第1話 変な夢
夢を見た。
私が旧世界のどこかの国で暮らしている夢だ。
とりあえず平和な国らしい。
高層ビルが立ち並び、都会のようだが、海に面している。
街は港周辺と下町一帯が平地で、そこから手前はゆっくりと斜面になっている。
道は正確に縦横に幾何学的に交差しており、多くの車やバスが密集して走っている。
私の家は街の中心からは少し離れた丘の中腹にあるので、街全体の景色がよく見渡せるのだ。
外国航路用の大きな客船や貨物船が並んでいる。かなり栄えた港町のようだ
大きな空母や潜水艦まで係留してある。重要な軍港でもあるのだろう。
ところが海は綺麗な緑がかった明るい青で、水は澄んでいる。
白い巨大なクジラが何頭も泳いでおり、時折水面から大きく飛び上がって、派手な水しぶきを上げたりする。
やはり白いイルカが、ひとつの群れで数十頭、おそらく全部では何百頭という数だろう、湾のあちこちを泳いでいるのが澄んだ水越しに見え、それらがまた頻繁に水面からジャンプしている。それが遠目にも見えるのだ。さすが夢だ。
そんな動きが音も無く、夢らしくゆっくりと展開する。
空にはたくさんのカモメが舞い、それが港だけではなく住宅地の方まで飛んできて、餌をねだったりする。
ずっと見ていても飽きない不思議な風景だ。
すると私は学校らしき所にいた。
周りには女の子ばかりだ。
皆が薄いキャラメル色…… ん? キャメル色? とにかくそんな色の上着を着て、確か「れじめんたる」って言ったっけ、斜めに細いストライプ柄の、鮮やかなレモン色のネクタイを締めている。スカートは紺色だ。
見ると、私も同じ服装だ。
これが話に聞く学校の制服ってやつか。まあ、趣味も仕立ても悪くない。
部屋は、これは教室か?
先生らしき男の人が黒板に何か書きながら話をしている。これはゼブルさんだ!
「つまりぃ、現在の世界では他国との貿易無しに国家は成り立って行かないのでありましてぇ、だからこそ、我が国有数の貿易港であるこの街の本国の経済における役割は今後更に重要性を増しぃ……」
社会科の授業らしい。
また当たり前のことを……
退屈だ。
ん、当たり前かあ?
貿易なんてこと、私の住んでいる世界で行われていたかあ?
ここで、ゼブル先生がちらっと廊下側の窓の方に視線をやり、軽く会釈をした。
見ると、小柄で血色のいい丸顔の、長い銀髪のお婆さんがニコニコしていた。
ティアお婆さんだ! 校長先生が授業の様子をこっそり見学にでも来たってことか?
こんな平穏な世界があったんだなあ。
遺跡で見た映像の記憶が私にこの夢を見せているのか、それとも心の声さんの経験か、とにかく夢であることは自覚できている、変な夢。
するとまた、いつの間にか場所が変わり、今度は突然、どこかのビルの地下にいた。
ああ、やっぱり夢らしい混乱ぶりだ。
広い客席と、それより一段高くなった舞台がある。これは劇場か? それとも、食卓がいっぱい並んでいるところからしてレストランか?
大きな「
フロアにはお客さんが満員で、それぞれ豪華なテーブルで、エスニック料理とかいう色どりの綺麗な、ちょっと変わった料理を食べている。
私もエビと野菜の入ったスープを貰って、1口食べてみた。
夢だけれど、色彩同様、味覚もはっきりしている。
辛い! そして酸っぱい! けれど美味しい!!
ちょっと癖になりそうな味だ。
ここで黒服を着た男の人が私を呼びに来た。
今からダンスのコンテストが行われて、私はその出場者の1人らしい。はあ?
私、観客に見せるダンスなんて踊ったことないんですけど。
鏡に映った自分の姿を見て驚いた。
何じゃあこりゃー!? 水着のような、下着姿のような、ほとんど裸じゃないかぁ!
上半身にはコルセットって言うのかな、それともビスチェって言うのかな、とにかくウエストを締め付ける薄いピンクのそんなのを着て、下半身は黒いショーツ。
脚には太腿までの長さの、やはり黒いストッキングをはいて、それをガーターベルトで吊っている。
足元は凄い
こんな
あれれ、私、いつ成長したんだっけ?
よく見ると鏡の中の自分は17・8歳、いや、もう2つ3つ歳がいっている感じだ。
背が伸びて、ガイアさんほどではないけど
髪も栗色だ。カツラかと思って引っ張ってみたが、やはり自分の髪らしい。
で、ちょっとその気になって、鏡の前でポーズを取ったり少しダンスの練習をしてたら、いきなりコンテストの結果発表があったのには驚いた。
私は新人の部で優勝(!)、決めポーズの部で2位だそうだ。まだダンスしてないのに!
それに、新人の部はいいとして、「決めポーズの部」って何なのさ?
客席の最前列に白の、あれえ? スーツは漆黒か? ダブルのスーツを着て、何人もの派手めの美女を左右に侍らせてご機嫌の、中年に差し掛かった黒髪、小太りの男性、いや、痩身の金髪碧眼? とにかく私から見れば典型的な嫌らしいオジサンがいた。
私は何の脈絡も根拠もなく思った。こいつこそが、自称神だ!
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