第4話

麓の方へ進むと、山道の奥のまで来ている人影を見つけた。

もものようだった。

村に降りるのならそれでもいいだろう。

だが、近くの村に降りるのはももの過去を考えると問題がありそうだ。

どちらにせよ一度話をした方がいいだろう。

天狗は木の上から降りてももの前に姿を現した。

「もも殿。昨日は怒らせてしまったようで済まなかった。」

ももは酷く驚いているようだ。

不思議に思い天狗はももを見ると、その少女はももではないことに気が付いた。

顔や見た目がそっくりだったので気が付くのが遅れた。

おそらくあの時の、ももの片割れだろう。

「秋音ー」

麓の方から村人が少女を呼ぶ声がした。

その声に少女は振り返り村のほうに走っていった。

天狗は急いでその場から離れて、木に飛び上がる。

村人の前に姿を現してしまうとは、昨日の件があったとはいえとんだ失態だ。

天狗は頭を抱えていた。

「天狗様どうされました?村人たちやっと帰っていったみたいですね。」

先程の妖の声に我に返った。

「あぁ、そうだな。そちらは問題なかったか?」

「はい!お友達ができました!」

とニコニコしながら貰った木の実を見せてきた。

「そうかよかったな。気を付けて帰るのだぞ。」

「はい、天狗様も。」

妖と別れてお社に向かうことにした。

村人に姿を見せてしまったことを蛇神に相談するためだ。

どれだけ木の上で考えごとをしていたのか、あたりは薄暗くなり始めていた。

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