第5話 きっかけ
忘れてはいけないことがある、僕は皮膚アレルギーが酷かった、良くなってきたとは言っても、跡が残っていたり、時々蕁麻疹が出る。そんな状態で女性とは関われないと、4年も彼女がいなかった。それにクラスの大半を女性が占めていて、会話に入っていけるような環境でもなかった。彼女とはグループワーク以来会話することはなかった。
そのまま順調にスキル習得が進み、9月の半になっていた、あと半月で訓練校は終わる。彼女とは今後関わることはないだろうとほとんど気にしなくなっていた。そんな時だ、午前帰りの日があり、たまたま彼女と同じ電車に乗り合わせた。いつも彼女はモノレールに乗って帰るため、そもそも方向が違うのだ。
僕は考えるより先に行動していた、皮膚アレルギーだから人に見られたくない、そんな事は頭になかった。
「君がこの電車乗ってるのびっくりして声かけちゃいました、これからどこかへ?」
彼女もびっくりしていた、普段口を開かない僕に話しかけられたからだと思う。
「そうです、これから面接なんです!」
彼女はこんな日にも面接を組み込む、本当に頑張っている、そう感心した。訓練校の人は他にいなかったし、連絡先を交換するチャンスだと思ったが。流石に電車の中で、しかも面接前の人に連絡先を聞くなんて常識外れだと思い、少し会話をした後違う車両に移動した。
あの日たまたま同じ車両に乗り合わせただけなのにも関わらず、それがきっかけでいっとき忘れていた彼女への気持ちが蘇ってくる。真面目で、頑張り屋で、笑顔が素敵な彼女に僕は恋をしていたんだとそこで気付いた。
それからは毎日彼女といかに会話するかを考えていた、就職するために訓練校に来ていたのに、それどころじゃなくなっていた。学校では話しかけられるわけもなく、時間だけが過ぎていく。あっという間に修了式の前日になってしまった。
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