第15話:話を聞いたマジル一家の反応は


「——と、それから私はこの力で喉を潤したり、怪我を直したり物を食べられる様になって、生き延びる事が出来たんです」

 ミモリは2番目の父母と出会う前迄の、自分の身に起きた不思議な出来事と力の事を話した。この後の事は、自分の気持ちの整理も有るが、マジルの事を思うと伏せておいた方が良い様に思われた。……ハヤトの事は。


「成る程な……」

 話し終わったミモリをマミとマジルが涙を流して励まし始めた中、ヤマトは神妙な顔をして何やら考え始めた。

「……? ……どうしたんですか?」

 ミモリは背後に回り込んだマミに抱き締められながら、ヤマトの態度に不穏な物を感じ取り、恐々こわごわ訊ねた。

「いや、今回の納品先はウルク城下街だったんだがな。そこで、不穏な話を耳にしたんだよ」

「不穏な話? あんたのそんな持って回った言い回しなんて初めて聞いたけど、何なんだい?」

 突然真面目な顔に戻り、夫の言葉に首を傾げるマミ。

「……ああ、そうかもな。でもこれは、それ以外に言い様が無くて。……何でも、王様が何らかの力を求めて、もう何年も前から近隣の村を探し回っているという話だ」

「……何らかの、力……」

 自分の言葉を繰り返したミモリに、ヤマトは静かに頷いた。

「それがピシャリとミモリちゃんの力の事かは分からんが、今の話を聞いて、若しかしたらと思ったんだ」

「その王様が力を探し始めたのは何年前なんだろうな」

 ミモリの隣に座るマジルも、真剣な顔で考え込んでいる。

「飽く迄も耳にしただけだから詳しい事迄は分からんが、それが10年以上前だったら、或いはな」

 場の一同は、一斉に唾を飲み込んだ。

「ひょっとしたら、あの村を滅ぼしたのは——」

 顔を蒼白にしながら泡を食い出したマミの言葉を、「シッ!」と口許に指を立ててヤマトが遮った。

「滅多な事を言う物じゃ無い。こんな辺境の村だが、誰かに聞かれて回り回ってお偉いさんに知られたら、只じゃ済まんかも知れん」

「……不敬罪?」

「そうそう、それだ。父兄がどうのってやつ」

「……それでも、だとしても、どうしてその力がミモリに?」

 ミモリの言葉を繰り返した父親に何か違和感を覚えながらも、マジルは話を先に促した。

「俺達もマジルが生まれる少し前にあの村に移住した処だったから詳しくは知らんが、何か、村人の中でも一部の人しか入る事が許されない場所が有ったな」

「ああ、そうだったね」

 当時を懐かしんだのか、ヤマト・マミ夫妻は目を細めて頬を緩ませている。

「若しかして、その一部の中の人に入っていたのが……」

「そうだね、ミモリちゃんのご両親だったね」

「えっ?!」

 ミモリは、マミのその言葉に目を丸くした。

「小さくてよく覚えていないけど、お父さんとお母さんが……」


 そして、その顔を思い出す。優しかった両親の、その顔を——。

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