第2話

“えっ……うそ……山……上くん⁈

マジー⁈⁈同じマンションだったの……”


このマンションに引っ越して半年以上経つが、まさか同じマンションに山上君が住んでいたとは……私は平常心平常心と反芻しながら、ドアに映る彼をチラチラ見た。

うわぁ、可愛い❤︎………………

あれ………………なんか様子がおかしい……


顔が赤い、、目が虚ろ、、

呼吸が浅い……

「あの、、、、大丈夫ですか……?」


「はぁ……はぁ……」


やっぱり様子がおかしい。

私はガッツリ彼の方を向き、顔を見ようと俯き気味の顔を覗き込んだ時だった。

「あっ、あぶな!」


倒れる寸前にキャッチ!


「……セーフ…………?」


…………キャッチしたはいいが、さてどうするか……


チーン!

エレベーターのドアが開き、私の住む階。


とりあえず降りよう。

体の向きをかえ、彼をおんぶした。


これならなんとか運べそう…………


「はぁ……はぁ……よいっしょ!」


なんとかベッドまで運んだ。

だいぶ熱が高い。

しかし……救急車は大げさ過ぎるような、、


「とりあえず相談してみるか……」

考えた結果、知り合いのお医者様に電話した。


「もしもし?」

「あ、いつもお世話になっております。――株式会社営業の優木です」

「どうしたの、こんな時間に。もしかしてご飯のお誘い??」


「いや……すみません……そうではなくて……」


私は彼の状況を伝えた。


「なるほど……たぶん大丈夫だと思うけど、近いし、見てあげるよ」


「本当ですか⁈ ありがとうございます‼︎」


先生は本当にすぐ来てくれた。



「…………どうなんです?風邪です??」


「いやいや、これは副反応による熱だね」

「あぁ……五回目の……」

「そう、そのせいだよ。だから大丈夫。ただ、だいぶ汗もかいてるし、ホントはもっと楽な服に変えてあげた方がいいんだけど……」


「あぁ……先生……その――来ていただいて、見てもらって悪いんですが……」


私は遠慮がちに持っていた服をチラチラ見せた。


「はいはい、俺が着替えさせてあげますよ」


「いいんですか⁈ありがとうございます!!」


「まったく……最初からそのつもりだったろ?」


実はその通り。着替えさせてあげたかった。

しかしさすがに……と思っていた。


私は大きめの服を渡し、部屋の外に出た。


「はい、終わりましたよ」

「ありがとうございました。ホント助かりました」


「彼は……弟さん?」

「あぁ……そんな感じです」

「ずいぶん歳の離れた弟さんがいたんだね〜あと、似てないね、全然」


「まぁ、弟た《・》い《・》ですから」

「あぁ、なるほどね」


先生を玄関まで見送り、チラリと部屋を覗いた。辛そうにうなされていた。


冷たいタオルをオデコに乗せると少し呼吸が落ち着いた。しかし、時間が経つとすぐに熱くなり、私は一晩中タオルを変え続けた。



次の日も山上君は熱にうなされていた。

私はリモートで仕事しながら、タオルを変え続けた。しかし、目を覚ます事はなかった。


ネットで調べ、“冷えピタが効果的”と書いてあり、買いに出かけマンションに戻るとエントランスに見たことある顔……


「何号室やったかな……」

「えっ⁈ こないだ行ったからって言ってたのに、覚えてないの⁈」

「待って!……思い出す……えっとね、、“九”はついた!コレは間違いない!で……」

須貝さんの言葉を信じ、伊沢さんは並んでいるポストをざっと見た。

「須貝さん……九がつく部屋ないけど……」

「はっ⁈マジっ⁈ じゃぁ無理だわ。」

「無理って、、どうすんのよ」

「…………福良に電話しよ!数字、絶対覚えてる!」


二人のコントのような掛け合いを見ていたい気持ちを抑えつつ、私はそっと話しかけた。

「……あの……」

「はい?」

「須貝さんと伊沢さん……ですよね?

もしかして山上君に……?」

私は二人に事情を説明した。


「マジ⁈⁈あぁ………………」

須貝さんは床にへたれこんでしまった。


「連絡取れへんからマジで心配したわ……」


「すみません、電話が何度も鳴ってるのは分かってたんですが、どうしよ……勝手に出るのは……って何度も躊躇してしまって……」


「いや、そうだと思います。本当にありがとうございました。お部屋はどちらになりますか?」



「いや……あぁ……熱がまだ高くて寝込んでますし…………私の方は大丈夫なのでこのまま……」

「いや、そんな‼︎これ以上ご迷惑かけられませんので!」


「でも…………」


すると須貝さんがスッと立ち上がり、

「ご迷惑をお掛けしてすみません。よろしくお願いします!」と言い、頭を下げた。


「いやいや、須貝さん?」

「僕らのとこより、絶対環境がいい!」

「……まぁ、そうかもしんないけど……」

「ってわけで、すみません。よろしくお願いします」


と“ちょっと”と伊沢さんが何か言っていたが、須貝さんは構わず伊沢さんを引きづるよう腕を引き、二人は帰っていった。


そして、三日目。

ようやく目を覚ました。



「―――って感じだったんです。あ、完食ですね」


「本当すみません……むちゃくちゃご迷惑かけました…………」


「気にしないで下さい。元気になってよかった!食欲もあるし」


「ホンマ、こんな美味しいお粥初めてです!むちゃくちゃ美味しかったですっっ‼︎」

頬にご飯粒が付いている。

キラッキラした、子供のような笑顔で言う彼。無意識にほっぺから取り、

「お粗末様でした。元気になって良かった」

と取ったご飯粒を食べながら言った。



――ホントよかった――


ホッとして、彼を改めて見ると顔が真っ赤だった。

「えっ!熱、また上がった⁈」

彼のオデコに手を当て、自分の体温と比較した。

先日程ではないが、熱い……


「急に起きたからかな……まだ寝てた方が……」

「いや……これは副反応の熱じゃないです……」


「んっ?」

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