第5話

お社に着くと蛇神は新品の一升瓶を抱きかかえて屋根に座っていた。

「白蛇様。」

「おぉ、天狗。お主何か不手際があったようじゃな?」

蛇神は少し怒っているような口調だ。

「申し訳ありません。」

「この山を治める天狗として、人攫いと間違われるとはとんだ失態じゃの。」

お社の前には沢山の野菜やお酒が置かれている。

「今年は不作ぎみだというのに。村人はこんなにお供え物をもって来たぞ。」

天狗は何も言い返すことができなかった。蛇神はため息をつく。

「それで?ももは見つかったのか?」

「いえ、まだ。」

「ふむ。西の方が何やら騒がしいようじゃ。様子を見てきた方がよいのではないか?」

「では、行ってきます。」

山の西側は気の荒いイノシシたちが縄張りを張っている。

妖たちもあまり近づかない場所だ。ももたちがそこに居なければいいのだが。

もう少しで到着という時、イノシシたちの威嚇する声が聞こえた。

木を飛び移り、上から様子を伺う。

一か所にイノシシたちが集まっている場所があった。

そこまで行くと、イノシシたちにももと狛犬が追い詰められているのを見つけた。

岩場まで追われて逃げ場がないようだ。

中でも体が大きいイノシシがふたりに向かって突進していった。

天狗は飛び降りふたりを抱きかかえて、木の上に戻った。

イノシシたちは急に消えたふたりを見つけられず、きょろきょろしている。

「てんぐー。」

ももは今にも泣きだしそうな声をだす。

ふたりを抱えたまま、天狗はお社に向かった。

「天狗様、私が付いていながらもも様を危ない目にあわせてしまい申し訳ない。」

「ふたりが無事ならそれでいい。」

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