エナドリと栄養ドリンク、あるいはカフェイン
今日は金曜日、時間は夜……一番熱い日です!
別に夏だなどという事ではありません。明日が休み、つまりはネットに一晩まとめて張り付いていられるという最高の時間帯です!
私はその日の書き込み前に景気づけにエナドリを一本飲み干します。カフェインとアルギニンが脳髄を活性化してくれます。いい感じに乗ってきたところでつぶやいたーにすきなことをつぶやきます。
もゆる:悲報、日本人、ホイ卒が多かった
『まーたコイツか』
『い・つ・も・の』
『コイツの煽りはマジで性格悪いよな』
『炎上体質とかいってるけど自分にガソリンかけるやつに同情はできねーよ』
『ガソリンどころかニトログリセリンで体ができてるレベル』
ふふふ……社畜のあなた方とは違うんですよ……私は明日が丸々可処分時間になっているのです。
もゆる:社畜達の憂鬱
『ニートにだけは言われたくない』
『お前より世界ランク上だぞ崇め奉って』
『そもそもコイツより低いやつ探す方が大変定期』
『社会保障がさじを投げた男』
ククク、労働の必要の無い身分から煽るのは気分がいいですね。
私は手元に置いていたコーヒーを一杯飲んで煽りワードにセンスがあるかどうか確認します。
うーん……今日のは単なる罵倒で煽りとはちょっと違いますね。
『これはクズですね間違いない』
イラッ……いけません、この程度の煽りに反応して顔を真っ赤にしてはレベルが落ちてしまいます。私は常に『上』から見ている存在でなくてはなりません。
『お前らコイツが本物だって確信あるのかよ? 偽物が多すぎてどれが本物か分からんわ』
『俺は偽物とか本物とかどうでもいい、自分より『下』がいると思うだけで安心する』
『↑クズのはずなのに比較対象がクズ過ぎて相対的にマシ』
『コイツよりクズってもう犯罪者くらいじゃね?』
言うが良い、言うが良いさ。どのみち私は最強の未成年、ここでいくら煽られようと痛くもかゆくもないのです!
ちょっとイラッとしましたがここでレスバをやっていると生きているっていいなあと思えるのです。未成年って最高ですね!
『ガキがもう寝ろよ』
『ガキじゃねえだろ』
『案外ガキだったりして』
『どっちにせよクズなのにかわりはないから……』
もゆる:社会人のみんな! 頑張ってね! 私は『上』で待ってますよ』
『うーんこの畜生』
『この畜生感は本物っぽい』
『でも同じ名前で検索書けるとユーザ名だけで三十以上出るぞ、しかもしょっちゅう入れ替わってる』
『本物でも偽物でもクズはクズやろ』
私は優越感に浸りながら栄養ドリンクを補給します。無敵の高校生に怖い物はないのです! 今晩はレスバに費やしますよ!
ピコンとスマホが反応しました。
燐火:凪ちゃんたすけてー!
凪:どうかしたんですか?
燐火:耐久配信をやってるんだけど眠いよー!
凪:そんなもの私にどうしようもないじゃないですか
燐火:応援くらいはしてくれないかな?
凪:がんばえー!
燐火:雑すぎない!?
凪:冗談だけど目は覚めたでしょ? 私みたいに眠気対策をしてないとそうなるわね
燐火:凪ちゃんは眠いときどうしてるの?
凪:合法的なカフェインの大量投下の一択ですよ
燐火:ホントに合法なの?
凪:法律的にはエナドリでカフェイン錠剤を飲んではいけないなんてルールはないですからね!
燐火:一体何がそこまでさせるのかなあ……
燐火ちゃんドン引きでした。現在私はまだ奥の手の錠剤は投下していません、リーサルウェポンは本当に眠いときだけに使うものなのです。
『こっちの方が本垢ッぽいんだけど?』
おっと、偽物が見つかったようですね。弾よけには丁度いいですが私は偽物を認めたくはありません。ですが私は偽物を自分で叩き潰したことはないのです。あくまでも偽物がバッシングに耐えられず消えていくばかりの話なのです。
そちらにはやはり罵詈雑言が並んでいます。彼だか彼女だか知りませんが十分くらいクズ発言をしただけで反応に耐えきれず消えてしまいました。この程度で消えるとは、甘いことこの上ないですね。
凪:燐火ちゃん! 頑張ってー!
燐火:ふぉおお!!??
なんだかやる気になっているようです。私の方は偽物がそこそこ出てきたので自動的にそれが消えていくのを待つばかりです。最後に戦場に立っていた物こそが勝者と呼ばれるのです!
しかし、なかなか煽り耐性のあるアカウントが一つ残っています。それもボロクソに叩かれているので時間の問題でしょう。
燐火:凪ちゃん! もっと励まして!
凪:頑張ってね! 私が見てるよ!
そう言いつつ私は彼女の配信を開きます。金曜日の私はとても強いのですからシスイちゃんを助けることくらいどうということはないのです。
シスイ:うぅ……レート戦十勝するまで続けるの辛いよう……
『頑張れシスイ!』
『応援してる!』
『すこ』
私の方とはあまりにもレスの民度が違いました。こちらがスラム街なら彼女の配信のチャットは高級住宅街です。
シスイ:うぅ……眠い
燐火:凪ちゃん、応援して
凪:頑張らないとカフェインの錠剤持ってそっちに行きますよ?
燐火:凪ちゃんスパルタだよ……
そうでしょうか? 私としては珈琲とエナドリと栄養ドリンクにカフェインを追加してようやく目が覚めるくらいなのですが……
シスイ:ちょっと珈琲追加しまーす
『頑張れー』
画面上のアバターが動かなくなりました、離席したようですね。
コポコポ
『何の音?』
『トイレ?』
『コーヒーメーカーだろ』
『インスタントじゃないのか……』
そうしてしばらく経ってから燐火ちゃんは配信に戻ってきました。
シスイ:ハロー、ただいま! 目が覚めたよ! ここから全員ぶっ潰しちゃうよ!
『口調が……』
『壊れた?』
『一応正気を保ってるだろ』
シスイ:あははー……コーヒー飲んだら調子がよくなったよー! これから連戦連勝だよ!
『アカン、カフェインに酔ってる』
『シスイちゃんの事故配信、貴重』
『レコーダーアプリ入れたわ』
シスイ:いっくよー!!!
そこから彼女は本当に連戦連勝であっという間に十連勝をして配信を閉じたのでした。
燐火:凪ちゃーん! 私やったよ!!
凪:はいはい、よく頑張ったので寝てください、あなたはカフェインに向いてないです
燐火:凪ちゃん冷たーい
凪:冷たくて結構、割とマジに心配してるんですよ?
燐火:本当?
凪:本当ですから大人しく寝てください! カフェインは飲んでも飲まれるなって言葉があるんですよ!
作:私の言葉だ。
燐火:うーん……なんだかクラクラするよう……
そしてプツリとチャットに既読がつかなくなったのでした。どうやら眠ってしまったようですね。
私は彼女にカフェインは程々にするように言い聞かせようと決心したのでした。
なお、アカウントはちゃんと転生させておきました。
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