第150話

「地下にこんな空間が…」


カズキ達は地上と変わらずに生活している住人達を見つめた。


そこには色々な人種の人達が集まっていた。


「ここにいるのはみんな何らかの理由で国を追われた奴らだ…カズキのようにな」


フールが悲しそうに町の人達を見つめた。


「こんな光のない地下で暮らしているのはこの国に何処にも行き場がないからさ…本当ならみんな外で堂々と暮らしたいと思っているはず…」


「でも明るいよ?」


エイトは外と変わらずに明るい事に首を傾げると


「それは魔法で照らしているんだ…この地下には魔法陣が書いてあってここに住むみんなから少しずつ魔力を集めているんだ。それを使って光で地下を照らしているんだ」


「すごい!そんな魔法陣よくかけたわね」


「まぁ…色々とツテを使ってな」


フールが言いにくそうに言葉を濁した。


「町の案内は別にいいよな?遊びに来たわけじゃないだろ?」


「ああ…」


カズキは頷くと


「じゃあ早速人を集めて作戦会議だ!カズキが来たならすぐにでも攻め込める!」


フールが興奮したように拳を握りしめた。


「わかった。子供達は疲れてると思うから何処か部屋で休ませて貰えるか?」


「ああ、好きに使ってくれて構わない。おい!子供達とナナミも部屋に案内してやってくれ」


フールが笑うと近くにいた女の人に声をかける。


「あら、私は作戦に参加するわよ」


「ナナミは戦わなくてもいいんだぞ!その分俺がやるから」


カズキが心配そうにナナミの手を掴むと


「あら、私だってそれなりに戦えるわよ」


ギュッとカズキの手を握り返した。


「そりゃ知ってるけど…ナナミにはもう無理をして欲しくないんだ」


「カズキ…優しいのね。でも仲間を回復するくらいなら私にも手伝えるんじゃない?」


「そうだな!回復役がいてくれると助かる」


フールが頷くと


「それならある程度作戦は聞いておかないと…エイト一人で大丈夫?」


ナナミが心配そうにエイトを見ると


「クイーンとジャックがいるから大丈夫!」


クイーンの手をしっかりと握って安心させるようにナナミに見せた。


「大丈夫みたいね、クイーンちゃんとジャック、エイトをよろしくね」


ナナミはエイトとクイーンの頭に優しく手を置いた。


「うん!」


「ではこの子達は部屋へ連れていきますね」


女性が声をかけると


「よろしくお願いします」


ナナミはコクっと頭を下げた。


「こちらにどうぞ」


女性が笑ってエイト達を案内する。


カズキは楽しそうに周りを見ながらついて行くエイト達をみて微笑んだ。


「じゃあ子供がいなくなったところで俺たちはこっちだ…」


フールが子供達とは反対側に向かって歩き出した。


町の中心にある大きな建物に来るとそこに入っていく。


部屋に入るとかなり広い空間にもう人が集まっていた。


「フール!勇者様が来たって聞いたが、どの方だ!」


「勇者様が来たってことはいよいよなんだよな!?」


「やっとあいつらに復讐できる!」


部屋に入ったフールの顔を見るなり町の人達が詰め寄ってきた。


「みんな慌てるなよ!ほらこいつが勇者カズキだ!」


そう言ってフールは笑顔でカズキを指さした。

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