第4話 はじまりに真実

守田に初めて出会ったのはサークルの新歓だった。


競技人口の少ないマイナースポーツの新歓は、参加人数も少なく、運命ではなく必然的に席が近くなった。実際に来ていたのは、俺と、俺に誘われ着いてきた上野、守田のほかは2,3人いるかいないかといったところだったはずだ。

俺はこの時点ではフットサルサークルへ入ろうとなんとなく決めており、完全にタダ飯が狙いで新歓に来ていた。


一方で守田は小学生の頃から競技経験があると言い、そのことに先輩方は歓喜し絶対に入部させようと手厚く取り囲んでいた。

そのせいで俺の席からは守田の顔なんてほとんど見えず、声がたまに聞こえるくらいだった。だけどもその声が初めて耳に届いた瞬間から、何故だかはわからないが不思議と、幸せという概念ががもしも人間の形を得て喋り出したらこんな声をしているんじゃないか、と思ったのを覚えてる。

飲み物を取りに行く、と誰かが席を立ったその一瞬、俺たちの間に隙が生まれた。目が合った瞬間、ものすごい早業で俺は心臓を掴まれた。そして、本当に急に守田は俺に話しかけた。

「黒岡くん……だっけ? は、サークル入る?」

その時俺は初めて守田の顔を見たんだ。

タイプだった、とかそんなやわな話じゃない。何故か目が合って守田の顔を見たその瞬間に、人生を悟ったのだ。守田をこの手で一生幸せにすることは俺の最重要確定事項であり使命である、と脊髄が反射した。生まれて初めての一目惚れ。これが一目惚れか、という感動。

脳が心臓が目が肌が、この子を絶対に手に入れて、生涯、いや来世まで手放すな!とヤジを飛ばし、応援歌を奏でる。

「今すぐ入る」

先輩達は棚からぼたもち新入生の勧誘成功に喜んだ。


それが、ほぼ一年前の話。



◆  ◆  ◆



「黒岡くんご飯まだだったらさ、一緒に買いに行かない?」

あれ。

俺また死んだ気がする。

「行く行く!」

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