第23話 負け犬の勝ち方

先生は本当に誰も好きにならないのだろうか。

漫画や小説だと、そういう人は運命の相手に出逢って変わるのだ。でもジェンダー論だと、そのままの価値観に沿った幸せを手にするべきのだ。上野先生は物語の人物か、それとも。

じゃあそんな人を好きになってしまった私は?


性欲がないわけではないのは私にとって救いだ。その隙に勝算が見えるかもしれない。肌を重ねるうちに、情も温まってくれたりしないだろうか。

なんて。こんな期待の仕方は自分の首を絞めることは重々承知。それでも悲しいほどに一夜ごと期待してしまう。


私だって、こんなに人を好きになれるなんて知らなかった。自分からこんなに心惹かれる思いをするのは、それなりに生きてきて初めてで。燃え上がる恋なんてフィクションのもの、恋愛なんてファッションの域を出ないものとさえ思っていたのだ。

そして、きっとこの先にこの気持ちを上回ることもないでしょう。

こんなに私の価値観は変わったのだから、先生はそうじゃないって言い切れない、諦めがつかない。


恋愛って、小説の中みたいにきれいで美しいことの方が少ないんだよ。編集部の先輩が飲みの場で自分の失恋と一緒に語った言葉。そっくり自分に帰ってくるなんて。

好きになった方の負け試合。それをひっくり返せればあなたはヒロイン。


私ができるのはもはや泥仕合のみ。

まだきれいなうちにカタをつけたいとこだけど。


それが、片思いをしている私たち恋愛ディスアドバンテージの、負け犬の勝ち方。

そうでしょう、同胞。そうでしょう、黒岡さん。


私たちの勝ち筋はただ一つだけ。


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