第3話

反則やろ……


初対面の人を看病して、ご飯作ってくれて、しかもめちゃくちゃ美味くて、ほんでほっぺからご飯粒取って食べるて……


『恋に落ちる』とはこうゆう事だ。


「あ、、いや、、あの、、ありがとうございました。。ご迷惑をおかけしました、、」


何か言わなと、とりあえずお礼を言った。


「……ふふ、どういたしまして。よかった、あの時エレベーターに乗って」

「それを言うなら僕の方です。」


幸せな空気が僕らを包んだ。



――――こんな事がキッカケで、彼女と知り合い――

彼女の事を少しづつ知っていった――――


優木葵さん、僕よりも九つ上の三十三歳、離婚経験あり、製薬の営業のお仕事をしている――

だから、知り合いにお医者さんがいたんだ。


身長は一五〇cmくらいかな――

僕と話す時、上目遣いで話す。年上だが、これが堪らなく可愛い。


たまにマンションで会うと“ちゃんと食べてる?食べに来る?”と言ってくれて、ご馳走になる――

何を食べても美味しいし、僕の好みに合わせてくれるのも嬉しい。


連絡先も交換した。


週末は家で二人で飲んだりもする。


僕は何度も告白した。

しかし、その度にはぐらかされた。



しかし、きっと彼女も僕の事を好いてはくれてる。

そんな気がする。

きっと歳の差、、離婚など、、好き・嫌いだけではない、なにかを気にしてるんだろうなと思う。


十二月最初の週末――


ピコンっ♪


“今日は何食べたい?”


“お肉!”


“先週もじゃん笑 今週は……お魚にします!”


“なぜ聞いた?笑”


“なにかご不満で? じゃぁ来ない?”


“行きます!”




−撮影終わったら、タッタと帰ろう−


彼女とのやり取りを終え、撮影開始まで待機してると、須貝さんが入ってきた。


「おぉ〜今日は山上と対決かぁ!よろしくな〜」

「よろしくお願いします!」


「ところでさ〜どうなん、最近は。お姉さんとは??」

須貝さんがニヤニヤしながら聞いてきた。


「須貝さーん……」

「情けない声だすなや、せっかくキッカケつくってやったんやから!」


須貝さんはあの時、“山上に合う!”と直感したらしく、あえて引き取らなかったと後で言ってきた。伊沢さんは“ホントかよぉ?” と疑っているようだったが、僕は感謝し、それから須貝さんに相談するようになった。


「まぁ……確かに年齢も離婚も、、ナイーブな問題だわな……」

「はい……年齢も過去もどうにもならいし……」

「まぁ、できるとしたら……」

「したら⁈⁈」


「年齢とか世間とかそんなん考えられんくらい、惚れさせる事やね!」

得意げに話す須貝さんに“そんなん出来たらとっくにやってますよ!”と言ったところで“お願いしまーす”と声がかかり、撮影に入った。


撮影は順調に終了し、僕は足早にオフィスを後にした。


“今オフィス出た!”

“りょ。十九時には着くね💨”


付き合ってはいない。

しかし、幸せだなと感じる。

“付き合ったらもっと幸せだろうな……”


思わず顔がニヤけてしまう。

さ、早く帰らなくちゃ………………


足早に歩き出そうとすると、


「だーいきっ!」

「わぁ‼︎」


突然、後ろから腕を掴まれ驚いた。

「……なんや、夕夏か……。急に腕、掴むなや。こんなトコで何してんねん?」

「買い物。」


彼女は大学で知り合った夕夏。話してみると地元が一緒どころか“何で今まで会わへんかったん⁈”と二人で声を揃えて言ってしまうくらい、かなり近い同郷だった。


「なぁ、家まで付き合ってー。買いすぎたわ。腕、ちぎれる」

「……何で考えて買わへんの……友達いっぱいおんねんから、誰かに来てもらいー……」

「持って!」

話してる途中、遮られ荷物を差し出された。


「…………もぅ……しゃーないなぁ……」

僕は彼女の荷物を持った。

「えっ、ホンマに⁈ええの⁈やったー!やっぱ優しいなぁ〜大喜は」


「持つまで粘るくせによう言うわ……」


……しかし……

夕夏の家まで行くとなると……

だいぶ遅くなるな……連絡しとかな……


「誰?」

夕夏が僕のスマホ画面を覗き込んだ。

「ええやん、誰でも!」

彼女の名前の後ろにつけたハートマークを見られるのが恥ずかしく、スマホを隠した。

「……彼女?」

「……ちゃうよ」

「なに、今の“間”⁈おるんっ⁈」

「……違うゆーてるやん‼︎」

何だかんだと夕夏に阻まられ、連絡出来ぬまま、夕夏の家に着いた。


「よいっしょ……ふぅ……」

「ホンマありがとう!助かったわー」

玄関まで荷物を運び入れ、ドアに手をかけた。

「じゃ……」

「えっ?帰るん?上がっていかへんの?」

「うん、帰る。じゃ……」

夕夏が裾を掴み、グイッとひっぱった。

「なに?」

「……一緒に食べようや……ご飯……いつも一人で寂しい……」


「……」


……なんとなく気持ちは分かる……

友達はいても同郷とは違う。家族もいない。

何となく一人のご飯は寂しい。

しかし……


「……友達いっぱいおるやん……」


「……」


「………………わかったから、そんな目すなよ!」


彼女の子犬のような目に負けてしまった。


“やったー!”とさっきまでが嘘のように喜び、部屋へと入って行ってしまった。


“また、やられた……”



しかし今更“やっぱり帰る”とは言えなかった。

「ちょっと電話してくるわ」

「分かったー」


僕はひとまず玄関を出た。

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