第19話 死神の正体見たり

「おいしい!」

ワンプレートにご飯とサラダと一緒に載っているハンバーグを食べて、守田が満足そうな顔をする。幸せが俺まで伝搬し、満たされて行く気がした。

時間が撒き戻りバイトが終わった守田と合流した後、切腹をしなかった俺はファミレスで二人でハンバーグを食べられる。おいしさも格別だ。


このレストランにいる誰もさっきまで俺が自分で内臓ぶちまけマンだったなんて知らない。


ぶちまけマンが得たことは沢山あった。

一つは、死神は俺が守田を幸せにできないとして殺したこと。

確かに俺は平々凡々の人間で、実家も別に太くないし、何か強みは?と聞かれてもプールで25m泳ぎ切れます、くらいしか言えない浅い人間だ。

でも真面目に生きてきたつもりだ。胸を張れないようなことは生まれてこのかたしていない。強いて言うなら未成年飲酒くらいだけど、守田だってしていた。

それなのに死神のあの言いようには、さすがの俺もムカっ腹が立つ。


そしてもう一つ。


余談として、かつてDNA検査なんてない時代には、親子関係の証明として使われたと言うが。人間の耳の形は遺伝と強く関係があるという。

「急だけど守田って、弟いる?」

「……弟?いるよ」

死神の髪をかき上げた時に見えた耳。その形は守田のそれと瓜二つだった。


守田の予想通りの答えに、心が大喜びした。まぁまぁ落ち着けと宥める。

守田の弟と死神には何か関係があるはず。

あくまでも俺の予測だが、聞き出せることは洗いざらい聞き出したい。

「守田と弟って仲良さそうだよね。絶対いいお姉ちゃんだろうし」

「そう?生意気だし、私一人暮らしだから最近会ってないよ」

「どんなこなの? 見た目とか、性格とか」

「見た目は……普通?性格も、そんな特別じゃないよ」

「今いくつくらい?」

「六歳だよ」

年齢はドンピシャだ。核に迫った。ドーパミンが全開で全身がびしゃびしゃだ。

俺はさらに前のめりになる。

「へぇ!じゃあ趣味とかは」

「前はよく一緒にゲームとかしたけど」

「最近なんか変わったとことかない?」

「え……あんまりわかんないや。ていうかそんなに気になるの」


咳払いをして椅子を引き直す。

ちょっと聞き方が不自然すぎた。守田は不可解なものへ向ける視線を俺へ飛ばしていた。確かに同期から急に弟へ熱めの興味を持たれたら気味が悪いだろう。

これ以上聞いて守田に嫌がられる危険を冒す必要はない。そう思った時に。

「そんなに気になるなら明日の昼ちょうど弟に会うけど、一緒に来る?」

「え!いいの!」

渡に船だった。乗らないわけがない。

俺の即答っぷりにに守田は声を出して笑った。

「ほんとに?そしたら明日の十一時に駅で待ち合わせよう」

「電車で行くってこと?」

「そう。私のこと育ててくれた叔母のうちに行くの」

「え。……えぇ?」

それってひょっとしなくても俺が守田の家族に紹介されるってことだ。

スポーンと頭のてっぺんが抜けて宇宙が広がって行く心地になる。


そんな関係どう考えても同期よりも友達よりも上じゃん。なんていって俺のこと紹介するつもりなんだろう。

「俺たち付き合ってないよね」

「うん。付き合ってないよ」

「やっぱりそうだよね。付き合ってください」


俺はファミレスの向かいのビルに潜んでいたスナイパーに、標的と誤認されドタマをぶち抜かれて死んだ。






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