二景
二景
昼
廃駅
降雨
白いベンチ
座りうなだれている星野
星野 僕はろくでなしなんだ。何事もうまくいかないように導く才能に満ちているんだ。ミズキちゃんに振られてしまった僕はどうすればいい。この世の破滅、終わりだ。人類は絶滅するのだ。
やってくる占い師
占い師 今日も波動が乱れておる。
星野 誰だ。
占い師 私は怪しいものではありません。
星野 そういうやつは大体からして怪しいんですよ。
占い師 それは勉強になるな。メモしておこう。
星野 僕は自分のこと変わっていると思いますけれど貴方はそれ以上な気配がぷんぷんします。
占い師 そうか。やはり、そうなるか。
星野 どしたんです。うなだれて。
占い師 私はこれでも真っ当に生きてきたが、残念ながら世間は認めてくれなかった。私は人生を潔白で堅実なモノとして建設しようと努力した。したのだ。
星野 悩んでいるなら話ぐらい聴きますよ。
占い師 君は天使か。
星野 ただの星野ですよ。
占い師 星野くん。君は将来世界で一番輝く人となる。私が約束しよう。
星野 貴方に約束されても嬉しくないなぁ。
占い師 その言葉、後悔することになるぞ。
星野 なるわけない。
占い師 なる。
星野 なぜ。
占い師 私はこの世で最も堅実で真っ当な占い師だからだ。
星野 なるほど。だから怪しいんですね。
占い師 怪しくて何が悪い。私ほどまともな占い師は何処を探してもいないんだぞ。
星野 僕は占いなんて信じていません。大切なのは現実で何をするかなんです。占いなんか気分で変わるモノ、いりませんよ。僕は僕を信じるんです。
占い師 おいどうしたんだい。急にスイッチでも入ったように。何か悲しいことでもあったのかい。
星野 悲しいなんてもんじゃないですよ。僕の人生は悲しみで満ちています。
占い師 それはしんどいね。
星野 しんどいですよ。逃げたくてたまらない。この廃駅となったホームで来ない電車を待ち続けることで気分を紛らわしているんです。寂しい男でしょ。
占い師 寂しくないよ。君はこうでもしなくちゃパリンと割れてしまうんだろう。
星野 割れる?
占い師 君自身の心が。
星野 ですね。
占い師 君の言う通り占いなんてデタラメだ。
星野 自分で認めますか。
占い師 最も堅実でまっとうに商売してきたからな。君は今客ではない。一人の人間としてお話しています。デタラメですが、この世の中何もかも浮遊しているモンです。占いだけがふわふわしているわけではない。
星野 それがなんだというんです。
占い師 キミは人生そのものを愛すべきということだ。確実なモノだけでなく、ふわふわとしたモノをそのまま愛することができたらいいね。
星野 なんですか。説教でもしてるんですか。
占い師 かもしれない。
星野 貴方と話してるとなにかイライラします。
占い師 此処にはよく来るのかい。
星野 僕は一人でいたかったんだ。なんで貴方は此処にきたんだ。
占い師 顔見せをしたくてね。
星野 僕以外に誰もいないというのに。
占い師 キミは悼む文化を持たない領域の人?
星野 悼む? なんの話です。
占い師 昔、私は此処で働いていたんだ。
星野 駅でですか。
占い師 そうだ。あれから何年経っても私にとって此処は大切な場所なのだ。
星野 なるほど。
占い師 願わくば総てが幸福なまま世界が続いて欲しかった。でも叶わなかった。
星野 あの。
占い師 なんだい。
星野 僕は貴方の話、聴くつもりはありません。昔話は一人でしていてください。僕は孤独でありたいんだ。
星野退場
占い師 彼は不幸を追いかけている。悲しい。しかしそれも人生。誰も聴くモノがいなくても私の心はもう動いている。過去が動いている。今も僕の目の前で。
暗転
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