元勇者のおじいちゃんに育てられた子供は普通じゃありません

第127話

「えっ？じゃあこの子飛べないの？」

エイトがドラゴンをそっとヨコにすると包んできた布をかける。

「うーん…なんとも言えないな…」

「じいちゃん…僕この子がちゃんと飛び立つの見ててもいい？」

エイトがじっと見つめると

「わかった…じゃあまだ起きないだろうから飯食ってこの近くで寝るようにするか？」

「うん！」

エイトとカズキはとりあえずまだ気を失っているドラゴンの子供をおいてナナミ達の元に戻った。

渋るみんなをカズキが一緒に行くからと言う事で了承するとエイトとカズキは二人ドラゴンの様子を見に行った。

「いいか、これでもういなかったら諦めるんだぞ」

「うん！それなら僕も安心だよ、ちゃんと自分で飛べたって事だもんね」

エイトは笑顔で頷いた。

しかしそんなエイトの願いも虚しくドラゴンはその場から動いた様子はなく、そこにいた。

「じいちゃん…」

「うーん…」

心配するエイトの顔に二人で近づいて見ると…

ビクッ！

「シャー！」

ドラゴンは二人に気がついて威嚇する！

どうやら意識は戻っていたらしい…

「よかった」

ほっとするエイトを連れてカズキはドラゴンから離れると

「いくら子供と言っても危ないからな、離れて見るんだぞ」

「はーい！」

カズキとエイトは木の上に簡易寝床を作るとそこに横になった。

後ろからカズキに抱かれながらドラゴンを見ながら寝ているがドラゴンが動く気配はない…

「動かないね…やっぱり飛べないのかな？」

「まだ休んですだけかも知れないぞ、ほらじいちゃんが見とくからエイトは休め」

カズキに頭を撫でられるとエイトの瞼は重くなってきた。

エイトが寝入ると、体がポカポカと温かくなる…エイトの温もりにカズキもいつの間にか寝てしまっていた。

すると魔物の気配にカズキはハッと目を覚ます！

見るとエイトが起きていたようでハラハラとしながら下を覗き込んでいた…

「エイト…」

名を呼ぶと

「あっ！じいちゃん…どうしようドラゴンのところに魔物がきたの…」

エイトの言葉に下を見ると、確かに大きな魔物がドラゴンを木に追い詰めていた…

「シャー！シャー！」

牙を出して威嚇するが魔物はジリジリとドラゴンとの間合いを詰めている。

「飛んで逃げない…って事はやっぱり飛べないみたいだな…」

「じいちゃん…助けてもいいかな」

エイトがチラッとカズキを見ると

「俺がやろう」

「大丈夫！あのくらいの魔物なら僕でも倒せるよ」

「そうか？まぁ気をつけるんだぞ」

カズキが心配そうに言うとエイトは笑って頷いた。