第27話 : 昼休みの誘い
それから数日、土日も智鶴に徹底的に搾り取られた。
先日の一件は智鶴に知る術はないはずだのだが──
とは言え、智鶴も連日だとさすがに疲れたらしく、昨日は俺の部屋に来なかった。
そりゃそうだ。毎日四時間以上もイキっぱなしで体が持つ訳ない。
一人でPCを起動させ、動画を見る。
映っているのはカワイイ猫の動画。猫は女性だけのものではないのだ。
ムフフ、癒やされる。
暫くすると、何となく智鶴や水琴のことが頭に浮かんできた。
無心になってぼ~っとしながら、子猫が遊んでいる姿と彼女達がダブって見えてきた。
智鶴がこういう動きをしたらカワイイとか、水琴もこういうポーズをすれば良い感じだとか。間地代理は・・・・色っぽすぎて何も思い浮かばなかった。
今までこんなことはなかった。
智鶴と付き合っているものの、いないからと言って顔が浮かんでくることはなかった。彼女でも何でもない水琴なら尚更だ。
最近智鶴と体を合わせることが多いから?水琴が劇的に変わったから?
鈴華が間地代理や水琴の真似をしたから?
よくわからない。が、俺の中で彼女達に対する感情に変化があるのだろう。
智鶴と別れる気はないし、水琴と二股をかけるつもりは毛頭ない。
水琴は嫌いな奴ではないけど、恋愛感情を抱くほどの好意は持っていない。だが、だが、だ。
水琴のことを意識していないと思えば思うほどその顔が浮かんでくる。
いや、俺は浮気であれ二股であれそんな器用なことは出来ないはずだ。
自分が自分じゃない感覚が段々と自分を支配してくる。
あれっ、俺は誰が好きなんだっけ?
いや、智鶴以外に誰もいないだろ。
だったら何故水琴の顔が・・・・
自問自答しているうちに眠くなってきた。
あっという間に寝落ちして、気が付けば夕食も食べずに朝を迎えていた。
久しぶりに十時間近く寝てしまった。リビングにある座布団で寝ていたのだから体の節々が痛い。
朝六時ちょうどにインターホンが鳴った。見れば智鶴がそこにいる。
手許には弁当らしきものが。
「昨日は来られなかったから」
「全然気にしてない。お互い予定だってあるだろ」
「そこは寂しかったと言って。女心はそういうものよ」
朝から対応を間違えたらしく、少々ご立腹みたい。
「これ、今日はお弁当を作ったの。私はお昼に戻れない仕事をしているから、ね」
そう言ってウインクしている。
要は誰かとランチを摂ったら承知しないぞと言うことらしい。
出勤したら水琴は朝から得意先の会社に出向いているのだという。
鈴華がらみではない仕事なので、俺にはお呼びが掛からなかったのだ。
昼になって自分の机で弁当を食べようとしていたら、間地代理から声を掛けられた。
「鬼城院君、珍しいわね。自分で作ったの?」
俺がそこまで出来ないことを知っていて、意地悪な質問をしてくる。
「いや、まあ、ははは・・・・」
「あらまあ、彼女がいるのかなぁ。うふふ、羨ましいわね」
「あまり突っ込まないでください」
「ねえ、外で一緒に食べない?」
フェロモンが溢れた満面の笑みで誘われ、断れるオトコが何人いるだろうか。
智鶴には申し訳ないが、数分後には近所の公園で弁当を広げている自分達がいた。
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