍が一体となって動けるようにならないと、戦いには勝てない。戦争はただ武器を振るうだけじゃ駄目なんだよ。心をまとめて、人を見ないとね」
解説ありがとうございます……なんかいい話っぽいことを言ってますけど、ついこのあいだ酒飲んで大失敗したこと、私は忘れてませんからね?また何か起きそうな気がする……
私は嫌な予感がしながらも、そっと宴会予定地から逃げ出しました。
※出典 詩経 魏風 陟岵
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