第51話

カズキ達はナナミが料理を作ってくれてそれを肴に酒盛りをしていた。


エイトはナナミが作った料理をせかせかと二人に運んでいた…


「かー!やっぱりナナミの作る飯は美味いな!」


ラルクがツマミを食いながら酒を呷ると唸り声をあげる。


「だよね!ナナミの料理は一番なの!」


エイトが嬉しそうにラルクが美味しそうに食べるのを見つめる。


「お前は幸せだな!こんなうまい飯が食えて」


「うん!」


エイトが喜んでいると


「ちょっと待ってね!」


エイトが何かを思い出して急いでナナミの元に向かった。


しばらくしてまたツマミを持って来ると


「はい、これもどうぞ」


エイトが二人に町でもらったクリームチーズの乗ったお皿を出す。


「ん?これは初めて見るな?」


カズキも初めて見る料理に手を伸ばすと…


「お!美味いな!この白いやつの食感と醤油とピリッと辛いのが合ってる!」


「これはどうしたんだ?」


カズキが聞くと


「ナナミに聞いて僕が作ったの!クリームチーズに醤油かけて山葵って辛いのかけたんだよ!」


エッヘンと胸をはる!


「エイトが作ったのか?凄いなぁ」


ラルクが美味いぞと褒めると嬉しそうに頬を染めていた。


エイトがまた手伝いにナナミの元に行くと


「ナナミの飯を覚えて、お前の元で強くさせてあいつをどうする気だ?」


ラルクがカズキに聞くと


「そりゃ…俺達がずっとあの子を見ていられるわけじゃないからな…独り立ちするまでに立派に生きていけるように育てるだけだ…」


少し寂しそうに言うと


「なら…少しあいつを俺に預けて見ないか?」


ラルクが提案するとカズキが顔をしかめる。


「そんな顔するなよ、別に一生の別れじゃねぇぞ。今度うける依頼がこの近くなんだよそれにエイトを連れてて見ないか?」


「エイトを…」


カズキが心配そうに顔を曇らせると…


「行く!」


二人の間からエイトがニョッキっと顔を出した!


「エイト!聞いてたのか?」


「僕ラルクおじさんと行ってみたい!」


キラキラした目でカズキを見つめている。


「しかし…今日あんな事もあったのに…」


「大丈夫だよ!もうあの人にあっても僕はハッキリ言い返せるよ!」


「そ、それにまだお前は子供だし…」


「でももう猪の魔物くらいなら一人で倒せるよ…」


伺うようにカズキを見ると


「その程度じゃ…心配だ」


カズキが渋っていると


「おい!待て!今気になる言葉があったぞ!」


ラルクが一気に酔いがさめる。


「猪の魔物ってのはなんだ?まさかメガホックの事じゃないよな?」


「猪の魔物でメガホック以外いるのか?」


カズキが逆に聞き返す。


「エイト…お前メガホックを倒せるのか?」


「うん…でもまだたくさんは無理…それだと一緒に行けない?」


エイトが心配そうに聞いてくる。


「お前今いくつだ…」


「八才…ぐらい…」


本当の歳は分からないけどカズキとナナミと会った日を誕生日としていた。


「カズキ、そこまで強くしてたのか…確かに森を走る身のこなしである程度は戦えると思っていたが…」


自分が思っていたよりもはるかに強かった子供にこの先が少し不安になった…


「メガホック程度このくらいの年の子なら狩れるだろ?」


カズキがラルクの驚きがわからずに首を傾げる。


「あー…」


ラルクは頭を抱えた…


「そうだな…お前は普通じゃねぇもんな。しかもナナミもだし…」


ラルクがブツブツと何かを呟いていると何かを決心したように顔をあげる。


「よし!やっぱり俺が少し預かる!ちょっとはこの世界の常識を教えてやらないと駄目だ!」


「じょ、常識は教えたぞ…」


カズキが不安そうに言うと


「お前のは常識じゃない!」


「えっ…」


「いいか!お前も王都を出てから人目を避けるように森で暮らしてたからわからんかもしれんが、そんなに戦える子供なんていないんだよ!」


衝撃の告白にカズキが狼狽える。


エイトはそんなカズキの様子に


「ラルクおじさん!じいちゃんを虐めないで!」


カズキを庇うようにエイトが眉をあげてラルクを見つめる。


「じいちゃんは悪くないもん!いつも僕に知らない事をわかりやすく教えてくれるんだ!僕はじいちゃんから教えてもらって嫌な事なんてひとつもないもん!」


よく分からないがじいちゃんを否定された気がしてエイトは言わずにはいられなかった。


そんな真剣なエイトの姿に…カズキは胸が高鳴り目をうるませる。


ラルクはエイトを見つめると…


「ブッ!」


驚いた顔から一気に笑いが込み上げてきて止まらない。


腹を抱えて笑っていると


「わ、笑わないで!」


エイトがポカポカとラルクを叩く!


「悪い、悪い!いやお前は本当にカズキが好きなんだな…ありがとうな」


ラルクが涙を拭きながらエイトを撫でる。


「ムー…」


エイトはなんだかスッキリしなくて頬を膨らませるとカズキが後ろからエイトを抱きあげた。


「エイト、俺の為に怒ってくれたんだな!お前はいい子だ。ラルクはちょっと意地悪なんだよ、あれだな、好きな子をいじめちゃうタイプだ!」


カズキがからかうように言うと、エイトは少し考えて…


「ラルクおじさん…じいちゃんと僕が好きって事?」


じっとエイトに見つめられラルクはなんだから頭の後ろが痒くなる…ガシガシと頭をかくと。


「あーあー!そうだな、お前らの事が好きで心配なんだよ」


エイトの瞳に嘘は言えずに投げやりに答えると、エイトはカズキからおろしてもらいバツの悪そうな顔をしているラルクに近づくと


「僕もおじさん好きだよ」


ニコッと可愛くラルクに笑いかけた。

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