第8話 美紅の思い

ガチャ


扉を開けるときぬが待っている。


「きぬ、ただいま」


靴を脱ぐとかがみこんできぬを抱き上げる。


「もふもふだね」


そのままソファーへ座ると、きぬの体に自分の頭を擦り付ける。


「冷蔵庫しまうの手伝ってー」

「今、手が離せないんです。愛衣さん頑張って下さい」


 手が離せないのは本当だ。ふたたび手にした幸せを満喫しているのだ。よっぽどのことで無ければ邪魔はさせない。


愛衣さんは買い物を冷蔵庫にしまい終えると麦茶を一杯注いだ。そして一口飲むと、私の口元にも持ってきた。

喜んで間接キスすると、きぬにも間接キスならぬ唇ペロペロをされた。


きぬ、君も嫉妬するのか?


愛衣さんが隣に座ったので、そちらのほうへ体を寄せた。今日はずっとベタベタしていたい。


もう告白してしまったし、伝える前の関係には戻れない。おまけに我慢していた反動で触れたいという感情が抑えられない。




 頭から締め出してしまいたいのだが、やはり気になることを聞いてみた。


「水曜日のデートはどうだったんですか?」


愛衣さんは驚いたように私を見たが教えてくれた。


「ご飯を食べて、バルへ行って……優しくてよく気が付いて落ち着いていて……、好きになったよ」


「そうですか……食事だけ?」


「帰りがけに抱き締められてキスされた」


胸がきゅーっと締め付けられるように痛くなった。でも次の質問ができた。


「それだけ?」


「うん、それでおしまい。本当は今日もテーマパークへ行く約束をしたんだけど、急用で無くなった」


「そっか、前に進めるんだね」


「ごめんね、でも隠さないほうがいいと思って」


「うん、ありがとう」




「私にとってはその人がライバルかな」


 そう口に出したら無性に愛衣さんを取り返したくなってキスをしていた。唇を押し付けたまま離さない。首に手を回してもっと密着させる。あなたは私のもの。


ん、んんッ


愛衣さんが苦しそうな声をあげたので我に返った。


「ごめんなさい。取られたくなくて」


「いいよ、分かってるよ」


愛衣さんが頭をポンポンと撫でてくれた。


「さぁ、アイスクリーム食べよっか」

「はい」




「美紅ちゃんの勤め先ってどこなの?」

「東京都の職員です」

「へっ?」

「地方公務員です」


「へっー、そうなんだ」

「意外でしょ」

「うん、民間企業だと思ってた」


「じゃあ勤務地は東京都内か」

「はい、島も含まれますけどね」


「愛衣さんは新宿から動くことあるんですか?」

「まず今まではないね」


「勤め先は私達の味方ですね♪」

「そっ、そうだね」




「ねぇ、美紅ちゃん、思い切って聞くけど、今まで彼氏は?」


「いません」


「じゃあ、彼女は?」


「いたような、いないような……」


「いつ自分の指向に気がついたの?」


「高校生の時です。親友が出来て、でもいつもその娘のことばかり考えるようになって」


「一緒にいるだけじゃ気が済まなくなって、キスとかハグとか」


「でも関西の大学に行ってしまって、それで自然消滅しました」


「そっか……」


「もし私があなたの好意に応えられなかったら、友達でもいられなくなるんだよね」


「はい、たぶん、難しいと思います」


「正直に話してくれてありがとう」


 愛衣さんは何かを考えるような表情をしている。私は何を話してもいいから、どうぞ私のほうに振り向いてください。そう思った。




その後、二人と一匹は夕飯を食べた。

そして愛衣さんが後片付けをして、私はお風呂の支度をした。


「愛衣さん、入浴剤入れてもいいですか?」

「どうぞ」


「一緒に入って背中洗いっこしていいですか?」


愛衣さんが私の顔を見たが、私はさも当然のことのように平然とした顔をしていた。


「いいよ」


やったー!、長湯出来るように温度はぬるめにしておこう!


それからテーブルをすみへかたすと布団を敷いた。

もう今日は自分の欲望に勝てないかもしれない。




愛衣さんは洗い物を終えるとソファーへ座り、話しかけてきた。


「ねぇ、また明日も散歩していい?」

「はい、いいですよ」

「でも明日帰るんだよね、しんどいか」


「いえいえ、全然大丈夫です」

「そぅお、ならいいんだけど」


「そろそろお風呂に入ろっか」

「はい」


先に愛衣さんに入ってもらい、続いて私も入った。




入るとちょうどシャワーを浴びているところだったので、シャワーを取り上げると手で洗いながら首筋と背中を洗ってあげた。

そしてそのまま胸元を洗い、たっぷりとした乳へと行こうとしたところで止められた。


「あとは自分で出来るわ」


そう、そのとおり


 愛衣さんは順に足元まで洗うと今度は私の背中を洗ってくれた。

愛衣さんのすべすべの手が背中を撫でるように動く。至福の時だった。

私は愛衣さんに正面を向けると目を閉じた。


「なに、こっちも洗ってほしいの?、自分で出来るでしょ、赤ちゃんみたい」


構わずそのまま待っていたらおずおずと胸元から洗い始めてくれて、胸は触らずにお腹と足を洗ってくれた。

でも肝心のところに触れていない。私は愛衣さんの手を掴むと胸に押し付けて洗ってくれるようにせがんだ。


やむなく愛衣さんの手が動く。気持ちいい。そのまま抱きつくとお尻も洗ってもらった。

最後に愛衣さんの手を私の足の付け根へいざない、洗ってもらった。


私はシャワーを取り上げると愛衣さんに抱きつき、愛衣さんの足の付け根を洗ってあげた。


「これで全身流せましたね。浸かりましょうか」


二人で白濁した湯船に浸かった。


愛衣さんは口をきゅっと結んで少し戸惑った表情をしている。


「愛衣さん、バージンですか?」

「違うけど……一度だけ」


「私はバージンです」


そういうと愛衣さんが私を見た。


「でも、愛衣さんには触れて欲しいです。そして愛衣さんにも触れたいです」


そういうとキスをした。愛衣さんも拒まない。


少しずつ唇を開き、舌を出すと愛衣さんの唇や口の中を愛撫した。


そのまま胸を触り始めるともう一方の手で足の付け根の割れ目を触った。


愛衣さんの体がビクッと震えたが、構わずに続けた。




んッ……だめッ


愛衣さんのソコからは、もうお湯とは違うものが出ていて、興奮した私は止まることが出来なかった。


ぁんッ、だめッ、んんッ


一度強く抱き締めてきた体から力が抜けていった。


私は満足していた。


「みく、もう駄目だからね」


上気した顔で、肩で息をしている愛衣さんは可愛くてたまらなかった。


もう一度、抱きつくと、愛衣さんも抱き締め返してくれた。


今のこの時がずっと続けばいいのにと思った。


(つづく)

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