第50話番外編

番外編です。


エイトの母親のその後の話ですが少し不快な表現などがあると思います。


暴力的なものが苦手な方は飛ばして下さい。本編とは関係ないので…



いつもお読みいただきありがとうございます。










女は遠吠えが聞こえると嫌な予感に隠れる場所を探し出す。


さっきの馬鹿強い男に比べたら魔物など撒けるだろうとタカをくくっていた…


腰が抜けて這いずりながら進んでいると地面から何かが近づいて来る振動が伝わってくる。


あそこまで…


どうにか岩場に来ると岩を掴んで力を入れて起き上がる!


よし!どうにか立てる!


もつれる足を右左と前に動いていると…


「グルゥゥ…」


魔物の声がすぐ側で聞こえる!


バッと振り返ると…


「ガッウ!」


野犬の様な魔物が女目掛けて襲いかかってきた!


「ギャッ!」


思わず手で顔を庇うと…魔物の爪先が腕を引っ掛ける。


「あぁぁぁー!」


焼けるような痛みが腕を駆け巡った!


見ると腕の肉がごっそりと削がれている…血がしたたりその匂いを追って他の魔物も集まって来た…


「い、痛ぁぁ…」


腕を触ると感じた事のない感触がある…気を失いそうな中腕を見るとピンクの肉の間から白い骨が顔を覗かせていた…


「ギャウ!」


「グルゥゥ!」


騒がしい魔物達を見ると何かを取り合って喧嘩をしている…赤黒い肉を噛みつきながら引っ張りあっていた…


「わ、私の腕…」


それは自分の腕の肉を取り合っていた…体の大きな魔物が大きく引きちぎるとグチャグチャと音を立てて食っている。


少ししかない肉をあっという間に食い尽くすとペロペロと舌なめずりをしながらジリジリと女に近づいて来る…


「ひっ!」


右に逃げようとすると…


「ギャウ!」


違う魔物が行く手を阻む…慌てて左に避けると


「ウゥゥ!」


こちらにも魔物…女は魔物に囲まれていた。


なんでこんな事に…あいつがいれば囮にして逃げ出せたのに…


こんな時にいないあのオドオドとした子供を思い出す。


「くっそー!」


やけになり大声を出すと…それを合図にするように魔物達が一斉に襲いかかってきた!


「うぎゃぁぁぁぁああああ!」


体の至る所に痛みが走ると…女は意識を失った。



ピチャ…


顔に雫が当たり、その感触で女は意識を取り戻した…


「うっ…」


体中が痛い…動く度に腕や足に痛みが走る…特に右腕と両足が特に痛い…


真っ暗な中目を開いているのか分からない中唯一動く左腕で右腕を探ると…


「えっ…」


右腕がある場所を空が走る…ペタペタと腕があったはずの場所を触るがない…恐る恐る上に移動していくと…肩の所まできてやっと感触があった…


「腕が…」


ない…肩から先が無くなっていた。


「ま、まさか…」


今度は足を探ると…


「ない…ない!私の足がない!腕がない!」


声が反射して戻ってくる。


「うえっ!」


女はあまりの衝撃に嗚咽が走った!


そのまま胃液を吐き出すと…


「な、なんで…」


もう一度腕を探る…触ってみると無くなった部分が焼かれているのか凄まじい痛みでジンジンと熱くなっていた…


「なんで…なんで…」


おかしくなりそうななかブツブツと呟いていると隣で何かが動いた…


「あー…」


人の声だ!


「た、助けて…」


絞り出すように助けを求めるが反応がない…しかし誰かがいる気配はしている。


じっと目を凝らして奥を見ていると…雲が晴れ月明かりがそこを照らした…


そこはどこかの洞窟の様な場所で天井に大きな穴が開いていてそこから注がれた月明かりでどうにか周りの様子がうっすらと見えるだけだった…


声がするほうを見ると女が寝転がっていた!


「た、助けて!」


左腕を必死に伸ばして地面を叩くと…


「アヒャァ…」


女が視点の合わない目をこちらに向けてきた…


あの目を見た事がある…町で行き場を無くし狂ったやつがしている目だ、あの女はもう正気を失っている。


じっと見ていると女の腹が嫌に大きい事に気がついた…


まさか…妊娠?


見覚えのある腹の膨れ具合に嫌な予感がする。


すると急に女が苦しみ出した…


「あっ!あっ!あぁぁあぁぁ!」


ヨダレを垂らしながらのたうち回り出す、見ると大きく膨れた腹が異様な程に波打っている…


何かが腹から出てこようとしているようだった…


「ギャー!」


大きな最後の声が洞窟の中に響き渡ると、


バリッ!


皮膚が破ける音と共に女の腹から何かが無数に飛び出してきた。


「ぎゃ!ぎゃ!」


「キシャー!」


見ると緑色の体に体中ブツブツだらけの小さな魔物が次から次へと女の腹からはい出てくる…


「ゴ、ゴブリン…」


女から生まれたゴブリンはそのまま女の体に噛み付くとボリボリと女を食べだした…髪の毛を引きちぎり、目玉を取り出し飴の様にコロコロと舐めている…


「オェー!」


その様子にもう吐くものもない体から液体が飛び出た…


その音にゴブリン達が反応する…


や、やだ…


逃げ出したいが逃げる足がない…手で抵抗したいが腕が一本しかない…


ハイハイをしながらギシャギシャと笑いながらゴブリンの子供が近づいて来ると…


「ギャー!」


叫び声に小さいゴブリン達が一斉に散って行く…


た、助かった…


ほっとしていると洞窟の奥から叫び声の主が現れた…大人のゴブリンだった…


ゴブリンは子供を産んだ女の死体を見下ろすとおもむろに掴んで壁に投げつける…するとその死体に子供のゴブリンが群がった!


大人ゴブリンは真っ直ぐに自分に近づいて来る…


今度は何をされるんだ…女はガタガタと歯を鳴らす。


今までにない恐怖に声もあげることが出来ずにいると…


ニタァ…


ゴブリンが笑った…そして女の衣服を破り捨てる…


まさか…


女は抵抗出来ずにいるとゴブリンの下半身がムクムクと大きくなる…それは見たことも無いほど禍々しいく大きかった…


無、無理!やだ!やだ!助けて!


女は声にならない声で叫ぶ!


ゴブリンはギャウギャウと笑いながら女の下半身に自分の下半身を近づけた…


女は無理やり詰め込まれた痛みに考える事を放棄した…


「あは…あはは…あぁぁぁー!」


洞窟には獣の様な叫び声がしばらくこだましていた…。

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