第35話 : 負けられない!(智鶴視点)

 な、な、何があったの?

 水琴さんが泣いてる?優治さん、一体何をしたの?


 わからない。何をどう考えてもわからない。私の頭は大パニックだ。

 とにかく水琴さんが通常モードではないことは確かだ。こんな様子の彼女を見たことはない。

 昼間だって、プライベートでもペースが全然変わらなかったのに。どうして。


 大体、さっき優治さんが口の周りを拭いていたのだって私には理解できなかったのに・・・・これは優治さんに問いたださないと。


「次は智鶴ちゃん、行ってきて」

「はい」


 冷静に、ここは冷静に。



「優治さん!」

「何だよ、って、今度は智鶴か」


 何で冷静にしてるのよ。水琴さんが泣いてたって言うのに。


「水琴さんに何かした?」


 もう頭の中は沸騰寸前、これが冷静でいられようか。


「いや、何も」


 何も、って、そんな訳ないでしょ。オンナを一人泣かせてるのよ!それもうれし泣きって!


 プチン。切れた・・・・キャンプ場だろうが何だろうが切れた。

 あの水琴さんを、私でも処女だと知っている彼女を泣かせておいて、その台詞はないでしょ。何をしたか言わないのならこっちも考えがあるからね。


「そこに寝て」

「は?」

「いいから」


 優治さんをマットに寝かせたら一気にズボンとパンツを剥ぎ取った。


「こんな所で何をす、るっ・・・・」


 問答無用、私以外の人を嬉し泣きさせるようなことは認めないんだから。

 さすがに自分の服を全部は脱げないし、声も出せないから口で全部搾り取ってやるんだから。




 それから三十分、ずっと口に咥えていた。出てくるものは全部飲んだ。

 へへ、これで間地代理相手でもイヤらしいことは何もできないでしょ。


 安堵した瞬間、優治さんの気まずそうな声がした。


「あの~、智鶴さん」

「何よ」

「間地さんが見てますけど」

「は?」


 そこには薄明かりの中でもわかる怪しい微笑みを浮かべた間地代理が立っていた。

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