第3話 充電

──ゴロゴロ

──ゴロゴロゴロゴロ


 これは、夫が寝床を転がっている時の効果音である。布団を抱きかかえ、右に左に寝返りを打つ。

「まだ眠いの?」

「うーん」

 非接触型の充電ポートを敷き布団の下に入れたのは正解だった。30年前の自分を褒めたい。とはいえ10年前に廃盤になってしまったので、最早骨董品に近い。壊れたら自作するか諦めるかするしかないんだろうと思っている。バッテリーを複数持って、入れ替える方が簡単だし、そもそも急速充電が主であるわけで。

 それを嫌だと思う自分が間違っているのだと、祥子は思う。

 布団をぎゅっと抱きしめて顔を埋めた夫はまたすやすやと眠り始めた。二度寝である。

 元々布団が好きだという夫だが、この睡眠は祥子のためのものだ。本来的に睡眠が必要ないロボットに、人間と共に生きるためだけに設定されている『スリープ』モード。まぁ、厳密にはこのタイミングでガーベージコレクションをしているので、睡眠といっても差し支えないのだが。

 ──ロボットなんだから寝なくても良くない?

 仕事仲間の言葉が胸を刺す。

 自分も、人間って言えるほど大したシロモノじゃないし、と自嘲しつつ壁にホロを投影する。この間に仕事を終わらせておけば、夫と遊ぶ時間は増えるのだから。


 夫の寝息を確認、異常なし。


 古めかしいキーボードを取り出して、祥子はデスクにつく。こんなことすら本当は無意味なのだなと思うが、やめるつもりは毛頭無い。その決断はもうずっと前にしたのだから。

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私の夫はロボットである 清水ハイネ @heines

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