第14話:受け入れられて
その翌日からもミモリは、或る日はマジル達と一緒に山や森に行き林業の手伝いに精を出し、また或る日は村の手伝いに精を出した。
この村には自分から「あの不思議な力を貸して欲しい」と言い出す者は居らず、ミモリが力を使うのは、命に関わる様な怪我や病気、水不足等、ミモリが見るに見かねた時に限られた。
特に、無邪気に走っては転んでいたタケルの怪我を、よく治した。
本人達が我慢している以上自分から手を出すのは余計なお世話だとは思いながらも、手を出さずには居られなかったミモリなのであった。
その内に2週間も経ち、切り出した木材の納品に出ていたマジルの父親達が帰って来た。
マミにその日の夕食に呼ばれておたミモリは、マジル達親子と4人で食卓を囲んだ。
「おお、ミモリちゃんって、あの頃お隣に住んでたあのちっちゃなミモリちゃんか。大きくなったなあ!」
マミが腕を振るった山盛りのご馳走を前に、マジルの父親であるヤマトは嬉しそうに豪快に笑った。
「あの村の事は不幸だったとしか言いようが無いよなぁ。お父さんもお母さんも残念な事をした……。俺達は偶々旅行に行っていたから助かったが……。今まで色々と大変だったと思うが、ミモリちゃんの気が済むまでこの村に居たら良いよ。マジルとあの頃みたいに仲良くしてやってくれ」
「ありがとうございます! マジル君にはもう仲良くして貰っていますよ!」
「……っ!」
ヤマトの言葉にミモリが笑顔で返すと、頬を赤くしたマジルは言葉を詰まらせて顔を逸らした。
「あれ? もうそんな仲なのか?」
「あ、いえ、私は……」
「何だい、この子は。気持ち悪いねえ。精々が一緒に仕事に行ったり、うちで一緒にご飯を食べたりするぐらいでしょうが」
「ごめんね、マジル君」
「何がだよっ」
マジルが吐き捨てる様に言うと、食卓が笑いに包まれた。
正直な話、ミモリとしては助かったと思っている。未だ、整理し切れていない断ち切られた想いが有るから。
「それにしても、寝込んでいた母さんが元気になっていて、ビックリしたよ。何が有ったんだ?」
余り驚いている様にも見えない様子で、ヤマトは言った。——ただ、良かったと思っている様子で。
訊かれた当のマミは、困った顔でミモリを見た。
ミモリは迷わずに頷いた。ヤマトにも隠し事はしたく無いと。それにどちらにしろ、誰かがミモリの力の事を、ヤマトに伝えるだろうと。
「——ミモリちゃんがね、治してくれたんだよ」
「ミモリちゃんが? 医学の心得でも有るのか?」
「あ、いえ、そうじゃないんですけど。……ヤマト小父さん、ちょっと手を出して貰って良いですか?」
「え? あ、ああ……」
疑問に思いながらもヤマトは、言われるままに向かいに座るミモリに手を差し出した。
「今日帰って来たばかりで、疲れてますよね?」
「ああ、まあ。気を抜いたら眠ってしまいそうな位ではあるな」
「分かりました。ちょっと失礼します」
そう言ってヤマトの手を握ったミモリは、目を閉じて意識を集中させる。
「——うん、そうなの。少しだけで良いから、お願い——」
「……あれ? おお?」
ヤマトは勢い良く立ち上がって、自分の身体を見回しながら疑問を音にした。
「あんた、どうしたんだい?」
「いや、あのな? さっき迄感じていた疲れが、一瞬にして無くなったんだよ! これなら、今からでも一仕事行けるぜ!」
楽しそうに口角を上げて訊いたマミに驚きをそのまま言葉にして返すと、ハッとミモリに視線を移した。
「まさかこれ、ミモリちゃんが?」
その問いに、静かに頷いたミモリ。
「これはマミさんにも、……マジル君にも未だ言っていなかったんですけど、昔村を焼け出された私が野山を彷徨っている時に——」
訥々と語り出したミモリに、マミもマジルもヤマトも、揃って身を乗り出した——。
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