ログイン6 おじいちゃん、落ち着けよ?
少しだけこの付与効果のぶっ壊れ度を説明したいと思う。気にすることない、ほんの僅かな時間で解説できる。だから、身構えずに聞いてほしい。
全てのゲームにおいて言えることだが、ゲームレベルを上げることは至極シンプルかつ強くなるための最善手だ。なぜかって? 時にそれは、新たな能力を覚えることができたり、ステータスの上限値を引き上げることを可能とするから。強者は、強者たる所以として、新規プレイヤーでは追いつけないレベルを誇っているものだ。
しばしば、レベル上げに励みすぎて最初の村から冒険を開始できないといったプレイヤーも現れるほどだ。それほどまでに、レベルはゲームの中において重要な数値に置かれている。だから、正直言って、ゲームをプレイする以上、レベル上げに励まないプレイヤーはいないといっても過言ではないだろう。
経験値の獲得方法は、大きく分けて三つある。一つは、1日に歩いた距離に応じての経験値配布。次に、レイドボスを倒した時にもらえる、ボスの強さに応じたボーナス経験値。最後に、対プレイヤー同士の対戦でもらえる経験値。これらを、複合させながら、各々レベル上げに勤しむのだ。
しかし、弊害もある。それは、高レベルにおけるレベリングが困難を極めることだ。このゲームも例外ではなく、低レベルに比べると、高レベルの方が遥かに大量の時間と経験値を要する。
それこそ、礼央の現実世界のレベルだと、普通にプレイをしていたら一ヶ月かかって一レベル上げれるかどうか・・・。とにかく、膨大な時間と経験値がかかることだけは、分かってもらえたと思う。
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『俺の前のレベルが200。このゲームの最大レベルが、500だったからな〜。一レベルあげる必要経験値が、あの時で200万経験値くらいかかったか? もし、この付与効果が本物だとすると、単純計算で20km歩くだけでレベルが上がるのか・・・。つまり1日に、25km歩いてたからレベル上げるのに、1日もかからないのか・・・』
口から叫びたくなる気持ちを抑えながら、礼央は胸中でグツグツと燃え上がるモチベーションを抑えきれずにいた。もちろん、レベル上げだけがゲームの良さではないことは百も承知だ。しかし、一プレイヤーとしてこれほどまで整えられた舞台の上でのプレイは、興奮を覚えないはずがなかった。
「おい、先ほどから黙っているが・・・もう一つ聞きたいことがあったんじゃないのか?」
心配そうに覗き込んでくる老人のNPC。どうやら、礼央が付与効果の考えに思いを馳せている間も、声をかけ続けてくれていたみたいだ。肩で激しく呼吸をしている姿を見ても、それは明らかだった。
「あ、あぁ。すまない、ちょっと考え事をな」
「人と話している時に、急にするとはな。変わり者だと思っていたが、それは間違いだったようじゃ。お主は、かなりの変人じゃよ」
「褒め言葉として受け取っておくよ。じゃあ、もう一つ聞くけど・・・」
人差し指を立てた状態のまま、老人の顔の前に突き出す。礼央の顔に浮かぶは、憎たらしさを覚えるほどの不敵な笑み。身構えるように、老人の筋肉が収縮していく様子が手に取るように分かった。まぁ、そんな緊張してもらうほどの質問じゃないんだけど。
「次の大洪水の時期はいつ頃だ?」
その問いに対して、老人は静寂を返答してくる。目を大きく見開き、瞼の上をピクピクと動かしていた。何かが飛び出してくるのを我慢しているようにも見えたが、礼央は質問を重ねる。
「あれ? 聞こえなかったかな・・・? 次の洪水の時期が分からなければ、冒険の目処も立てることができないだろ?」
これが、老人の堪忍袋の紐をきる最後のトドメになってしまったようだ。いつの間にか、握りしめていた力拳がワナワナと震える。そして、その震えを解き放つかのように、老人はその衰弱し切った風貌からは、想像できないほどの大きな声を出す。
「馬鹿もん!!!! そんなものが分かれば、ここで
それは、礼央にダムの決壊を連想させた。大量の水を罵声と見立てながら降り注ぎ、しばらくの間、修理という名の宥める言葉をかけることに費やす羽目になってしまうのであった。
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