第6話 変化

 修了式前日、僕は彼女とろくに会話ができなかった3ヶ月を後悔した。卒業した後もできたら関わりたい、そう思った。どっちにしろ今日を逃したらもう一生チャンスはない。そう思って昼休みに思い切って声をかけた。


「もう学校終わっちゃうけど、全然話できなかったから、よかったらLINE交換してもらえませんか。」


彼女は少々驚きながらも快く返事してくれた。

「もう明日で最後ですもんね、いいですよ。」

彼女はそう言って連絡先を交換してくれた。


 今まで好感を持った女性でも連絡先を聞くとはまずなかった。そんな僕でも彼女には連絡先の交換を求めた。きっと彼女に対して相当のこだわりがあったんだと思う。たった3ヶ月しかない訓練校で、このタイミングで会えたことが運命とすら感じていた。交換してくれたことが素直に嬉しくて、その日の帰りの電車で連絡をした。

「お疲れ様です、突然LINE交換してなんて言ってびっくりさせちゃましたよね。ごめんなさい。」


2時間後くらいに返信が来た。

「お疲れ様!びっくりしたけど全然大丈夫だよ!」

直接話すと敬語な彼女も、LINEではフランクに来てくれた。ちょっとだけ距離が縮められた気がして嬉しかった。けれどその返信が、たった1通だけのやりとりが彼女との最後のやりとりだった。


 翌日の朝、ついに修了式を迎えた、彼女からの返信はなかった。学校で会うし気長に待つことにした。修了式は1時間で終わり、講師の方や、仲良くしてくれた友人と他愛もない話をして写真を撮って解散した。彼女とも少しでしかないが会話をした、「3ヶ月短かったけどお世話になりました。」といって訓練校を後にした。


 その日も彼女からの返信はなかった、既読すらついていなかった。なんとなくそうなる予想はついていた。訓練校が終われば毎日片道2時間、60キロの移動をすることもなくなり、完全に疎遠となることがわかっていた。もう関わる事はないだろうと関係を切られたんだ。そう思った。でも未読無視である事で僅かな希望が捨てきれなかった。就職が決まって卒業したわけではないのと、彼女は一人暮らしなことを知っていたから、きっと精神的に余裕がないから構ってる余裕はないんだと、そう言い聞かせた。

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