第27話 死神の答え合わせ
ああ!ちくちょう!
卑怯なやつだ!
俺様は腹が立って仕方なかった。とても、とてもだ。あいつはまんまと俺様の大事な莉子を手に入れたつもりでいやがる。
コウカツで卑怯なクソ野郎。
「なんでいつもみたいに殺らなかったんだよ」
同期の死神がだらんと長い両手を垂らして、興味がないくせに聞いてくる。
やつは中学生までは生きていたから、手足がすらりと伸び、体つきも長い。そいつを見るといつも、そこまで成長できたのが羨ましい限りだと思わされるムカつくやつ。
「お前は俺様よりも成長できたくせにバカなんだな!」
同期は俺に何を言われても気にならないようだった。ガキに言われることを普通まにうけないだろうと以前言われたことを、俺様は許さない。
「あのタイミングで殺したって、あいつはダイブ前に戻っちまう。あいつがダイブしないと莉子が死ぬ。そうゆう状況をあのクソ野郎は利用しやがったんだ!」
「利用とかそんな器用なことできるやつに見えないけどな」
そんなことはどうでもいい。
現に俺様は、あの蛆虫野郎は気がついていないようだが、なんどもあいつを殺したのだ。
ダイブをして、あいつが莉子に好きだのなんだののたまうタイミングで。
時間の調整をしたり殺し方を変えたり、俺にできることは思いつく限り、全てした。それにも関わらず、ことごとく失敗したのだ。
……そもそも俺様の声は莉子には届かない、誰にも認識されず、関わることができない。
人の命を奪うことしか能がない、そういう存在なのだ。
そのことを改めて思い知らされた。
でも、俺様には諦められない理由もあった。
でも、結局なにもできなかった。
身体中の血液が逆流して、震え出して、目頭に熱が集まって来て、それが冷めた時。
俺は、もうどうやったって不可能だと悟った。
莉子を救えるのは俺様ではなく、生きているあいつなのだ、と。
決着がここに着いたのだ、と。
「で?結局お前があの男を邪魔し続けた理由ってなんなんだよ」
「……莉子の幸せのためだよ」
その理由を話すのは。
俺様がもう少し足掻いたあとだ。
それまであいつの記憶は預かっておこう。
後戻りができない、そう思った時まで。
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