ログイン3 バイバイ!いざ、始まりの村へ!!
「いや・・・普通に帰りたいんだけど? 俺の話聞いてた? まだしなきゃいけないことが沢山あるんだよ」
「それは完全に僕のセリフだよ!!」
首を傾げる礼央に、精霊は至極ご立腹のようだ。
「もういいよ! 丁寧にちゃんと精霊らしく装うって思ってたけど、やめる! もうさっさと説明して、村に送ってやるから!」
「だから、村じゃなくて俺の家に・・・」
「え〜、どこから話そうか・・」
「あ、だめだ。もはや聞く耳を持ってない・・・」
礼央は諦めて、それ以上口を挟むのはやめた。さっきから薄々感じていたことがある。それは、二人の間で全く会話が進んでいないことだ! 押し問答を繰り広げてはいるが、一向に核心に迫る様子はない。ここでどっしりと構えて、話を聞かなければ永遠にこれが続くのではないかという不安が、礼央を襲ったのだ。
「この世界は、君がずっと遊んでいたpassengers of NOAHそのもの。街や、ゲームシステムその何もかもが、この世界では常識として浸透している。そこで、今回このゲームを、誰よりも愛している君をこの世界に招待することにしたんだ!」
「いやいやいや・・・意味わからんって!」
「ステータスはゲームデータから何故か引き継げなかったのが、僕にも分からないんだけど・・・。でも、やることは同じだし変わらないよね! 君にはこれからユーザーが最初に訪れる村、ホワイトヴァレットに転移してもらうよ。そこで、実際にこの世界を堪能してほしい! きっと、気に入ってくれると思うよ。だって、ここはゲームそのものだから!」
「おーい? 意味不明すぎるだろ!! ってか、ゲームそのものの世界なんて頭おかしいのか? てことは、この世界はいずれ大洪水が起きて、命を無に帰す事態が起きるんじゃないのか? そうなってしまうと、俺死んじゃうじゃん!!」
その言葉を聞くと、今まで以上に目の前の精霊は首を横に倒した。はにゃ?という、可愛らしい声を漏らしながら。
「ゲームの世界でも同じだったじゃん。その中でも、君はステータスを維持し続けてきたんでしょ?」
「それは・・・あくまでゲームだったから! 歩き続ければそれでよかったし、俺学校生活の全てを投げ打ってたから!」
「同じだよ、この世界でも。歩いた分だけ強くなるし、歩かなければ武器も入手できない」
今度は、礼央が息を吐いた。長く、それでいてどこか重量を感じさせるため息を。
「ゲームと同じことを、ここでは現実として行えば良いってことか・・。ちなみに聞くんだけど、俺がここから帰れる条件とかあるの?」
「今すぐにはないよ。あ〜、物覚えがよくて助かった〜!! じゃあ、早速転移と行こうか!! 早く歩きたくてウズウズしている頃でしょ?」
「そんな病気みたいな衝動はあいにく持ち合わせてないよ」
「大丈夫。きっと気にいると思うよ、この世界を。救ってあげてほしいんだ。神々がくだした判断が正しいのか」
「うん? 何を言っているんだ?」
精霊の表情に、浮かべていた笑顔は消えている。まるで、真っ白な壁面に感情を奪われてしまったかのようだ。しかし、それは礼央の勘違いだったのかもしれない。問いかけられた精霊は、それが嘘かのように明るい笑顔を瞬きの間に浮かべて見せた。
「気にしない!! あ、そうだ。僕から突然この世界に招待したことによるお詫び。というのも大袈裟なんだけど、一つとっておきのプレゼントを用意したよ。後でステータスを確認してみて!」
「お詫び? プレゼント? って、おぉぉぉい!!!!!」
再び強力な発光が発生し、突如として礼央を包み込んだ。当然、目も開けていられない。光の粒一つ一つが熱を持っているのか、頭からつま先まで全ての部分で均等な暖かさが身に纏ってくる。
「いつか! また会う日まで!! そう遠くないことを祈ってるよ!!!」
精霊の言葉が最後まで鼓膜を震わし終わると、礼央の身体から感覚が失われていった。突如として襲う浮遊感に、抗う間もなく屈してしまったのだ。
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