第116話

安心したように腕の中で眠るエイトを抱きながらカズキはジャックとラルクの元に戻ってくると…


「仲直りしたのか?」


ラルクが苦笑しながら聞いてくる。


「ああ…」


カズキが寝ているエイトを膝に抱きながらラルクのそばに座ると、エイトの寝顔をみて頭を撫でる。


「俺と一緒がいいんだと…」


嬉しそうに笑っていると


「どう見てもそうだろ?何を見てたんだよ」


ラルクが呆れるとジャックもそうだと頷く。


「い、いや…あんまりにも楽しそうに村の事とかお前の事を話すから…やっぱり色んな人と関わって育った方がいいのかと思って…」


「そりゃそうだろ!理想は色んな奴らと関わりをもって社会を学んで大人になるもんだ、お前とナナミと少人数の人と暮らしてるエイトは社会には適応してないと思うぞ」


「こんなにいい子なのに…」


カズキが項垂れると


「それはわかってる。しかしあまりに素直で周りを信じすぎてるぞ、それに戦闘に関してだけは桁違いに他の子より優れてる…アンバランスすぎるんだよ」


「だ、だが…外で生きるならあれくらい戦えないと…」


「ならそれなりに外の奴らに合わせられる悪知恵も与えてやれよ」


「エイトにそんなことを教えられるわけないだろ!」


カズキが言い返すと


「じゃあずっとここで閉鎖的に暮らせばいい、だがな今はまだガキだからいいが大人になったらこのままじゃいられないぞ」


「じゃあどうすれば…」


「お前達が町に住めばいい」


ラルクが提案するとカズキが顔を顰める。


「そんなことをすればすぐにでも国の奴らが俺達を捕まえに来るだろ。そうなりゃエイトにも何かされるかもしれん…それだけは許さん」


「それだけど…よかったら俺たちの町に来ないか?ある程度身を隠せるしお前達の身柄を隠しながら暮らして行ける環境はあるぞ」


「…なんか用意がいいな…なんでそんなことを環境があるんだ」


カズキがじっとラルクを見つめると。


「元からお前達が住めるように整えてたんだよ…やっぱりお前達が隠れて暮らすなんて納得出来ないからな」


「ラルク…」


「シエルも町でお前達が来るの待ってるんだぜ」


ラルクが笑うと


「シエルも?お前達…あの日からずっと動いていてくれたのか…」


カズキが驚くと、ラルクはきまり悪そう顔を逸らす。


「お前が俺達を逃がしてくれたんだろ、それにやっぱり国王の奴らは許せん…このままではこの国は終わる」


「どうでもいい、こんな世界終わればいいさ」


カズキがふんと笑うと


「でもそんな終わった世界でエイトは生きていかなきゃならないんだぞ」


ラルクの言葉にカズキはハッとして幸せそうに眠るエイトの寝顔を見つめた。

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