第5話『セカンドエピソード、新たなプロローグ』

金井との決着が曖昧なまま、陽介は『病院』に搬送され、入院を余儀無くされた。


会社には笹山を通し、有給扱いにしてもらい

何年振りかの、長期休暇を取った。



 陽介の病室には、マンションの住人が代わる代わる、見舞いに訪れた。

中でも、大月知世は、病院でもお構いなしに終始大声で話していた。


 流石に、目立つので、病院の看護師達が、

何度も注意しに来る始末。


大月は、、出禁になった。


オーナー夫婦が、訪ねて来た時は、緊張したが、樽井と赤木広大の活躍により、誤解が解け、逆に気を使わせてしまっていた。


その時に聞いた話だが、あの後、林藤 修、赤木宗則、諸星 純は、オーナーを裏切った者として、強制退去にしたという。


 樽井と赤木が、見舞いに来たのは、退院3日前の事だった、二人は、金井の行方を探したそうだが、どういう訳か見付からなかった。


 陽介は二人に再度礼を言うと、そのまま目をつぶり、眠りに付いた。



(ここだけの話だが、笹山は住人達と関わりたくない為、見舞いを拒否した。)



そして、退院の朝を迎えた。



時刻はAM 10時15分


陽介はレンタルパジャマを脱ぎ、赤木に持ってきてもらった服に着替えると、帰る身支度をした。


「漆原さん、退院おめでとうございます、お家に帰ったら、激しい運動は控えて下さいね。」


 「はい!、今日までお世話になりました。」


担当していた、看護師が陽介をタクシー乗り場まで見送ってくれた。


車中、陽介は考えていた、金井の行方を。


彼の言動を。


「あいつ、、昔の俺に、、」


ポツリと独り言を漏らす。


暫くすると、見慣れた景色が、見えてくる

入院先は、マンションから二駅離れた場所にあった。


「あ、ここで、止めてください。」


 「はい、わかりました、2100円になります。」


 「これ、おつりね。」


「ありがとうございました。」


マンション前で、降ろしてもらった。


約、一週間離れていたのに、初めて此処を訪れた時の様に新鮮で、また、懐かしい感じがした。


陽介は、螺旋階段を上がり、自部屋に入り、色々片付け始めた。


コン!コン


扉からノック音が、聴こえた。


 「帰ってきはったんね、退院おめでとさん」


「ありがとうございます、、でも知世さん、出禁になりましたけどね。」


 「あかんな、あの病院は、全然教育ができてへんな。」


「知世さんが、騒ぐからですよ。」


 「あ、そうそう、今日の夜、オーナーが漆原君の退院祝いやるいうてはったから、19時頃リビング集合やで」


「そうなんですか!、、嬉しいな、分かりました、19時ですね。」


知世は、ガハハッと笑いながら、去った。


「少し仮眠でも取るかな。」


陽介は部屋に戻って来た安心感からか、ぐっすり眠ってしまった。



[───────ここは?]



周りから、銃や人々の嘆きの声が聴こえ

辺りには硝煙の臭いが充満し、周辺には死体が転がっていた。


「こちらは、もう駄目です!、、○○戻って来てください」


ドーン! ドーン!


何かが着弾した音がした。


 「待っててくれ、いま○○へ行く」


「○○ー!、、返事をしてくれ!、、何処にいるんだー!」


途切れ、途切れの通信。


 「○○来てください!○○様は此方です、、ですが、、もう」


そこには、一人の女性が衛兵に支えられていたが、残念ながら虫の息だ。


女性を丁寧に降ろし、男は身体を支えた。


「きて、くださったのですね、、私は、、もう駄目です、、○○生きて、、

もし、、『生まれ変わったら』、、また、逢おうね」


 「ああ!、、絶対○○を見つけてみせる、必ず、、」


 「だから!、、○○『来世』で逢おう、、」


「う、嬉しいな、、……」


 「○○?、、おい!、、返事を、、返事を、、してくれー!」



[───────!?]


目の前が再びフラッシュバックされ、陽介はハッと目を覚ました。


「ハッ!、、ハァ、ハァ、ハァ、ま、、またこの夢か、、これで何度目だ、、」


「頭が、、クラクラする、、一体、、何なんだ、、俺に何を伝えたいんだ?」


「何で、、俺は泣いてるんだ?、、」


陽介の頬には涙で濡れた後が、、何度も、何度もこの夢を見ていた、夢にしては全てがリアルで、彼女を抱いた手の温もりが、感覚が残る程だった。


═══════════════════


時刻は18時40分


落ち着きを取り戻した陽介は、退院祝いの為

スーツを着て、時間を待っていた。


折角、自分の為に皆がパーティーを開いてくれるのだから、正装をして、その想いに応えたいと思ったからだ。


「よーし!バッチリだな、蝶ネクタイなんて、まるでアレだ、名探偵カナンみたいだな。」


名探偵カナンとは、主人公が大学生の女の子で、、薬で小さくされ、推理で悪人達を捕まえていくというミステリー漫画だ、現在も、原作1000話以上続き、コミックスも100巻出てる程、有名だった。


「こりゃ、登場シーンには、カナンのBGM を要求したいね、颯爽と参上する俺、、格好良い、、」


等と妄想を膨らませていると、扉をノックする音がした。


「はーい!、、どなたですか?」


 「お、俺です、漆原さん迎えにきました。」


「その声は樽井だな、ありがとう、じゃあ

行こうか!」


迎えに来た樽井に連れられ、リビングに出向いた、そこに待ち受けていたのは、、新たな予感を陽介に感じさせたに違いない。



ガチャ


 リビングのドアノブを回し、部屋に入ると、オーナーが、いつもの定位置に座り、奥さんが料理の準備の為、台所とリビングを行ったり来たりしていた。


食事用の長テーブルに、先に座って居たのは、赤木広大と、大月知世だった。


他の住人は見当たらない。


 実はこのマンションの住人は、計20名以上居る。


こうして、オーナーや皆で談笑する者達は珍しく、殆んどが、自部屋に籠り、そこで食事をしたり、プライベートの時間を大切にしている。


 実際の所は、オーナーの洗練を受けて、面倒に思うのが大半だという。


時刻はPM 19時パーティーの始まる時間。


陽介と、樽井は、長テーブルの椅子に座り、

大月と、赤木と、向かい合う形になっていた。


リビングの扉は、開かれたままだった。螺旋階段から降りてくる足音が複数、その足音は、段々リビングに近付き、そして、開かれた扉から、雪崩混むように人が沢山入って来た。


「はーい!俺一番!」


 「○○さん押すのずるいですよ」


最初に入って来たのは、茶髪で、パーマを掛けた20前半位の男だった。


2番目に入って来たのは、背が小さく、155センチ位だろうか、色黒の男が入って来た。


「○○が遅いからだ、背が小さいと足が早いんだけどな」


 「そんなん迷信ですわ~」


「こらこら、騒いでないで、席に座って、漆原君に挨拶をしなさい」


二人がやり取りしてる中、制止をしたのは、オーナーだった。


二人は、着席すると、一人ずつ挨拶をした。


「初めまして、俺は有名写真家の孫の、『海原 俊雄』です!」


 「ほんでもって、俺が『河西 昇太』です、よろしゅう」


「こちらこそ、宜しくお願いします、漆原陽介です。


「海原って!、あの海原遊山氏ですか!


凄いですね、まさか、こんなところで、お孫さんに会えるとは、運が良いな。」


海原遊山とは、写真家で、女性の裸体等を専門に撮り、その写真は芸術的で、一枚何百万の値が付くらしい。


「漆原陽介です、宜しくお願いします、色黒いですね、日焼けですか?」


 「あ、俺生まれが、『狭島』の方で、あっそこ暑くて、殆んどの人間真っ黒ですわ、、ってのは冗談やけど」


陽介は一瞬で察した、ああ、大月と同じタイプだと。


三番目に入って来たのは、30代位の女性と、背が高い男性だった。


「こんばんわ、『園田 果奈』です宜しくお願いします。」


色白で病弱な感じがする様な、風貌だった。


 「こんばんは、樽井 涼と言います」


矢張、背が高く、180以上だった。


格闘家みたいな見た目だ。



「漆原陽介です、以後お見知りおきを。」


続々とリビングに入室して来る。


「こんばんは、『大山 耕司』 です、宜しく」


50代位のおじさん、メガネを掛け小太りで、挨拶は淡々としたものだった。


「あら、こんばんは、あなたが漆原君?」


 「はい、漆原です。」


「わたしは、『生天目 久代』、宜しくね!」


妙に明るいし、若々しく感じるが、50代のおばさんだった。


痩せていて、特徴と言えば、口元にほくろがあった。


 流石にもう、来ないだろうと、思っていたが、陽介の予想を裏切る展開に。


なんと次に入って来たのは、ルームシェア初遭遇の異国人だった。


 陽介は一瞬構えたが、直ぐに安堵した。


入って来るなり、陽介と同じ言語で話してきたからだ、お世辞にも上手いとは言えないが、というより、色々勘違いしていて、メチャクチャだった。


「ハーイ、コンバンワ、ワタシは『アディティ』とおじゃリマす、リンドという、クニから、サンジョウ、ゴザリマシタ、ミナサン、ヨロシク。」


 「こ、こちらこそ、よろしくお願いします、漆原です。」


陽介は萎縮してしまい、まるで樽井の喋り方が移ってしまった様だった。


見掛けは細身で20代位で、首には、首飾りをしていた。


「皆、揃った様だね、では、漆原君の活躍と、退院祝いを始めましょう!」



それでは乾杯ー!


 リビングは一気に騒がしくなり、それぞれが、談笑していた。


陽介は酒が飲めない為、炭酸飲料を飲んでいた。


 そこへ絡んできたのが、海原俊雄だった。


大分宵が回っていたのか、呂律が回ってない。


「しっかし、、聞きましたよ漆原さん、このマンションを救って、大怪我をしたらしいじゃないですか、英雄ですよ!」


 「誰に聞いたんですか?」


「知世さんですよ、皆知ってますよ!」


 「、、、また、、あの人か、、」


陽介は呆れた、このマンションでは、直ぐに伝わる。


大月知世の噂話によって。


酒を飲まない陽介にとって、酒の席は苦手だ、しかも、酔ってる相手が複数人居れば、いくら祝いの席だろうが、陽介にとっては地獄に変わる。


あまり他の住人とは、話せないまま、パーティーから、三時間程経過し、徐々に住人は散り散りになってきた。



時刻はPM 22時15分



「じゃあ、そろそろお開きにしようか。」


オーナーの一言で、残っていた、大月、赤木、樽井、陽介は、二次会を屋上でする事になった。


今夜は祝いの席であり、無礼講だ。


オーナーはあっさり許してくれた。



樽井と、大月と、赤木はソファーに座り、

陽介は椅子に座った。


陽介が、居ない間に屋上はリフォームされ、ソファーや椅子の数が増えていた。


そして、金井との闘いで壊れたフェンスは、二重に改造され、リニューアルされていた。


「俺が居ない間に、こんなにも変わったんだな、、感慨深いな。」


 「そ、そうですよ、漆原さんが入院の間に、様々な事がありましたよ。」


「しかし、驚いたでしょう?漆原さん、まさかあんなに沢山入居してくるなんて、俺もビックリしましたよ。」


「ほんまやな、いちばんびっくりしはったのは、異国人やな、、アディティさん。」


 「本当に、住人の人達が一気に様変わりして、本格的にルームシェアしてるって、思えました。」


「知世さん、園田さんと、樽井 涼さんか、あの二人はカップルなのかな?」


 「あの二人は、幼馴染みらしいよ、たまたま、このシェアハウスにきはって、おうたらしい。」


 「そんな、偶然あるんですね、しかも、樽井君と同じ名字。」


「漆原さん、ルームシェアでは、珍しく無いんですよ、同じ名字が、被るなんて、俺なんか、前に住んでた所では、五人も、居ましたよ。」


 「凄いですね!、、恐るべしルームシェア、、」


色々語り合った、4人は、夜も更けて来たので、解散する事になった。



自部屋に戻った陽介は、今日新たに出会った住人達の事を思い出しながら、眠りにつくのだった。


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ここらは、俺がアイツに出会い、自分磨きに目覚めるきっかけまでの、2ヶ月間を振り返る事にする。


セカンドエピソード★1 『一生ファンやで』


大月知世の場合。


季節は梅雨、金井との騒動があってから、一ヶ月が過ぎた。


 とある日陽介は、知世に何も知らされないまま、屋上へ呼び出されていた。


 屋上へ着くと、いつものメンバー、赤木、樽井、それと、加えて、海原俊雄に、河西昇太が、勢揃いしていた。


「みんな、漆原君連れて来たで!」


 「どうしたんですか?皆さんお揃いで、、」


「あんな、これから皆でカラオケいこう、おももうてな、漆原君も行くやろ?」


「い、行きましょうよ、漆原さん。」


「漆原さんの歌声聴きたいです!」


 「聞きましたよ!、、歌上手いらしいじゃないですか!」


「誰に聞いたんですか?」


 「知世さん!」


「………また、、か」


「行きましょ、行きましょ、俺もグレープグレープ得意やから」


「梅雨やからって、こころまで、じめじめする必要ないやろ?、、とじ込もって無いでいこうや。」


「分かりました、知世さんが言うなら、、」


五人が、ステレオ調の如く話し掛けてくる

どうやら、知世のせいで大分尾ひれが付いてるらしい。


陽介は仕方なく、カラオケに行く事にした。



時刻はPM 12時



陽介達はカラオケ店に着くと、大月が代表してカウンターで、受付をした。


「いらっしゃいませ!、何名様でしょうか?」


 「アタシ合わせて6人や、フリータイムで

機種は、CAM で、一番広い部屋を頼むわ。」


「かしこまりました、では、一番広いフロアの505号室をご案内致します。」


流石、大月は、誰が相手でも、物怖じしない、自分のペースを貫いている。


それには他の皆も圧倒されていた。


部屋に着いた、6人は、ソファーに寄り掛かり、3対3でこの様に向かいあって座った。


赤木、樽井、陽介

海原、河西、大月



海原が、代表して皆の飲み物を頼む、

受話器越しに、注文を一人ずつ聞いて、


店員に頼んだ。


暫くすると、店員が部屋に入ってきて、


飲み物を、順に配る。


陽介は、コーラ、樽井は、オレンジ、赤木は、カルピス、海原、大月、河西共に、チューハイ


「あれ?、、漆原さん、呑まないんですか?

ここ、酒置いてありますよ。」


 「俺は、良いんだ、ジュースで、酒は苦手なんだ。」


「なるほど、じゃあ仕方ないな。」


海原は残念そうにしていた。


先ず、最初に歌うのは大月だ、手慣れた感じで、カラオケ本のページを捲り、お目当ての所で、


リモコンを使い、番号を入力した。


モニターに表示されたのは、ジョニーズのデュオのカントウキッズの曲で、優しくしたいけど、優しく出来ない。という、有名な曲だ。


 陽介は思い出していた、そういえば前に、諸星が言っていた。大月は彼等がデビューしてからの、ファンだと。しかも、その時に意味深な事を言っていた。


「確か、、俺が似てるって、言っていたな

しかし、何が似てるんだろ?」


大月は見事に歌い上げた、声量は申し分無い、ビブラートも、ただ、歌い方に癖が付いていた。


なんでも、カントウキッズの黒髪の片方の歌真似らしい。



パチパチ


拍手と共に、大月はステージから降りた。


実は通された部屋に、丸いステージがあった。


どうせ歌うなら、使ってみようと海原が提案したのだ。


次に、樽井が、アニソンを歌った。


曲はこれもまた有名で、深刻な堕天使のモーゼという曲だ。


赤木は、演歌を歌った、こぶしを利かせながら南の墓場という、聴いたことが無い曲だった。


河西は、宣言通りグレープグレープの、華を歌った。この曲は、緑白歌合戦で一躍有名になった曲だ。


そして、海原は酔いが回り過ぎたか、酔い潰れていた。


皆が歌っていく中、陽介は歌わずに、盛り上げ役に徹していた。


あまり人前で歌うことが無かったからだ。


そんな、陽介を見兼ねて大月が言った。


「漆原君、うたわんの?」


 「俺は、良いですよ、皆さん歌って下さい」


「ええから、歌ってや、リクエストがあんねん。、アタシ今日誕生日やから、歌ってや」


 「そうだったんですか、知りませんでした、、そういう事なら、俺歌いますよ。」


「せやな、カントウキッズの、俺の肩には翼がある、歌ってや」


「た、確かに歌えますけど、あれ、二人で歌う曲ですよ、、」


「ええから、ええから歌ってや」


 「わかりました」



知世は、リモコンを取り、番号を入力する。


陽介はマイクを右手に持ち、皆の方を向いて

歌いだした。


 騒がしかった、部屋が急に静まりかえった。


その理由は陽介の歌が下手ではなく、


その逆だった。


歌声がカントウキッズの黒髪の方にそっくりだったのだ。


「おもうたとおりやったな、声が似とるからひょっとしたらとおもうてん。」


 「ありがとうございました!」


パチパチ


「じょうずやったわ、漆原君の歌声似とったで黒髪の方に!」


 「そうなんですか?知らなかった、、

だから、諸星が似てるって。」


「せやで、アタシはファンなんやから、わかるわ。」


 「いつまで、続けるんですか?」


「一生ファンやで」




大月は満面の笑みを溢しながら言った


それを見て陽介は、ああ、この人も女子何だなと再確認した。


こうして、初めてのカラオケ会は無事終了した。


セカンドエピソード★1 終わり。


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セカンドエピソード★★2『ひと夏の経験』


海原俊雄&河西昇太の場合。



 その日陽介は、銭湯から帰って来ると、着替えて屋上へ一人涼みに行った。


暫くすると、そこへ、海原と河西が揃って来た。


 二人は、ソファーに座ると、陽介に携帯を見せてきた。


「漆原さん、これ知ってます?」


 「ん?なんだい?」


「これですよ~、今流行りの出会い系チャットの掲示板、メチャクチャええですよ」


陽介は携帯を見せてもらうと、そこには

メッセージのやり取りが、書かれていた。


「凄いでしょ、マジで出会えるんすよ、漆原さんもやりましょうよ。」



 「俺は、こういうのは、、ちょっと、」


「あんま深く考えなくて良いんですよ、ただのコミュニケーションの延長上だと思えば。」


「そうそう、やったらええですよ~、入れ食いやから。」


 二人は笑いながら、陽介に勧めてきた。


あまりにしつこいので、陽介も掲示板をやってみることにした。


 やってみて解ったが、掲示板にそれぞれ、ジャンルがあり、趣味、好きなものと、色々別れており、自分に合った場所で、チャットのやり取りをするらしい。



チャット画面は、Rin に似ていた。


早速陽介は、掲示板を使ってみた。


試しに、趣味の場所に行って、会話してみる。


{こんばんは}


 {こんばんわ}


{俺、今日が初めてなので、御手柔らかに。}


 {私も始めてまだ2日なので、、}


{そうでしたか、趣味の場所に来たけど、俺は、これと言って、趣味無いんですよ。}


 {そうなんですか?、私もあまり、これだ、という趣味は無いです。}


{あのう、お名前は、、私はリカです。}



{俺は、ユウスケです。}



{ユウスケさんですか、よろしくお願いします。}


{ユウスケさんは、どこら辺に住んでるんですか?}


突然、チャットのリカに、住んでる場所を聞かれた。


陽介は一瞬戸惑ったが、出会いを目的しているんだから、正直に言った方が良いと思えた。


{俺は、下野です!}


 {え?、、本当ですか!、私も下野です。}


 {こんな事ってあるんですね~}


陽介は、あまりの偶然に、ビックリした、こんなにもあっさり、近くの女性と知り合う事が出来たのだから。


{本当ですね、世間は狭いな。}


 {良かったら、会って話しませんか?}


{良いですよ、会いましょう。}


 暫く会話が続き、リカが就寝するというので、チャットを終了した。


陽介は久しぶりに、高揚感に満ちていた。


色々ありすぎて、男としての本能的な部分が疎かになっていたのだ。


「リカちゃんか、確か21だって言ってたな、どんな子だろう、可愛いと良いな、でも一番大切なのは、声だな!」


「そろそろ寝るかな、明日も早いし、、そうだ、海原君と、河西君に教えないとな。」


この頃の陽介は超が付く程の、声フェチだった。


特に、アニメ声に目がなかった。



次の日


 陽介が帰って来ると、待ち構えてた様に、海原と河西が、近寄って来た。


どうやら、昨日の戦果を聞きに来たようだ。


 リビングに連れて来られた陽介は、昨日のリカとのチャットを話した。


「おお!!、、漆原さん凄いじゃないですか、1日で、会う約束をするなんて!」


「ほんまですよ~、、俺なんか、、チャットでさそうても、全然引っ掛かりませんわ。」


 「意気投合しちゃってさ、今週の日曜日に会う事になっちゃってさ。」



「羨ましいっすな~、、俺なんて、始めて3ヶ月で、一人もあえへんのに。」


「運良いですね、勿論、フェードインしちゃうんでしょ?。」


「フェードイン?」


「いやだな、漆原さん、アレですよ、雄しべと雌しべ的な!」


「!」


 「あ、アレか、うーん、まだ会っても居ないし、、いきなりそんな展開には、ならないんじゃないかな。」


「わかりませんよ~、今の子達はノリが良いから!。」


「まぁ、報告まってますわ~、、しかし、ほんまに、うらやましいわ。」


河西は終始羨ましいと口ずさんで、去っていった。


すると、珍しく海原が、河西と離れ、陽介に、何やら相談があると言って、屋上へ向かう事になった。


屋上に着くと二人は笑いながらソファーに座り、神妙な面持ちで、海原が、陽介に相談し始めた。


「あのう、漆原さん、相談がありまして、実は俺、今『キャバクラ』で、バイトとしていて、そこの店員が、足を骨折したので、人手が足りなくて困っていて、もし良かったら、手伝ってくれませんか?」


「勿論、給料出ますし、何より、可愛いキャバ嬢が沢山居て、目の保養になりますよ!」


 「なるほど、事情はわかったけど、俺は昼間働いてるから、何日も出られないからね。」


 「手伝えて一週間かな、それ以上は無理。」


「あ!ありがとうございます、じゃあ、明日の夕方に面接をしてきてください、話は店長に通しておきます。」


 「わかったよ、必要な物は、身分証と、履歴書だけどいいのかい?」


「はい、後、ワイシャツにネクタイです、よろしくお願いします。」


陽介はひょんな事から、海原からキャバクラの店員をする事を頼まれた。


陽介はお人好しであり、それが、長所で、短所だった。



時刻は18時、陽介の姿は、一軒のとあるキャバクラにあった。


海原に頼まれたバイトの面接に来たのだ。


キャバクラは初めて訪れる、会社の付き合いで、誘われるが、毎回断っていた。


 陽介は店内に入ると、黒い服を来た男に案内され奥へ。


目の前に赤色のソファーが見え、そこには、


 テレビドラマに出てくる様な、まるで絵を描いたような、任侠、強面のスーツ姿の男が待っていた。


「海原から聞いてるよ、君、手伝ってくれるの?」


 「は、はい、その為に来ました。」


「おう、いいね、やる気はあるみたいだね。」


「ふむふむ、なるほど、下野駅から近いんだな、、、うんうん、、そかそか、、」


強面のスーツの男は、根掘り葉掘り陽介に聞いた、絵面で言えば普通は逆の立場で、これが取調室だったら尚の事だった。


「おーし、分かった、、漆原君、採用だよ、明日の夕方から頼むわ。」


 「はい!、、頑張ります。」


 陽介は店を出ると、やっと緊張感から解放された。


ここだけの話、スーツ姿の男が言うには、金を取って、逃げてしまう店員が居る為に、何枚も写真を撮るという。


 実際陽介も何枚も撮られた。


悪用などされないだろうか?


とにかく別の意味で疲れた。


 面接から帰ると、海原に報告し、店のルールを教えてもらい、陽介は頭に叩き込んだ。


自部屋に帰ると、リカとのチャットをした。


普通の掲示板チャットではない、個通だ。


 相変わらず、やり取りが可愛い感じの子だった。


陽介は、段々、リカに興味が沸いてきた。



「日曜日が楽しみだ、それには、キャバクラのバイトを終えないとな。」



陽介は、楽しみを胸に抱きながら、就寝した。



 それから、日曜日までの陽介のスケジュールは大変だった。


17時30頃に会社から帰宅、18時にキャバクラ。


この繰り返しだ。


 しかも、帰りは、深夜3時、下野駅からは、


徒歩15分の所に店があった為、残業させられていた。


キャバクラの仕事は、過酷そのものだった。


タイムカードを切ると。


直ぐに朝礼の挨拶。


五つくらい 社訓を言う。


陽介がビックリしたのは、キャバ嬢達は朝礼に参加せず、ソファーにもたれ、ふんずりかえっており、中には携帯を弄る嬢も居た。



そして、長い夜が始まる。



キャバクラでは、店員の事を、ボーイと呼ぶ。

ボーイの仕事は内容は、客の案内や、吸い殻の始末、客に頼まれ、タバコ等を買いに行くこと、様々だ。


陽介が悪戦苦闘していると、何やらトラブルが起きた様で、席にヘルプで来ていた嬢に、客が嫌がる行為をしたらしいので、陽介が、止めに入った。


「お客様、この様な過度な触り行為は禁止されておりますので、お止めください。」


 「う、うるせぇな、これくらいいいだろ?」


「店のルールなので、申し訳ありませんが、、」


 「わ、分かったよ、、気分悪いな」


「あ、ありがとうございます、助かりました、あのお客様しつこくて。」


 「いえ、仕事ですから」


「私、『花梨』って言います、今度何か奢らせてくださいね!」



 「はい!、是非」


 この様にトラブルも絶えない。


そんな中、陽介はキャバ嬢の花梨と食事をする約束をしてしまった。


しかも、日曜日。


 陽介は焦っていた、何とか時間で二人相手にする事は出来ないかと。


激動の日はあっという間に過ぎて行き、日曜日を迎えた。


陽介は何とか花梨との食事を18時に、


そして、リカと会うのを、21時に、バラけさせた。


PM 18時00分


 陽介と花梨は駅で待ち合わせ、『ソイダリア』に入店した。


ファミリー向けのレストランだ。


 内装は清潔感があり、店内には、飲み放題用の機械が置いてある。


 本当は、居酒屋に花梨は行きたかったらしいが、陽介が、酒が弱いと知り、店を変えてくれた。


「すいません、俺の為に、呑みたかったですよね?」


 「良いんですよ、気にしないで下さい、本当にあの時は助けてくれてありがとう。」


「いえ、いえ、しかし、凄いですよね、ああいうお客さんも来るみたいだから、絡まれたりすると大変だ。」


 「あんなの、まだましですよ、酷い時には、お客様同士で喧嘩するんですから。」


「花梨さんは、この仕事始めてどれくらいに成るんですか?」


 「私は、2年になります、田舎から出てきて、都会に来たんですが、上手くいかなくて、そんな時、店長に出会って、スカウトされたんです。」


「あの店長か~、、確かにスカウトマン似合いそうだな。」


 「でも、もう辞めようかなって。」


「どうしてですか?」


「実家の母親が病弱で、いつ逝ってもおかしくない常態で、せめて少しも側に居たいなって。」


 「なるほど、、、分かりますよ、俺も、ばあちゃんを亡くしてますから。」


「ガキの頃は悪態ばかり付いて、気が付いたら、、なにもしてやれず、逝ってしまいました。」


 「そうだったんですね、、」


「だから、花梨さん、俺は賛成ですよ、辞めて、お母さんの元へ帰るのは。」


 「ありがとうございます、考えてみますね、漆原さんは、優しいですね、もっと早くに会いたかった、、」


「臨時のバイトなので、もう辞めちゃいましたが、楽しかったですよ、花梨さんも、仕事頑張って下さい。」


 「今日はありがとう、勇気出たわ。」


「良かったです、では、俺はこれで、花梨さんお元気で。」


陽介と花梨は、店を出て、別れの挨拶をした。


本来交わる事の無い二人が出会い、そして、別れた。


 陽介は急いで、リカとの待ち合わせである、


下野駅改札口に向かいながら、心臓をドキドキさせながら、出会い系で初めて会う女、しかも、一週間足らずのやり取り。


お互い顔も知らない。


ただ、連絡手段は個通チャットのみ。



時刻はPM 21時00



 携帯を見ると、約束の時間だ。


目印は改札口近くのコンビニにした。


陽介は、じっと待ちながら、改札口を見ていた。


 降りてくる女性が、皆、今日会う、リカに見えて、大変だった。



時刻はPM 21時30を回っていた。


 いくら待ってもリカは現れない、陽介は騙されたんじゃないかと思った、海原の話だと、出会い系には女の振りをした、男が居るらしい。


 通称『ネカマ』と呼ぶ。


それに引っ掛かったのかもしれない。


そう思うと、急に馬鹿しくなってきたので、帰ろうとした、その時、背後から声を掛けられた。


「あのう、もしかして、ユウスケさん?」


一瞬、陽介は戸惑ったが、ネカマじゃないと

確信出来たので、また、心臓がドキドキし始めた。


「は、はい、そうです。」


陽介は後ろ向きに、返事をした。


すると、リカらしい人物が、回り込んできた。


「!」


陽介は驚いた、急に回り込んできたからではなく、リカと名乗る、女の正体に。

よく時が止まるという、表現があるが、まさに今、それが起きていた。


そして、向こうも、驚いていた、こんな偶然があるのか?と。


いや、今思えば必然だったのかもしれない。

お互いに見知った相手だった。


そう、陽介が驚いた理由は、なんと、先程別れた、花梨だったのだ。


つまり、リカとして待ち合わせたが、来たのが花梨、、同一人物だった。


暫しの沈黙の後、花梨?リカ?から笑みがこぼれ、陽介も釣られて笑った。


「また、会っちゃったね。ユウスケ君。」


「そうだね、リカさん。」


二人は大笑いし、一気に緊張が嘘の様に無くなり、もうどうでもよくなってしまった。


 「ねぇ、チャットで話してた事、今からしよう?」


「マジ、、ですか?、、」


 「嫌なの?」


「いや、、こういうのは順を追って、仲良くだね、あれがこうして。」


 「ふふふっ、、ユウスケ君おっさん臭い。」


 「いいから行く!、宜しいですか?」


「は、、い、」


陽介は、リカに強制的に連れられ、ラブホ街へ目の前から、カップルが何組か通り過ぎて行った。


陽介の心臓はさっきから、ドキドキしっぱなしだった。


「さぁ、着いたわよ、観念なさい!」


リカはまるで子供を叱る様に、人差し指を、立てながら、前屈みになった。


陽介は、つい本能的に見てしまったのだ、胸元を。


その時、下半身に血液が集まるのを感じた。


「入るわよ、、あ!、、この部屋にしましょう。」


 「う、うん、そうだね、そうしよう。」


 部屋に入ると、一面ピンクで、ファンシーな感じに装飾された、鏡や、ベッドがあった。


陽介は{あれ?こんな感じだったっけ?、もっとこう、エロティシズムに満ちた部屋を想像したんだけどな○Vではそうだった。}


「シャワー先入るね、出たらユウスケ君の番ね、、」


シャー


「シャワーの音が聴こえる、、ドキドキが止まらない、、何年振りだろうか、上手く出来るのだろうか、、予習してくればよかったー!」


「ここまで来た以上、、覚悟を決めないと

据え膳食わねば男の恥と昔から言うし、オレの下半身に聞こう、、出来るか?」


出来るよ!


「ん?、、微かに聴こえたぞ」


「よーし!やろう、やるしかない」


 「ユウスケ君、シャワー入っていいよ。」


そこには、バスタオル一枚のリカの姿があった、その姿に下半身はMAXまで元気になっていたのだ。


「わかった、、入って来るね」


シャー 


「ああ!、、ああ!!、、気持ちいなシャワー、、これからもっと、、気持ちの良い事が、、」


陽介がシャワーに入って、15分経ち、ようやく出てきた。


「ユウスケ君遅い!」


「ご、ごめん、緊張しちゃってさ。」


 「ん、、可愛いから許す///。」


リカはそういうと、一気に陽介のバスタオルを剥ぎ取り、陽介はベッドに押し倒された。


良い匂いがする、シャンプーの匂いだろうか。


女独特の甘い香りかもしれない。


リカは陽介を攻め続け、そして、、陽介が責める番になった。


リカの胸が丸見えだ、陽介は大の胸好きだった。


おっぱいが好きなのだ。


{さぁ、男を見せろ陽介!、小説が発禁しようが、規制掛かろうが、作者が叩かれようが、どうでもいい!据え膳食わねば男の恥!据え膳食わねば男の恥と知れ!}


陽介!いきまーーす!


『──────!?』


陽介はリカの濡れた臀部を優しく、、


「ちょーっと待った!、これこういう小説じゃないから、そういうの求めてないから!

愛と友情と、努力と、正義と、成長と、あとあと、色々混ざってるから、、今君がしようとしてるのナニが混ざるから、雄しべと雌しべ、でフェードインして、色々交ざるから、ソレダメ絶対駄目、よいこのみんな見てるから!!」




「はい!ということで、一旦CMでーす。」



天の声のお陰で、大事には至らず、陽介の長い夜は人知れず終わった。


時刻AM 10時00


二人はホテルから、チェックアウトすると、

今度こそ、別れた、もう会う事も無いだろう、それは、一夜限りの関係だったに違いない。


 今日は、祝日ということで、会社は休みだった、あの後、真っ直ぐマンションに帰り、

少し仮眠を取った後、海原に呼び出された、


 事の事情を知ってた、海原は、花梨が店を辞めて実家へ戻った事を陽介に告げた。


きっと、昨夜の事で、決心が着いたのかもしれない、陽介はリカ、いや、花梨の力になれたんだと、胸を撫で下ろした。



一方詳しい事情を知らない、河西はというと。


「と、言うことなんだよ、、」




 「ほんまですか!、、フェードインしたんですか!、、ええな!、ええな!」


 「漆原さんだけずるいですわ、、俺もやりたいですわ、、ひと夏の経験したいですわ」


「知世さんにすれば?」


 「もう、知世さんでもええですわ、フェードインしますわ!」



陽介と海原は呆れて笑っていた、でも、今でも思い浮かぶ、リカが見せた憂いの表情を、あの夜重ねた、想いは忘れないだろうと。


「ひと夏の経験か、、、」


セカンドエピソード★★2  終わり。


════════════════════


ここまでが、アイツが来る2ヶ月前の出来事だ。他にも色々合ったが、また次の機会に語ろうと思う。



残暑厳しい、とある日、新しくマンションに


新人が入居してきた。


その頃陽介は、会社に居て、マンションにはオーナ夫婦間しか居なかった。


「いらっしゃい、待っていたよ」


「あらあら、もう、いらしたのね」


オーナ夫婦が出迎える


「今日から、お世話になります、清瀬 終二です!、宜しくお願いします。」


「清瀬君ね、君の部屋は、一階に新しく作った、プレハブ小屋だから、食事の時はリビングに来てね。」


「じゃあ、清瀬くん宜しく頼むよ。」


「はい!、、お願いします。」


オーナ夫婦と別れた清瀬は、自部屋に入ると、荷物を片付け、屋上へと足を運んでみた。


「うーん、、良い天気だ、快晴だな~、、

さてと、、ここに居るのか、、○○さんは、、早く会いたいな~」


清瀬は空に向かって語るように、ニコニコしながら誰かを待ちわびている様子だった。


この清瀬がこの後とんでもない事件を引き連れてくるとは、陽介は未だ知るよしも無かった。


═══════════════════

さて、如何だったでしょうか?


セカンドエピソードを加えた二本立てで

お送りしましたが。


この清瀬が来た事により、物語は中盤に差し掛かります、次の話から、陽介が自分磨きのきっかけを、、教えてもらいます。


楽しみにして下さいね。


そして、物語は、、運命の示す道へ

ゆっくりと、、


それでは次の話で、お会いしましょう。

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