第15話 天地玄黄
見渡す限り広がる空に大地。
私、
「空は広くて大地は黄色……うん、そんな歌があったような。何の本でしたっけ……そうそう。
♪天は
宇宙はさすがの無限大。
月日は満ちては沈んでく。
星はずらりと並んで宿る♪」
どこの歌だっけ。きっと
黄河はまるで
この曲がりくねった
漢人はこの土とともに生きていますので、土といえば黄色。そしてこの土が大量に含まれているのが黄河となります。ちなみに帝都である
そう、私はいま、馬車に揺られながら、
今日の董卓パパは将軍として
のんびりと歌っている私に、董卓パパが話しかけてきました。
「
「いえ、詩経か何かで読んだのです」
「そんな詩は知らんがなぁ……」
「それより気分は悪くないか?」
「大丈夫です、歌っていれば!!昨日みたいに吐きませんから!」
うん、道悪いし馬車にはバネもついてないから乗り心地は悪いんですよね……最初は暇だなと読書を始めたせいでとんでもない乗り物酔いになって一日ご飯が食べられませんでした。
なので、広々した景色を見ながら、お歌を歌うんです、私も成長しましたね!!
「いや、無理せずとも
「いえいえ、お告げですから……うぷっ」
厳しい旅路ですが、ボケっと引っ込んでいるわけにはいきません。董卓パパが会いに行く「
この何進さんが董卓パパを呼び寄せて宦官を殺そうとして、逆に宦官に暗殺されます。すると群雄の
なんか皆殺しエンドへのルートに乗りかけている気がするので、ここで董卓パパから離れるわけにはいきません。というわけで、お告げだと言って無理やり付いて来ました。
黄巾党を予言した実績があるのでしぶしぶ董卓パパも従軍を認めてくれたわけです。
少なくとも宦官皆殺しは止め……うーん、宦官は悪いから止めないほうがいいかな??
私が悩んでると、これまた馬に乗った
「
郭さんが指さす遠く先には、うっすらと土煙が上がっています。騎馬の群れ、でしょうか?
「おお、
「「
「全軍休止やーーー!!」
「全軍休止ダーーー!!!」
董卓パパはすぐにのっぽの郭さんとずんぐり李さんに命令を出して、全軍を一時停止させます。兵隊さんたちが天幕を張って野営の準備を進めていると、立派な毛皮の服をきて、毛皮の帽子をかぶった騎馬武者が、お供を引き連れて近づいてきました。
「オオ、
「おお、
さっそく訛りのきつい言葉でパパと直接挨拶をしています。偉い人のようですが、右賢王って??
「はは、
解説ありがとうございます牛義兄様、なるほど大物ですね。お名前は「
「それでは右賢王殿下。話はあとにして、まずは歓迎を」
「オオ、ソレイイネ!」
於夫羅さんが匈奴の騎馬部隊のほうに帰ってゆき、お父様の兵隊さんたちがテントを張って煮炊きをしはじめました。……あれ?馬車から兵隊さんが
いま行軍中ですよね??
― ― ― ― ―
「「ワハハハハ!」」
宴会がはじまってしまいました……戦争に行くというのに信じられません……
「トロイ農民ノ反乱ナゾ、ワガ騎兵ナラバ、イチゲキゾ!!」
臨時の宴会場では、両軍の将兵が飲むや喰うやの大騒ぎ。私は、董卓パパの言いつけで
布地一枚隔てた向こう側で、於夫羅さんが董卓パパに向かって景気のいいことを言っています。
「ワレラノ敵ハ総大将ラシイ、スグニ反乱ヲ終ワラセテヤロウ!」
「……え、総大将って、
董卓パパの指摘に於夫羅さんがおそるおそる問いかけます。
「エ……?マテ、マサカ城攻メニ匈奴ヲ使ワナイヨナ?」
「あ、いや、さすがに都もそこまで馬鹿ではないと思うが……」
「……宦官どもは、それすらわからないかもしれませんね……」
うわぁ、なんかテンション下がってるぅ……。っていうか、騎兵で攻城戦は……苦手ですよねぇ。普通は
董卓パパがお酒を勧めます。
「ま、まあ、飲みなされ。話題を変えよう……」
「ソウダナ……エット、ソウイエバ、我が友、董太守(董卓)の娘ハ賢イソウダナ!!」
あれ、こんどは私の話題ですか?
「いや、お恥ずかしい。少し字が読めるだけで、噂ばかり先行してですな」
「オレノ部民ガ世話ニナッタト聞イタ。優シイ娘、シカモ賢イ、トテモイイ」
「いや、まったく! 自慢の義妹でして!」
ああ、あの馬泥棒の兵隊さん事件ですね。匈奴さんたちがいじめられて可哀そうでした。ってなんで牛義兄様が威張ってるんですか。
「ウチニ嫁ニ出スドウカ?トテモ大事ニスル、キット賢い子ヲ産ム」
「なっ」
まって、私まだ12歳!?結婚というか、子供産む前提?!ちょ、ちょっと話が早すぎませんか?!!
「おお、大変残念ですが、義妹は漢の宮廷に
「そ、そうそう。聖上にお仕えする身なので、残念じゃが」
「漢ノ皇帝ジャダメカ。ワカッタ、トリアエズ飲モウ!」
良かったぁ……
私が天幕の裏でわちゃわちゃしている間に、無事に婚約話は流れたようです。
ふぅ……危なかったですね。でもまぁ、そろそろ皆さん酔っ払いすぎて見てて面白くなくなってきたのでそろそろ失礼を。
「……あれ、なんで女の子がいるんだ?」
「きゃっ!?」
びっくりした!
天幕のなかに潜り込んできたのは、同い年ぐらいの男の子。
誰ーーーー?!!
※出典「千字文」 南北朝 周興嗣 (470–521)
天地玄黃 宇宙洪荒
日月盈昃 辰宿列張
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