第22話 : 真っ赤なカラダ

 ニンニク料理は好物で、休日前は割とよく食べている。

 そうは言っても程度問題で──


 明日も仕事があるというのに、目の前に広がるニンニクの山。

 このマンションの換気扇から吐き出す臭いは間違いなく公害レベルだろう。

 で、お茶の代わりにドリンク剤の山──ここまで揃っていると壮観──俺が飲むのか?


 職場での呆けた姿を見られているから、今日は智鶴の奴隷になるつもりで贖罪する覚悟はある。

 言い訳を色々考えたけど、どれもしっくりこない。

 明日のことは考えず、とにかく謝って、あとは智鶴に任せるしかない。


 裸エプロンで座っている智鶴の後ろにもの凄く黒い影が見えている。

 たまに冗談でこういう格好をする時はある。が、今日は本気がひしひしと感じられる。

 徹底的に搾り取られるんだろうな。


 普段なら裸エプロンを見ただけで下半身は絶好調!になるんだが、今日は全く反応しない。

 マズイ、絶対にマズイ。

 間地代理にはああいう顔をして、私には──そういうこと?と問い詰められるのが目に見えている。


 とりあえず夕食は食べた。と、目の前にはドリンク剤が。

 飲まない選択肢は──ある訳がない。

 俺、もう尻に敷かれているのだろうか。

 ここまでされるなら別れるという選択肢が頭の中にチラついては、消えていく。

 が、智鶴以外の女と言っても水琴しか浮かばず、これじゃ話にならないと理解して、結局ドリンク剤を流し込んだ。


 内臓が熱い。下半身ももちろん熱い。熱いだけで血液が行っている訳じゃないんだが。


 彼女は食器を片付けたら、明らかに作り物だとわかる満面の笑みを浮かべて、エプロンを脱いだ。

 目の前には生まれたままの姿で立つ女が一人。


「おい、待て、俺はまだシャワーを浴び・・・・」

「それが?」

「って、俺、綺麗じゃ・・・・」


 有無を言わさず口を塞がれた。もちろん智鶴の唇で。

 ニンニクの臭いにお互い慣れたのか、全然臭くさいとは思わない。


「するわよ」


 底なしの怒気を孕んだ声で、ストレートに言われた。

 いつもなら、「する?」とか「したいの」なんて俺に同意を求めてくるのに、今日は命令口調だ。それ程怒っていると言うことだろう。

 晩ご飯を作ってもらえただけで感謝するべきなのか?


「うん」


 仕方なく俺も服を脱ぐ。

 素っ裸になると、ドリンク剤のせいかカラダが真っ赤だ。

 そして、肝心の臓器は・・・・垂れている。


「あっはっは・・は、は、はは・・あっは、あっ・・お腹が痛い」


 形の良い乳房を揺らしながら、俺の下半身を見て大笑いしている。


「え~、ドリンク剤を飲んでも効かないの?おかしいんじゃないですかぁ?」


 そんなもの知るか。ドリンク剤を飲み過ぎてこっちは体の調子が変なのだから。


「へ~、いつにも増して真っ赤になっててカワイイ」


 確かにそうだ。ちなみにこんな姿のを見るのは俺だって初めてだ。

 そんな俺のカラダに妖艶に手を添えてくる、首からなぞるように、しな垂れているところまで。

 不思議なことに、その手のせいで俺の下半身は元気になってきた。

 コイツの手には特殊能力が宿っているのか。


「ふふ、誰にも負けないんだから。優治さんとが出来るのは私だけなんだから」


 誇らしげに言われ、股間から手を離さないままベッドまで連れて行かれた。

 それから4時間ほど肌を合わせていたが、ドリンク剤でドーピングしているとは言えアンドロイドならぬ生身の人間ではそれが限界だった。


 朝まで寝かせないと言った本人が真っ先に寝落ちしてしまった。

 脱水症状にならないのかと思うほど体中から汗と蠱惑的な液体を放出し、最後は肩で息をしていたと思ったら繋がったまま俺の上で寝息を立てていた。


 明日は間地代理に同じことをされても下半身は一切反応しないだろう。

 それ位搾り取られた。最後は何も出てこないと誰かが言っていたが、本当だと良くわかった。


 智鶴をそっと寝かせ、キッチンで牛乳を一杯飲んだ。

 前言撤回、不思議なことにもう一回戦出来るくらいには元気になってきた。

 ドリンク剤恐るべし。そして明日が怖い。

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