第149話

ラネットとカズキのおかげですぐに拠点に辿り着いた…が、そこは荒れ果てた覇気のないただの村にしか見えなかった。


「ねえ…本当にここが拠点なの?」


ダレンが訝しげにラルクに聞くとラルクはそう聞かれるのを待っていたかのようにニヤリと笑った。


「おーい!勇者様を連れて帰ったぞ!」


ラルクが廃墟に向かって声をかけると…


キィ…


壊れそうな音を発しながら扉が開いた。


「久しぶりだな!カズキ!ナナミ!」


「フール!」


カズキは扉から出てきた男に笑いかけた!


そこにはかつて一緒に魔王を討伐した仲間のフールがいた。


カズキとフールは懐かしそうに抱き合うと…


「フール久しぶりね」


ナナミも嬉しそうに微笑んだ。


「なんだか大人数だな!あれ?子供もいるじゃないか…」


後ろにいたエイトとクイーンを見つめると


「フール、紹介する。俺の息子のエイトだ!隣の女の子はクイーンだ。こちらのラネットの娘だ」


「よろしく…」


ラネットがじっとフールを見つめた。


「みんなこれからの作戦に賛同してくれている。カズキがいれば勝ったも当然だけどな!」


ラルクが嬉しそうにカズキの肩を叩いた。


「まぁ話は中で聞こう」


「そんな狭くてボロい小屋に入れるの?私汚れるのは嫌よ」


ダレンが顔を顰めると


「あーこいつはダレン…まぁ味方だから」


ラルクが紹介すると


「仲間が増えるのは大歓迎だ!それに…心配無用だぜ、理由は入って見りゃわかる」


フールは得意げに笑うとみんなを中へと案内した。


カズキ達は小屋の中へと入るとそこはなんでもない普通のオンボロ小屋だった…


「何よ!思った通りじゃない!」


ダレンが文句を言うと


「まぁまぁ本番はこの下だ」


そう言ってフールは床下を指さした。


みんなで下を見るとうっすらと亀裂が見えた…


「これ…扉があるよ!じいちゃん」


エイトが床を触ると


「よくわかったな坊主!開けるから少し離れてくれ」


フールが声をかけると床に着いた取っ手を引っ張った…そこには地下へと続く階段が現れた。


「さぁどうぞ」


フールが階段をみて指を指すと…


「行こう」


ラルクを先頭に階段を降りていった。


長く続く階段をエイトはクイーンと手を繋ぎながら降りていく…


途中途中にある松明がうっすらと明かりを作るがそれ以外は真っ暗だった。


「エイト…何か見えてきたよ」


クイーンが先を指さすがエイトには何も見えない、クイーンには暗闇でも問題なく見えているようだった。


「クイーンすごいね!何が見えるの?」


エイトに褒められて嬉しそうに頬を赤らめるクイーンは先を見つめると…


「なんか明かりと…声が聞こえる、それもたくさん…」


「たくさんの人?」


「さぁもうすぐだ!」


するとラルクが後ろを振り返って微笑んだ、そして階段を降り終えて少し進むと…


「こ、こりゃすごい…」


カズキはその光景に目を見開いた!


そこには地下にも関わらず光があり、人々が普通に家を建てて生活している、普通の町が存在していた。


「王都撲滅を誓った奴らの住む場所、地下都市ルクマイカだ!」


エイトは始めて見る光景にポカーンと口を開けていた。

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